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愛と終着の奏  作者: いなほ
17/23

春休み

 乙女ゲームの流れ的には,この高校2年生にあがる春は、主人公はすべての攻略対象と出会っているはず。

 冬哉さんの場合は春休みに転任する教師のお見送り会の幹事を一緒にしてたよね?

 たしかに春休みに冬哉さんは出かけて行って遅く帰ってきた日があった。


 でもヒロインと二人っきりになったにしては帰宅が早すぎたんだよなぁ。


 泣いちゃったヒロインに貸したはずのハンカチも持ち帰っていたし。

(他のものと一緒に洗濯されて干されていた)



 飯塚刑事とヒロインはT-REXを常飲してた人の変死体を見つけて記事になってたはずなのに新聞をチェックしてたにも関わらず、そんな出来事はなかったし。


 この間夏樹さんとはランニング中に出会ったけどヒロインと偶然靴屋さんで出会って色違いで買ったはずの赤いスポーツシューズじゃなかったし。



 神宮寺君とかはまったく姿すら見かけない。

 遥が強盗に追われて転んでけがした時に、掛かっていた病院で退院の時、玄関でそれらしき人とすれ違っただけ。


 そしてヒロイン、遠野優花とは、早引けした時に授業のマラソンをしている所を見かけただけという有様。


 まぁ、確かにまだ序盤なんですけどね?


 ちゃんと仕事してますかー?ヒロイン。


 いや攻略対象死亡フラグに向かっては仕事しなくてもいいですけど。

 でもそれぞれのトラウマなり悩みを解決してあげないと、そもそも攻略対象者さんたちは儚くなってしまうので。


 冬哉さんに対する餌付け作戦はうまくいってると思う。

 冬哉さん、すごく美味しそうにご飯を食べるし、お弁当箱もいつも空っぽにして

帰ってくる。

 甘い卵焼きが好きで、お弁当に詰めているとめちゃくちゃ嬉しそうにしてるし。

 真也とは男同士、よく庭でサッカーボールで遊んでる。


 遥とは最近スプラ〇ゥーンを買いにいって、石内兄妹も交えてゲーム大会を開催したりもした。

 そうそうこの前はカラオケに一緒にいったよ。

 その時に遥の合格祝いだって言って可愛い文房具とシュシュをプレゼントしてくれた。

 歌う声もめちゃくちゃイイ声で、どうしよう、スカウトマンに聞かれたら芸能界とかに連れていかれそうー。やだーうちの冬哉さん連れていかないでぇ。


 原作では入っていなかった部活も入って、それなりに忙しそう。だからヒロインとのイベントが起きないのかな?

 


 友成叔父のところは、奥さん、また実家に帰って、そっちの病院で産む事になるって。

 なんか、切迫早産の兆候が見つかって、予定日まで安静のために入院するらしい。

 原作では、そんな描写がなかったなぁ。

 

 新しい病院でちゃんと診断が下りたのかも。


 遥としては叔父が豹変するきっかけになった事故が未然に防ぐことができそうで少し気が楽だ。

 とはいえ生まれるまで、何が起こるかがわからないのが出産というし、このまま何もなく従妹が生まれてきますように、と祈ることしかできない。



 「って、こんにちは」


 「こんにちは、ええっと。」


 考え事をしながらランニングをしていたら、またもや偶然出会った夏樹さんに肩をたたかれていた。



 「あぶないよ。結び目、ほどけてる」


 言われて足元を見たら、新しく買ってもらったランニングシューズの紐がほどけかけていた。


 「あ、はい」


 慌てて直そうとしたら、あらら何か変。


 「縦結びになっちゃってるね、直してあげるよ。…あのベンチに座って?」


 またもやあの公園の近くだった。夏樹さんは公園のベンチを指さす。


 「僕、変な人じゃないから。君のお兄さんと同じ高校の広瀬だよ」


 「あ、冬哉さんと同じ高校の人ですよね。陸上で有名な…」


 「あれ?僕の事知ってるの?…そっか目立つからね僕のコレ」


  そういいつつやや自虐的に自身の明るい色の髪を指さす。


 「えっと、春から私も同じ高校の付属の中学に進学するんです。広瀬さん、陸上部でハードルの県内新人記録出してましたよね?でも、本当の得意分野は長距離だって」

 

