ロリコンでないってば…
私には敵がいる。
正確には前世の記憶が戻る前の遙に、だけど。
その名も篠宮亜実佳。
気が強くてスクールカースト上位グループに所属している娘である。
その亜実佳になんで遙が目をつけられたかというと、それは目の前にいる彼、結城尊のせいだったりする。
端的に言えば亜実佳は結城尊を巡る恋のライバルだと遙を位置づけており、勝手にライバル視しているのである。
小学校5年生の時にいきなり空き教室に呼ばれ、「私の方が先に結城君の事が好きだったのに!とらないで!!」って言われたのはトラウマである。
自分の事をヒロインとでも思っているのか、勝手に敵視してある事ない事をクラスメートに言いふらして攻撃してくるので遙は大変に困っていた。
アラサーの魂が甦った今ならわかる。
彼女の主張は理不尽の一言につきると。
だってさ?恋って順番待ちなの?そこに当の結城君の意志の確認とかないの?
まぁ遙は非常に奥手だったので、亜実佳の言う事は殆ど理解できなくて宇宙人に難癖つけられているような気分だったんだけどね。
遙と尊は幼馴染で昔は仲よかったけど、高学年になってからお互いに疎遠であったのだが、
最近妙に絡んでくる。
それも悩みだ。
途中まで冬哉さんと一緒に登校していたけど別れて、もう少しで学校につくという所で尊に絡まれた。
「遙はまた冬哉さんと登校?あの人ロリコンじゃないの?」
今まで疎遠だったのがウソのように登下校中に「待ち伏せ?」ってタイミングで現れる。
「冬哉さんは従兄で一緒に住んでるから仲いいんだよ」
「高校生のくせに小学生を相手にしてるって危ない人じゃないかな」
「…そんな人じゃないもん。妹の面倒みてるような気持ちだもん」
言っててもの哀しい。
なんでこんな言いがかりを疎遠になってる幼馴染から言われないといけないのだ。
「真也のことも可愛がってくれてるし、勉強も見てくれるし」
「ふぅん。ならいいけど。気をつけろよ」
尊と話しをしていると視線を感じた。
うへぇ、見られた。篠宮さんこっちめちゃくちゃ睨んでるよ。
「篠宮、見てるんじゃないよ。」
ギロリと尊が篠宮さんを睨んで吐き捨てるように言った。
どうも気が付いていたけど、尊の奴、篠宮さんには気がないみたい。というか嫌ってるね?
というか私が話ができる男子数人のうちほとんどが篠宮さんの事が嫌いだって言ってたからかなりの確率で男子からは嫌われている。
篠宮さんのせいで遙ってばいつも静かに目立たないように気をつけていたけど、女の子の友人が出来ないんだよね。
篠宮さんに睨まれるから。
中学校は違う学校に行きたいなぁって遙は思い詰めていたんだ。
ただ隣の席の男子は優しいから、学校に行けてるんだけど。
「遙ちゃん、また篠宮に睨まれてたね。災難だね」
とはいえ、こんな事を言ってくれるだけなんだけど。
「うん。私何もしてないのに…」
「気にしないことだよ」
「…うん」
以前の遙だったら、自分にもよくないところがあったのかも…なんて内向的に思ってたけど、
違う、これはもらい事故だ。遙のせいじゃない。
今の私は全力で忘れる。気にしない、気にしない。
帰ったら冬哉さんに癒してもらおう。そう、冬哉さんは心のオアシスだ。
いつも物静かにしててトゲトゲしたところとか全然ないからストレスフリーなんだよね。
人の事を妬んで悪く言ったり、攻撃的だったり、人のアラ探しを進んでするような人間は、苦手だ。
そういう天然ピュアっ子みたいな所が鼻につくんだろうなぁとアラサーの魂は想像するんだけど。
結構篠宮さんのグループってば、仲間内でもそこに居ない人の悪口言ってるし、全員揃ってる時なんかの攻撃の矛先が遙みたいなちょっと気の弱い子なんだよね。
やだやだ。
「遙ちゃん。宿題やってきた?見せてほしいな」
「うん…」
かろうじている女の子の友達はどうも遙のことをいい様に使っている気がする。
まぁ宿題くらい別にいいけど。
「津川、自分でやらないと勉強にならんぞ」
なんかモヤっとしていると私の気持ちを隣の席の男子が代弁してくれた。マジ神。
「だったら吉田君、勉強教えてよ」
たくましいやっちゃなー。津川さん。なんかただでは起きない?みたいな。
もっというと図太い?
「やだよ。部活あるし。自分ですれば?」
「けちー」
あれ?なんか遙、おいてけぼり?
遙のことは放りっぱなしで津川さんてば隣の好感少年吉田君に絡みにいってるよ。
「津川ーちょっとー」
津川さんは篠宮さんのグループの人に呼ばれて行ってしまった。
残される遙、一人。
うーん遙ってば味方少なすぎ。
前途多難だわ。こりゃ。