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攻略者その一 執事、ダグラスの場合

「次からは、勝手に部屋にいれたりしないでね。」

部屋に入れた侍女が、新人のマリーだったと分かり、念を押す。

そして、そのことを秘密にする約束も。

マリーがうっかり口を滑らせて、両親から問い質されても、私は緊縛の魔法で説明できない。

無意味に苦しむのは嫌だった。


約束を取り付けながら身支度を整えていると、両親の帰りを告げる声がして騒がしくなる。

私も出迎えに玄関に向かった。


うちの両親は、仲がいい。

今日も朝からデートだ。

(お父様がデレデレしてるわ・・。)


そして、彼らと共に帰ってきた『彼』を見て、複雑な気持ちになる。

(ダグラス・・。)


ブラウンの髪に眼鏡をかけたダグラスは、我が家の若き執事だ。

ガルシア伯爵家に代々つかえてくれている一族の息子で、年が近いため私とは幼なじみとも言える。


(もう一人の攻略対象と正反対で、『おせおせ』のダグラスって言われてたっけ。)

ダグラスルートでは、セルシオはほとんど出てこない。好感度はもともと高い上に、好意を隠さずに伝え続ければ好感度マックスのハッピーエンドを迎える、初心者用の攻略対象だ。

ダグラスから意見を聞かれたら、素直に誉めて。

プレゼントは素直に喜ぶ。手を差しのべられたら素直に頼る。

駆け引きせずに、無邪気に好意を示していると、自然と愛してもらえる。


そう。ダグラス攻略は、むしろバッドエンドを目指す方が難しい。

そして、あえてのバッドエンドを迎えたプレイヤーにしか明かされない事実が存在する。

ダグラスは・・。


「お父様、お母様、お帰りなさい。お疲れさま、ダグラス。」

記憶が戻ってから初めて会う彼らに、できるだけいつもどおりを装い出迎える。

父も母も幸せそうだ。

まさか、娘の恋の行方が自分たちの命運を握るなんて、思ってもいないだろう。

そして、ダグラスは、よく見るとやつれた顔をしている。

私がダグラスルート、それもハッピーエンドに向かわなかった時点でダグラスには、ある役割が自動で割り振られてしまう。


「リーファは、セルシオが両親に渡す金と引き換えに結婚する。本人は本当は嫌がっているが、両親には逆らえない。セルシオはリーファを飼い殺しにする予定だ。結婚さえしてしまえば、リーファを自由にしてやってもいいが、両親が許さない。嫌ならば両親を亡き者にして、ダグラスが助け出してやるしかない。」

そんなことをじわじわとセルシオから言われ、半ば洗脳されて。

セルシオルートで両親の馬車に細工をするのは、ダグラスなのだ。

その事がわかるのは、先程もあったとおり、ダグラスのバッドエンドで本人から聞いたときだ。


あの話は、本当に全てのエンドをクリアしなければ事件の全容が分からないようになっている。


ダグラスは罪を犯してしまうけれど、それだけリーファを大切に思っていたからこそで。

(今くらいには、もうセルシオに毒され始めているわよね。)

なんとか、ダグラスも救わなければならない。


ダグラスルートにはもう行けないし、セルシオの攻略もする気はない。…もう一人の攻略対象にはあってもいないし。


(うん。手詰まり。)


それでも考えるしかない。

セルシオから逃れ、ダグラスの動機を潰す。

そのための方法を…。

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