プロローグ
「やあ、リーファ!こんなとこで会えるなんて、すごい偶然だね。」
そう言ってセルシオは破壊力抜群の笑顔をリーファに向けた。
誰がどうみても、愛する人に向ける、とろけるような笑顔。
だが、その笑顔にときめく人物は、リーファを含めて誰もいない。
なぜなら。
「っ!誰だてめえ?」
(あ、だめ・・!)
リーファを囲んでいたどうみても裏稼業の男の一人がセルシオにつかみかかった・・と思う。
「おぶっ!!」
「ねえ。せっかくだから食事でもどうかな?」
セルシオは、リーファを見つめながら軽やかによけ、手刀を首の後ろに叩き込んだ。
・・デートに誘いながら。
そのまま近づいてくるセルシオに、つかみかかる裏稼業の男たち。
「うっ!」「がはあ!」
「海沿いだからね。魚介類が新鮮で美味しいみたいだ。」
男たちを沈めて戦闘不能にしていくセルシオの目には、やはりリーファしか映っていないようだ。
(知ってるわ。だって私は・・)
やがて全員がその場に伸びて動かなくなり、セルシオは優雅に手を差し出す。
「行こうか?」
「はい・・。」
(ここから船に乗って、あなたから離れるつもりだったんだから!!)
ここは、王都から遠くはなれた最南の地。
そんな場所の、しかも平民街の外れの森。
そんな場所に『偶然』やってきたセルシオは、リーファの手をとると、恭しくエスコートをして、なかなか予約が取れないことで有名なレストランへと連れていった。