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愛と終着の奏  作者: いなほ
19/23

ずれてく現実


 「あっごめんなさい」


 店員さんと間違えて声かけた人は、まさかのヒロインでした。


「エへへ。間違えちゃった」

「大丈夫、気にしないで」

 って優しいー。ニコニコ笑って許してくれた。


 うはー恥ずかしい。

 ここにヒロインがいるって事は夏樹さんと色違いの靴を買うイベントの日って事?


 「優花ぁ。親から帰れメールが来ちゃった。ごめん。今日歯医者だったの忘れてたぁ」


 そうそう、そう言ってお友達が帰るから、ヒロインはせっかく来たんだしーってモールをフラフラしてて夏樹さんとばったり会うんだよね。


 その様子を見たいような、そうじゃないような。

 

 「そっかぁ。じゃ私はもうちょっと見てから帰るねー」


 「ごめんね!今度埋め合わせするから」


 「いいよー。歯医者遅れちゃうよ?」



 そんなヒロインとお友達のやりとりを 聞きながら洋服を選ぶ。ヒロインの私服姿かわいいなぁ。


 このブルーのワンピと黄色のワンピ。どっちがいいかなー。


 ブルーのはシックだし、黄色のには白いレースがついてて可愛い。


 「そっちのが似合うと思うなー」


 うぉ!びっくりした。ヒロイン、なぜか私の服選びに興味津々のようだ。


 「え?こっち?」


 黄色は元気色って感じがして引っ込み思案の遥からしたらあまり選ばない色だけど。大人の遥は着たいんだよなぁ。たぶん今の年代にしか合わない服だと思うから。


 「青のもいいと思うけどー。ほらこっちのなんかどう?」


 持ってるブルーのワンピより薄い水色っぽいチェックのスカートを指さす。


 うはぁ、さすがコミュニケーションおばけ。めっさ自然な流れて懐に入ってきますねぇ。


 「その水色のチェックのスカートにこっちの白T合わせてもかわいいと思う。それにこっちの黒のサロペットあわせてもいいね!」


 あはは、なぜかヒロインからファッションアドバイスを受けている不思議。


 えーいや。うれしいんだけど。店員さんと間違えたのはこっちなんだけど、夏樹さんと出会うタイミング大丈夫?


 




 「ありがとーございました」


結局ママを召喚してお会計すむまでヒロインと過ごしてしまった。


「親切な子ね。」

「うん、たぶん冬哉さんの同級生」


 両手にショッピングバックを持った遥達をヒロインは満面の笑みで見送ってくれた。


「今度着てるとこ写真で送ってね!」


 バイバーイと手を振りながら遥達を見送るヒロイン。

 …ヒロインとライン登録してしまった。


 どうしてこうなった。


 

 まぁヒロインもどっちかっていうと家に帰りたくないような身の上なんだけど。

 なぜか高校生で一人暮らしという不思議。


 「大丈夫かなぁ。」


 夏樹さんルートでは「色違いの靴」が結構重要なんだけど…。

 それに夏樹さんもだけど、ヒロインも夏樹さん達と交流する中で救われて成長していくからヒロインの方も心配。


 今からでも夏樹さんとバッタリとかあるんだろうか? 物語の強制力とか働くんだろうか?


 「なにが大丈夫?あ、ほらほら真也達が来たわよ」


 ママに言われてみると真也達がゲーセンの戦利品を手にこっちの方に歩いてくるのが見えた。


 って、夏樹さん?


 え?冬哉さん? 


 二人共なんで同じお店のショッピングバック持ってるの?

 それも、ヒロインと色違いの靴を買うはずの靴屋さんのじゃ…。

 

 あ、ここヒロインと靴を買う事になったはずの靴屋さん前じゃん…。



 冬哉さんと夏樹さんとってそんなに仲良かったの?

 ショッピングセンターでバッタリ出会ったら一緒に行動するほどの?


 え?真也がトイレの帰りに迷子になって、探していた時に夏樹さんと出会ったの?

 一緒に探してくれたの?夏樹さん。


 あなたいい人すぎる…。


 ヒロインとの思い出が…大切な出来事になるはずの出来事の代わりにうちの弟の捜索を手伝って…。

 そして攻略対象者同士、なぜか靴を一緒に買いに行った…。と。


 冬哉さんが黒、夏樹さんが青のヒロインと色違いになるメーカーとは全然別のブランドの靴でした。

 色すら赤じゃないし。


 ああ、そうですか普段用なのね。

 ではワンチャン、ヒロインと色違いの靴を買うチャンスも残されて…。


「ありがとうございましたー」


 ええ!!!売れちゃったよ。しかも入荷待ちの札が置かれてるじゃん。


 これ大丈夫?



 どうしよう、なんかずれてきている…。


 何故かその流れで夏樹さんもウチに来る事になって…。


 一緒にスマブ〇と買ったばかりのスプ〇トゥーンをやりました。


 どうしてこうなった。


 夕飯はママと一緒にカレーをたくさん作った遥なのでした。



 








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