表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/65

6-3 レイナという魔王

「——そうは、させないわ……」

 レイナの赤い瞳が、怒りで燃えていた。

「こいつは私の彼氏よ。世界に返すつもりなんてない」

「邪魔をするな、魔王——だが、筋書きは上手く機能したようだ」

 悪魔の声が、初めて感情を帯びる。


『対象を感知——異世界魂の存在』

『優先度再評価。転移対象を切り替える』

(えっ? お前、それまさか……)

 嫌な予感が、背骨から頭蓋骨まで一気に駆け上がる。


「くっ……あっ、ああっ!」

 苦悶する魔王の胸元から、赤と黒の魔力が立ち上がっていく——異世界魂の“回収プログラム”が、対象を捕捉し直していた。


『異世界魂:世界に対する影響度——極大』

『英雄の器に宿る異世界魂:影響度——中』

『回収対象を切り替えます。物語は正しい方向に向かう』


「だったら俺を連れてけよ! こんなクソの役にも立たねえ骨の方で良いだろ!」

「レイナは嫉妬深くて、重くて、怖い女だけど、俺よりもずっとこの世界を守ろうって……!」

 俺が叫び終わるのも待たずに、レイナが振り返っていた。

「ユウト君。それ褒めてないから」

 ふっと、笑った。

「……やっぱり、あんたってバカだわ」


「お前、笑ってる場合じゃ——」

 言い終わる前に、レイナが膝から崩れ落ちた。

「っ……!」

 魔王の身体が、びくんと震える。

 黒いドレスの上から、光の束のようなものが何本も突き刺さっていくのが見えた。


「お、おい……」

 俺は棺桶の蓋を蹴っ飛ばして、骨の手を懸命に伸ばす。

(やめろやめろやめろやめろ!! そっちは違うだろ!!)


『異世界魂の回収プロセスを開始します』

『廃棄プランの修正。器は現世側に残し、魂を天界で回収』


「ふざけんなよ!!」

 骨の叫びなんて、この物語には届かない。

 ——世界の正しい修正は、止まらなかった。


「ごめんね、ユウト君。大見得切ったのに」

 魔王の赤い瞳が、俺を見つめていた。

 いつもより、少しだけ、柔らかい目で。

「謝るなよ!! そういうのは最後の言葉みたいで嫌なんだよ!!」


 光の糸が、一斉に収束する。

「あのね——」

 魔王の声が、少しだけ震えた。

「……最後に一つだけ。ユウトを嫌いになれなかったこと、ちょっとだけ後悔してるのよ」

 その瞬間——

 魔王の身体から、レイナの魂が引き抜かれていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