 「あれ?僕有名なの?去年は同じ種目にすごく速い先輩がいて、僕はハードルに出させられたんだ」


 「今年は得意な方でエントリーできるといいですね。遥です。空木 遥」


 「あーそうか。空木君、冬哉って名前なんだっけ。君のお兄さんも学校では結構有名人だよ」


 まぁ、美形ばかりの攻略対象者ですからねぇ。

 お互いに噂程度は耳にしているかも。クラスは違うはずだから。


 夏樹さんは遥をベンチに座らせると屈んで靴紐をちゃんと結びなおしてくれた。

 後輩の面倒見も良さそうだなぁ。夏樹さん。


 「さ、これでいいよ。走るのは最近はじめたの?陸上部志望?」


 「残念ながら運動音痴で。音痴ながらも身体を動かしてみようかなって。

 実は強盗に追いかけられた時にすぐ転んじゃったんで…リベンジなんです。今度は逃げ切るぞって」


 「えっ?強盗?」


  夏樹さんはびっくりして聞きなおしてきた。


 「そうなんです。履いていたサンダルも壊れちゃって、幸い車が通りかかったんで転んだだけで済んだんですけど」

 

 「うわぁ、それは大変だったねぇ。ここら辺は治安がいい方だと思っていたけど…」

 「そうですよね。入られたの、友達の家だったんです。友達もショック受けてて…」



 気が付くと、リリーのケガの事まで話しをしていた。


 「僕も走りながら、不審な人がいないか注意しておくよ。そうか飼ってたワンコが…。ショックだったろうねその子。僕の隣の家でもハスキー飼ってるから…」


 そのハスキーがキリッとしたお利口そうな顔をしているのにめちゃくちゃアホっぽい悪戯をするんでよく飼い主さんに怒られているという話しをしてくれた。


「なんか、ハスキーってそういう子、多いらしいですね。受け売りですけど」


なんやかんやで夏樹さんと話ができて距離が縮まった。

 

「この時間はこの辺を走ってるから、また会ったら話そうね!空木、冬哉にもよろしく言っておいてね!」



 夏樹さんはにこやかに走り去っていった。

 いやはや自主トレを邪魔しちゃって面目ない。


 でもすごい気さくな人だったなぁ。原作ではもっと周囲に見えない壁作ってるようなタイプに思えたけど。

 まぁでもそれは相手が遥だからかもしれない。

 同級生の妹ってのがハードルが下がる原因かも。正確には従妹なんだけどね。


 「あ、尊」


 暫く走っていると今度は幼馴染その2の結城尊が自販機で飲み物を購入してるところと遭遇。


「今日はリコと一緒じゃないのか?」


「今日はリコちゃん、調子が悪くって」


 遥はまだだけど、リコちゃんはあの日でお休みだ。


 「一人で走ってるのか。危なくないのか。ほらお前の保護者は?」


 「…昼間だし。冬哉さんは部活だよ」


もう一本をケータイを翳して購入。


 「携帯買ったんだ?」


 「ああ、中学生になるからな。ほら」


 「…ありがと」


 スポーツドリンクをおごってくれる気らしい。


 「お前は買わないのか?携帯」


 「実は、今日の午後にでも買いにいこうかなって。」


 「つきあってやろうか?」


 「え?親と一緒だから…」


 「俺、買ったばかりだから詳しいぞ。最新の機種とか親は詳しそうか?」


 「えっと、たぶん詳しくない」


 「俺からの紹介で購入すると少し割引になるぞ。俺にもキャッシュバックあるし」


 「…お願いします」


 割引は大好きだ!


 大人の方の遥が陥落しちゃった。














 

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