帰省
「今度の週末、じーじのとこで、みんなでご飯食べることになったからな。」
と、父さん。
じーじ、というのは、父さんの父さんで、つまり僕の祖父。
僕が小さい頃から、定期的に集まって、バーベキューをしたり、夜更かししてゲームしたり。
僕らが寝た後は、大人たちで酒盛りしてるらしいし、どうせそっちが目当てなんだろう。
「アユミたちも来るの?」
「当然だろ?」
まぁ、そうだよな。
僕の祖父ということは、アユミの祖父でもあるわけで、いままでもずっとみんなで集まってたから。
「アユミちゃんも中学生になったのよねぇ。」
あなたの息子と同い年だよ、母さん。
しかも、同級生になったって、この前話したじゃん。
「久しぶりに会うから楽しみだわ。」
この前、お正月にみんな集まったよね?
まったくこの人は、わざととぼけてるのか、天然なのか。
「ハルカちゃんは高校生よね。」
ハルカさん…。
アユミのお姉さんで、僕らの3歳年上。
ちょうど僕らと入れ替わりで、高校に進学した。
「楽しみでしょ?コウはハルカちゃん大好きだもんね。」
母さん?!そういうことは、思春期の男子に、気安く言わないでほしいな。
・・・
当日。
お昼前に、父さんの運転する車で出発。
隣の市とはいえ、車だと20分ほどの距離だ。
僕らが到着したときには、アユミたちはすでに来ていて、
アユミが部屋の真ん中で、ぴょんぴょんと動き回っていた。
「予定通り、チア部に入って、予定通り、全国優勝するからね!」
「コウくんは、なに部に入ったの」
ハルカさんの質問。
「クイズ研究会。」
僕が答えるのをさえぎって、アユミが答える。
「コウ、ユリちゃんに一目惚れしたんだよね!」
おいおい、アユミさん…?
個人情報保護法違反で逮捕できないかな。
「ユリちゃん?」
「そう、あのユリちゃん。」
なんと、アユミたちとユリさんは、超がつくほどのご近所さんで、3人は幼なじみだったのだそうだ。
「そっか…」
え?なんで今、おもしろくなさそうな顔したの?