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後悔は、取り返しがつかないときにする

「はあ。」

あれから、帰ってきたもののなかなか眠れなくて。

私はもう、何度目になるか分からないため息をつく。

我ながらひどい別れかただ。

セルシオはどう思っているだろう?


少なくとも彼は、こんな展開は絶対に予測してなかったはずだ。


「告白の場所が、丘の上、だったらなあ。」

もし、私が正しい選択肢を選んでいたら。

セルシオの信頼を得て、丘の上で結婚を申し込まれていたら。


トゥルーエンドのスチルが浮かぶ。

セルシオは今よりずっと屈託のない笑顔で抱き締めてくれる。

ちゃんとお互いのことを分かりあって、愛を確かめあって寄り添うことができるのに。


「はあ。」


全ては終わったことだ。

セルシオとの恋は終わり。

彼は、最初の予定どおり、私が持つものを奪えるだけ奪って、みんなから忘れ去られていくという形で復讐を果たすつもりだっただろう。


そもそもこのゲームは、若き公爵セルシオが、かつて自分から母を奪っていったガルシア伯爵への復讐のため、その一人娘であるリーファ、つまり私に目を付けるところから始まる。

・・冤罪だけど。


セルシオの母は亡くなっており、その遺書にガルシア伯爵への道ならぬ恋が綴られていた。

確かにセルシオの母は恋をしていたかもしれない。

でも、少なくとも父がその思いに応えることはなかった。


そのことが分かり、誤解がとけて初めて、本当のトゥルーエンド。

父のことは関係ない、と、セルシオがリーファに本気の恋をして、リーファのために復讐を諦めるのがハッピーエンド。


そして、誤解もとけず、セルシオが冷ややかにリーファを落としたのち、ガルシア伯爵夫妻が事故でなくなり、リーファの夫として全てを手にして悲しく笑うバッドエンド。


昨日までの何も知らない私は、ただただセルシオとの恋に溺れ、彼の全てを都合よく解釈し、踊らされた。


今なら彼が時おり見せた表情に、違う意味を見つけられるのに。


(だめだ。後悔ばかりだわ。)


結局、私は今、心から後悔している。

セルシオと結ばれたかった。

記憶が戻ってもやっぱりセルシオのことが好きだから。


昨日彼の求婚を受け入れていれば。

断る以外の選択は本当になかったのだろうか。

あんな風にセルシオが求婚してくれることはもうないのだと思うとただただ辛い。


(あそこでyesを選んでいたら、きっと両親は無事ではすまなかったわ。)

バッドエンド以外では両親の事故はない。

と、いうことは。


(あの場では断る以外になかったのよ、リーファ。)


何度も何度も言い聞かせて、涙を止めようとしているうちに、やがて私は深く眠ってしまった。


徐々に覚醒し始めた頭は、また、思考を繰り返す。


「・・セルシオ様・・。」

「ん?何?リーファ。」


「・・・・・・え?」


聞き間違いだろうか?今、聞くはずのないイケボが聞こえた気がするけれど。


「セルシオ様?」

「うん?どうしたの?」


「・・・・・・セ、セルシオ様!!」


飛び起きて確認すると、とびきり優しい顔をしたセルシオが、ベッド脇の椅子に座っていた。

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