入学祝い
「入学祝いだ」
そう言って、父さんがくれたのは、父さんのお下がりのノート型パソコンだった。
僕は、12歳。中学に入学したばかりだ。
パソコンは小学校でも使ったことがあるけれど、正直よくわかんない。
ゲーム機のほうがよかったな。
なにげなく、電源をいれてみた。
画面がくるくると動いて、とまった。
デスクトップには、アイコンが7つ
マイドキュメント、ゴミ箱、Outlook、Chrone、Word、Excel、PowerPoint。
ゲームは入ってないのか。
父さんは仕事から帰ってきても、毎晩遅くまでパソコンを触っている。
ブツブツとひとりごとをいいながら楽しそうに触ってるから、きっと遊んでるんだろう。
そんな父さんのパソコンには、どんなソフトが入ってるんだろう、とおもってたけど、ゲームらしいものは見当たらないな。
なにげなくぼくは、その中の、Excelっていうアイコンを押してみた。
画面の中に、小さな緑の四角が表示されて、消えた。
画面いっぱいに、びっしりと格子模様が表示された。
左上の四角だけ、緑の太枠でかこまれている。
ためしに、なんとなくキーを打ってみる。
「ハルカ…」
いけね。
急に恥ずかしくなって、慌てて書いた文字を消した。
父さん、こんなソフトで、いつも何してるんだろう。
やっぱり、よくわかんないや。そろそろ寝よっかな。
僕は、前に学校で習った通り、右上の✖️ボタンを押してExcelを終了させたあと、パソコンもシャットダウンした。