3-2 骨、オークションデビュー
翌日。灰商会の地下オークション会場。
俺は商品として展示台に置かれている。
「いやん、なんかちょっと恥ずかしい」
棺桶から声だけ出す。
(一歩間違うと、まるで英雄廟のように)
「皆様。英雄様は素晴らしい方ですっ! 少し死んでて臭いですが、心は清らかです!」
聖女が壇上でプレゼン。全くもって魅力が伝わってなかった。
「投資価値を数値化しました」
リサも横でプレゼン。悪い情報は先に見せておくようだ。
「マイナスですが、愛があれば問題ありません!」
「ああ計算できない……でもきっとこれが恋……」
(何のために壇上にいるんだよ!)
「がんばれー! 沢山入札されるといいねー!」
姫が見物席から、ヤジを飛ばしてくる。
「最後は、爆破で解決?」
しないでくれ。
——借金のカタが、また負債を生み出しちまうからな。
◇
司会のジャックが高らかに宣言する。
「それでは、伝説の英雄24時間レンタル権!」
「開始価格は10万オーリス!」
シーン。
誰も入札しない。
「くさいしなぁ」
「死体だしなぁ」
「やる気ないしなぁ」
「マイナス資産だしなぁ」
「英雄の魂は私のもの。魔王の私が生涯を買い取るわ」
客席からひそひそ声。一つ明らかにおかしいのが混じってるけど。
「誰も入札しないなら、私がっ!」
聖女が会場の様子を見ながら、逡巡していたが、ついに痺れを切らして参戦した。
「20万ですっ!」
「おおーっ! 教会やりますねぇ!」
(ちょっと盛り上がってきたな)
「教会に出し抜かれては……」
「無駄。無駄だと分かってるのに、入札の手を止められない!」
リサも対抗。商会が本格参戦した。
「ああ、30万!」
聖女がリサを睨むように見ると、どんどん二人の争いがヒートアップしていく。
「50万ですっ!」
聖女。
「盛って80万!」
リサ。
「清貧であるべきですっ! 100万!」
聖女が血涙。
「聖職者が浪費しすぎでは?」
「商会こそ、私情が入りすぎですよ!」
女同士の入札バトルが始まった。
後で高額入札だからって、永久レンタル権に切り替わったりしないよな?
——その時、観客席から大口の入札が。
「あ、じゃあ200万!」
「「ひ、姫様!?」」
◇
姫があっけらかんとした顔で。
「だって、面白そうじゃん。英雄様と一日中遊べるんでしょ?」
「あの、姫様。どこに、そんなお金が?」
執事が顔面の汗をハンカチで何度も拭きながら。
「あるよー。さっき城の宝物庫から」
「灰商会が何でも担保にするって」
「ひ、姫様っ! 我が国の歴史を爆破しないでください!」
姫の入札で他の客にも火がついたようだった。見えの張り合い合戦。
「王国に負けるわけには。300万!」
大型商人。
「商人にはやらせませんよ。400万!」
貴族。
(もはや生産力の殴り合いだな)
「うわーん、500万!」
聖女、もう泣いてる。教会なくなっちまうぞ。
「愛、これは愛! 大好き、600万っ!」
リサ、アバカス壊れそう。
と、その時——
「1000万。存在ごと買い上げてあげる」
会場の奥から、女性の低い声が。




