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自分を陥れようとする妹を利用したら、何故か王弟殿下に溺愛されました  作者: 葵 すみれ


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20.学園祭の準備

 そうしているうちに、学園祭が近づいてきた。

 学園祭は、学園で年に一度行われる大きな行事だ。

 学園中がお祭り騒ぎに包まれ、生徒たちは思い思いの出し物や出店を出す。

 締めくくりにはダンスパーティーもあり、生徒たちにとっては一番の楽しみでもあった。


「レイチェルさまはどのような出し物をされるのですか?」


 休憩時間、クラスメイトの女子生徒たちがレイチェルに話しかけてくる。


「私は結界についての研究発表をするつもりです」


 レイチェルがそう答えると、女子生徒たちは顔を見合わせる。


「せっかくですし、もっと華やかな出し物の方がよろしいのでは?」


「そうですわ。せっかくの学園祭ですもの」


 女子生徒たちがレイチェルを励ますように、口々に言った。

 しかし、レイチェルは首を横に振る。


「いいえ、研究発表にすれば殿下にもご覧になっていただけるかもしれないでしょう? ここのところはもう、私が話しかけようとしても殿下は避けてしまうし……」


 そう言うと、女子生徒たちは眉を寄せながら顔を見合わせる。

 最近は、レイチェルが近づこうとするとグリフィンが逃げ出すので、不本意な芝居をせずにすんで楽になっていた。


「まあ……」


「殿下のその態度、許せませんわね!」


「本当に!」


 女子生徒たちは憤慨したように声を上げた。


「ありがとう、でも大丈夫よ。殿下も王家の方なのですから、きっといつか結界の重要性について理解してくれるはずだもの」


 レイチェルがそう言って微笑むと、女子生徒たちは感動したように瞳を潤ませた。


「ああ、なんて健気な……」


「レイチェルさま、素敵ですわ!」


 そして女子生徒たちは口々にレイチェルを褒め称える。

 レイチェルはそれを微笑みながら聞いていた。


 浮気している婚約者から蔑ろにされながらも、健気に慕う令嬢。それが今のレイチェルだ。

 あとはもう一押し、レイチェルが婚約者を諦めざるを得ないような出来事が起こればいい。

 そうすれば、レイチェルに非のない形で婚約破棄することができるだろう。


「さあ、学園祭まであと一か月。準備を頑張りましょう」


 レイチェルはにこやかに微笑むと、女子生徒たちにそう声をかけた。




 帰り道、まだ学園に残って学園祭の準備に取り掛かっている生徒たちとすれ違う。

 大きな荷物を抱えている生徒や、看板を作っている生徒など、みんな忙しそうにしていた。


「そうだわ、確か……学園祭の準備中……」


 ふと、レイチェルはあることを思い出した。

 小説のストーリーでは、学園祭の準備中にグリフィンが怪我をしてしまうのだ。

 資材の搬入の際、存在感を出そうとしゃしゃり出て、うっかり資材の下敷きになってしまうのである。


「王太子の愚かさを際立たせるだけのイベントで、怪我も大したことがないはずだけれど……利用できるかもしれないわね」


 レイチェルは考えを巡らせる。

 小説では、怪我をしたグリフィンをケイティが手当てする場面があった。

 しかしケイティならば、それよりも効果的に自分の評価を高めたいと考えるだろう。

 おそらく、彼女はグリフィンが怪我をする前に防ごうとするはずだ。それも、周囲にわかりやすく、自分が助けたとわかるように。

 ならば、それを利用すればいい。


「……やっぱり怪我をさせてしまうのは、かわいそうだし、ちょうどいいわ。あとは、ケイティがきちんと覚えているか、ということね」


 レイチェルは考え込みながら帰路に就く。

 ここのところ、家に帰るとすぐに自室に閉じこもっていたため、ケイティとはまともに顔を合わせていなかった。

 だが、今日は確かめるためにもケイティに会ってみよう。

 そんなことを思いながら、レイチェルは自宅の門をくぐった。


「お帰りなさいませ、お嬢さま」


「ただいま」


 出迎える執事に挨拶すると、レイチェルは屋敷に入る。


「あら、お姉さま。お帰りになったのですね」


 すると、ちょうど通りかかったケイティが声をかけてきた。


「ケイティ……」


 なんともタイミングの良いことだ。

 呆然としながらレイチェルが名前を呼ぶと、それをどう思ったのかケイティは得意げな顔で微笑んだ。


「こうしてお会いするのは、お久しぶりね。学園では殿下がお姉さまを避けているから、いつも殿下と一緒の私がお会いできないのは仕方がありませんわ。でも、屋敷でも私を避けて……やっぱり悔しいのね」


 そして、ケイティはふふんと鼻で笑う。


「でも安心してくださいな。私はお姉さまよりも、殿下の婚約者にふさわしいことを証明してみせますから」


「え、ええ……」


 自信満々なケイティの様子に、レイチェルは苦笑いで返す。


「そろそろ学園祭のための資材が届く頃なの。お姉さまも見学したければするといいわ。きっと、お姉さまの目にも私が王太子妃にふさわしいとわかるでしょうから」


 ケイティはそう言うと、勝ち誇ったように笑いながら去っていった。


「やっぱり……」


 レイチェルはため息をつくと、ケイティの後ろ姿を見送る。

 どうやら、しっかりと小説の内容を覚えているようだ。しかも、それを利用する気満々である。

 あまりにも予想どおりすぎて、レイチェルはいっそ感心してしまった。


「本当にわかりやすいわね……」


 レイチェルは呆れたように笑うと、自室へと向かった。

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