ヒロインとバッタリ②
「やっほー。また会ったね~。ねね。一緒に遊ぼぉ♪おねーさん2重あや飛び出来るようになったの♪」
「優花ねぇちゃん、暇なの?」
真也に辛辣に言われてヒロインは胸を押さえた。
「くっ!結果的に暇になってしまっただけで、決して暇を弄んでいた訳では…」
お昼になるので公園に遊びにいった真也を迎えにいったらヒロインとばったり出くわしちゃった。
「2重あや飛びは見てあげるけど、もうすぐお昼だから僕は帰るよ?」
「くっ!」
真也、年上あしらいが上達しているようだけど、ここ最近の我が家の状態が影響してるのかな?
「遥ちゃんは?」
勢いこんで聞かれるけど、普通にお昼には家に帰ります。
真也は知らないと思うけど、諸事情あってヒロインは一人暮らしなんだよね。おそらく家に帰っても
攻略が進んでないみたいだし、予定がないのかも…。
「お昼一緒に食べる?冬哉さん達がピザをおごってくれるっていってたし」
たぶん近所のd-ピザの持ち帰り。自分達基準で買ってくるからおそらく余る。
人数が増えて足りない分は、遥がちゃちゃっと何か作ればいいし。
チャーハンなんてどう?でもピザとか…。
なんか炭水化物ばっかだなぁ。でもいいっしょ。
「真面目に受け取って、本当に行ってもいいの?しかもお昼まで…」
「冬哉さんと夏樹さんと同級生なんでしょ?じゃ別に来たって変じゃないんじゃない?」
「せめて!コーラだけでも差し入れさせてください!お願いします!10分だけ待ってて」
「あ、いいのに。手ぶらで。っておーい」
バビューンという音がしそうな勢いでヒロインこと遠野優花ちゃんは走っていった。
10分後
息せききって、再び公園に戻ってきたけど…。
これ、開ける時こわー。っていう感想しかない。
全速力で走ってきた人の持ってきたコーラ…。あ、うん。しばらく泡が落ち着くまでおいておかないと。
「ゴチになりに行きます」
なんかめっちゃ緊張してるみたいだけど大丈夫?
「空木君の家行ったとか、他の女子に知れたら殺される~」
いやいや半分喜んでいるじゃないですか。
「知ってる?遥ちゃん。空木君て人気あるんだよ!学校の女子の間では冬哉様って呼ばれてるんだよ。」
「えー。「様」は何かやだ。でもお兄ちゃん恰好いいもんね。わかる気がするよ」
「今日は夏樹にーちゃんも一緒だよ」
「…マジでございますか」
「マジだよ?なんで急に丁寧なの?」
「心臓がドキドキしちゃう~。どうしよう。眼福すぎて目がつぶれちゃうかも~」
なかなかこのヒロイン、面白いな。
ゲームでは選択の候補でしかしゃべってなかったもんね。
話してみないとわからない事、いっぱいありそう。
「同意する」「否定する」「声をかけてみる」「話を聞く」
とかいうコマンドが出て、それらの内からひとつを選ぶとそれに即したセリフを言うだけなんだよね。
「どうしよう。緊張してきたー!」
「家庭訪問かよ」
真也の突っ込み…笑。
あ、ヒロイン、そんなにコーラの入った袋をふりまわしたら…。
ヤメテ。大惨事の予感しかない…。
「今日はいきなりホイホイとついてきて申し訳ございません!」
「お、おお遠野。」
出迎えてくれた夏樹さんがビックリしてた。
「公園で暇そうにしてたから連れてきたー」
いや、真也、その通りだけど言い方。
「はいっ。暇してました」
ってヒロイン。笑。
「…。まぁ、靴脱いであがって」
冬哉さんもびっくりしてたけど、普通に家に招き入れた。
「はいっ。これつまらないものですが」
「コーラ?ありがとう。わざわざ用意したの?」
「わざわざだなんて滅相もない!むしろこんなものしか持ってこれなくて!」
「いやいや、ありがとう。ウーロン茶しかなかったから助かったよ」
はぁ冬哉さんの笑顔、プライスレス。心のメモリーにとっておこう。
横見たらヒロインが固まってた。
「空木君が笑ってる…」
冬哉兄…学校では笑わないキャラなの?
「いや、冬哉けっこう笑ってるよ?女子の前だと勢いに押されて固まってるだけで」
固まってんだ…。どうしていいのかわからないのかな。
「なんか、緊張するんだよ。」
「わかるー。たまに目力すっごい女子いるよな」
それは多分猛禽類の目ってやつですね…。わかります。
「なんか家にいる空木君て自然体だね」
さすがヒロイン。よく気が付くね。
「リラックスしてるからかな」
それは遥にとって、すごくうれしい言葉だ。でも学校でももっと楽しんでほしいな。
生きるのに投げやりになるほど、心をすり減らしてほしくない。
「さー、お昼食べようよ。おなかへっちゃった」
真也が騒ぎ出したので夏樹さんと冬哉さんのおごりのピザを開ける。
…これ何人前?
「持ち帰りにすると配達の半分の金額ですむから…」
「ま、いろんな種類を食べたいから」
いやいやいや二人して照れてごまかさないで!