4-5 聖女サイドの大暴走
「様子がおかしいです」
同じ頃、王都。
灰商会の一室で、水晶球を覗きこむリサが呟いた。
「何が?」
姫がポップコーンを食べながら覗きこむ。
「魔王領から、破壊的な魔力反応がありません」
「え、英雄爆発してないの?」
「はい。むしろ、安定しています。静かに会話してる、って感じです」
聖女が割って入ってくる。
「も、もしかして、魔王に洗脳されてるのでは……?」
嫌な予感に襲われたのか、聖女が青ざめる。
「ダメです! 魔王に汚染されてはいけませんよ!」
「水晶が曇っちゃいますから!」
リサが聖女を制止する。
「英雄様の“何もしない権利”が奪われてるかもしれません!」
「最初から奪ってたのは、誰なんでしょうね」
「何か言いましたか、リサさん?」
聖女が杖を強く握りしめる。
「いいえ何でも有りません」
リサはにこりと微笑んだ。
「とにかく、介入は慎重に。魔王領に軍を送るのはリスクが高すぎます」
「だからこそ、私が行きます!」
聖女が冒険の準備を始める。
「単身で行くのはもっとリスク高いですよ?」
「大丈夫です。愛があれば、どこへだって行けます!」
「出ましたね。無謀と勇敢は違うのですが——」
リサが何かを計算した後に、姫の元へと向かう。
「姫様、協力してください。外交上の都合と、正当性の問題を解消するために」
「いいよー! 全部ぶっ壊そう!」
姫の目がキラキラと輝く。
「駄目ですよ、破壊しちゃ。戦争になりますからね」
「魔王城見学ツアー? ついでにちょっとだけ爆破?」
「爆破はいけません!」
唐突にドアが開く。
「姫様! 魔王領に行くなど、王国の外交上——」
執事が慌てて飛びこんできた。
「大丈夫、観光観光!」
「観光で魔王城行くのは世界広しといえど姫様だけです!」
執事が頭を抱えていた。
「まずいですね。世界がまた、面倒な方向に進みそうな」
「じゃあ、決まりです」
こうして、
魔王と英雄の恋の条約に合わせて——
聖女・姫・リサの
「勝手に救出部隊」が動き出したのだった。




