先着順てことですか?
「はっ?何それ。先に好きになった人に優先権あるってか?」
「イミフー。篠宮の言い分、おかしいよね」
「あいつ好きな男子が絡むと昔っから馬鹿になってたからなー」
…昔っからって、いったいいつの頃から恋愛とかしてたの?私たち、まだ小6だよ?
「まぁわかった。津川と篠宮は空木に好きな人を盗られたって考えて結託してんだ。」
…なんて迷惑な。
「被害者意識バリバリで加害者認定の空木には何してもイイって思考になってんだろね」
…なんて迷惑で的外れな。
遥と尊や吉田君との間に恋愛めいた感情はない。尊はただの幼馴染だし、吉田君はただの親切なクラスメートってだけ。遥に対して嫌がらせをする暇あったら、アプローチするなり自分磨いて相手を魅惑させる方向で頑張ればいいのに。
現状、遥に対する露骨すぎる意地悪やいじめをするせいで、尊も吉田も篠宮と津川に対して引いてるどころか、嫌ってるって言葉に出して言ってたしね。
逆効果だよね。っていいたい。
でもそんな事もわからなくなってるんだね。恋は盲目…。
「吉田だって相手を選びたいだろうしなー。てか男子ってそういうの女子に比べて奥手な子、多いじゃん?ぐいぐい来られると引くって気づけよー津川」
「篠宮もなー。相手はモノじゃないんだから、はぁ、ったく。でもさ、このままじゃ空木、マズいよね」
「…でも、カンニングって、おかしくないですか?私の席、窓際の一番後ろなのに…」
ちょっと冷静になってみれば、違和感に気が付いた。
「カンニングをしてるのを見たって人がいるとしたら、どこからそれを見てたんでしょうか?」
「振り返って?テスト中にそんなことしてたら目立つよね?」
「そうですよね?お隣は吉田君だし。吉田君はそういう事を見たらはその場で注意するタイプでしょうし、第一この間の算数のテストは私の方が点数よかったですし」
「…。点数見せあいっこしてんの?」
「わからないところも、教えあいっこしてます」
そう答えたら宮地委員長も藤野さんも何かぐてっとした。
「…まぁ、クラスメート、仲がいいのはいい事なんだけどね…」
「…、男子と女子が仲いいのっていい事なんだけどね…」
「吉田君は歴史にすっごい強いです。武将の名前がスラスラ出てきて。前回のテスト、戦国時代だったらきっと負けていたです。」
「前回のテストは近代が中心だったね…うん、そっち方面は目星ついたわ。」
宮地さんの言葉に藤野さんが目配せしている。
うん?二人の間で何か閃いたのかな?わからん。
「空木、家の人に迎えにきてもらうんでしょ?電話かしたげる」
結局、私は遥のカンニング疑惑を晴らすいいアイデアが出ないまま、学校生活を過ごす事となる。
宮地委員長と藤野さんにはそういう事をしていないって信じてもらえたようだけど。
遥は携帯を持ってないし家のPCはロックがかかってるから、そのSNSを見る事ができないんだよね。
何を一体書かれているんだか…。
怖いけど、知らなきゃ書かれていないことと同じ事だと思うようにしている。
それよりも、やたら授業中に指される事が増えたんだよね…。
遥は真面目だから予習も復習もしてたし、New遥は方便として冬哉さんに勉強を教えてもらっているしなんたって中身はアラサーだった事もある。
死角なしの答えっぷりが出来たと思うよ。
カンニングしなきゃならないほどおバカさんだと思われるのもしゃくだったし、そこは自重しないで頑張った。
冬哉さんの学校の中等部を狙っています。
うん、少しでも近づきたい。
そんな秋も深まったある日。
「次期児童会長選挙の手伝い?」
私こと空木遥は、たまたま宮地さんに会いにきた現児童会長の石内美夕さんに捕まるのだった。
「遥って計算が早いでしょ?字も綺麗だし」
「いいじゃん?適任しょ?」
藤野さんと、副委員長の佐々木君に背中を押され、宮地さんと共に児童会室へ。
「この文書をワードにして欲しいんだけど」
字が綺麗なのって関係あったんかーい!と内心つっこみつつPCの前に。
「授業で簡単な入力なら教えてもらってるよね?」
「うん。できると思う」
何を隠そう、遥になる前の私は事務職をしていたような…。
「お、ブラインドタッチ?できるじゃん」
まぁおまかせあれ。
カタカタカタカタ。
そう力む事もなく一仕事終えました。
新児童会長立候補者の所信表明かぁ。なかなかに初初しい事でござる。
「できました」
何故かおおーと歓声があがる。
「宮地、思ったよりあたりだ。なかなかいい仕事をしてくれる」
「ふっふっふー。一石で二鳥とはこの事かと。」
「春にスカウト出来てたら、もっと楽できてたかも」
「ぐっ。それは言わない約束よ」
宮地さんも藤野さんも、軽妙なやりとりしてたけど、児童会役員のノリが元みたい。
「で、候補者のポスターを貼る場所だけど…」
あれ?私も引き続き協力する感じなのかな?




