部室にて
「ここの中学、部活いろいろあるんですね。」
「敬語。ま、いいけど。」
ユリさんの説明をざっくりまとめると、昔のバブルという時代にできた学校らしく、設備は異常に充実しているらしい。まぁ、学校の方針が、「生徒に考えさせ、選ばせる」だから、そんな感じなのかなぁ。でも、どこも部員数が少なく、廃部の危機なのだとか。
「部活、決まった?」
決まってる!心の中で即答した。
「う、うん…。」
「迷ってるの?」
「他にも楽しそうなとこ、たくさんあって…」
僕は何を言い訳してるんだ?
「入部届け、明日が期限でしょ?ゆっくり考えるといいよ。」
「ありがとう、ございます…。」
「いま、無理に敬語にしたね?そのままでいいのに。」
…うん、絶対ここに決めた。
部室には、古い型のノート型パソコンが一台。顧問の黒田先生のお下がりらしい。
僕は、この前父さんにパソコンをもらった話をした。
「すごい、自分のパソコン持ってるんだ。」
パソコンを立ち上げて、パワーポイントを立ち上げる。
「使い方は、バッチリだね。」
こんな感じ?ユリさんは、ぼくの手からマウスを奪うと、僕のとなりで、キーボードを触り始めた。
シトラスの匂い。ヤバい、鼻血でそう…。
ユリさんは、くるくるっとマウスを動かしながら、キーボードを撫でるように打つ。
「こんな感じ?」
手元に見惚れてるあいだに、僕が昨日作ったものとはまったく違う、ゴボウなぞなぞができていた。
棒はイラストにして、文字のフォントもちょっと変えてみたよ。
「すごいよ!ユリさん」
すぐにでも、文化祭で発表できそうな完成度。パワーポイントって、こんなすごいものが作れるんだ!