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愛と終着の奏  作者: いなほ
11/23

委員長


「貴女、本気だしてないでしょ?馬鹿にしてるの?」


 えー。そんな事、小学生の高学年にでもなれば、言う子もいるんだ。

 成績の事かな?遥は馬鹿じゃないと思うんだけど、凡ミス多いんだよ。


「津川なんかにいい様にされてるの見るとマジでむかつく」


 ハイ。おっしゃるとおりです。

 でもね、そこは遥のもともとの引っ込み思案な性格からしていたしかたないというか。


「えーと宮地さん?藤野さん?」


 「担任から頼まれただけだから」


 トイレに入ったら外側からつっかい棒をかけられ閉じ込められた私を救出してくれたのは

学級委員長の宮地さんと書記の藤野さんだった。

 でも、担任の先生、私のこと、クラス委員に頼んだんだ。面目ない…。


 「えーと、ありがとう」


 「まったく、最終学年なのに、何してくれてるねん。津川もだけど、篠宮!」

 「あと半年よぉ。卒業まで。6年生最後の思い出がこれってどうなのよ」


 「…なんか、ごめんなさい」


 中身いい大人なんですが、一人で解決できなくてすみません。


 「あ、空木さんは一応被害者なんだから、謝らなくても…」

 「…一応?」


 なんかちょっと棘なかった?最初のもだけどさぁ。


 「直球で言うよ?吉田達侍らせていて楽しい?貴女クラスの女子半分から恨まれてるよ?」

 「は?はべらす?」


 宮地さんはやれやれという風に両肩をあげてオーバーなくらいに溜息をついた。


 「自覚なし?はぁ」

 「私はそんな気してたよ?宮地ィ。この子普段見てるとぼんやりしてるし。そういう露骨タイプじゃないと思うよ?」

 「素って訳?やれやれ。津川勝てないじゃんかよー。なんかもう哀れになってきた」

 「一生懸命やってんのにねー。まぁ方向は間違ってて迷子になってるけど」

 「どうすんの?佐々木めちゃ怒ってたじゃん」

 「佐々木と吉田って陸上部つながりだったっけ?はぁ。そういう事ね」

 「会長からも、『いい卒業式を迎えましょう』って言われてるのにさぁ。ウチのクラスから問題だすって嫌なんですけど」

 「それねー」


 宮地さんと篠宮ってダブル宮とかいってクラスのリーダー各だったんだけど、最近は一緒にいるのを見なかったと思ったら、宮地さんは児童会の活動で忙しかったかららしい。

 児童会的にはこの最終学年を素晴らしいものにして卒業しようって事になってて、宮地さんたちは裏でいろいろ計画とか話し合いとかしてたらしい。

 児童会を5年生と交代するこの時期にいじめ問題とか困る模様。

 そりゃ、かかわった生徒達にはしこりになって残るよねぇ。

 先輩として胸はれないしー。


 「佐々木は抜いて、女の子同士、おはなししようよ?空木さん」


 なんか怖いんですけど?



 その日の放課後、私は藤野さんの家にドナドナされていった。

 ちなみに佐々木さんとは副委員長の男子である。


「ちなみにそのケガ、本物?」

 藤野さん家について最初にそれを聞かれたんで混乱した。

ケガに本物と偽物、あるんかい…。


 仕方ないから空き巣と鉢合わせして追っかけられた事を話した。

 吉田君には話したんだけど、吉田君たちからは広がらなかったのかな?

それからなぜか社会と算数の問題を解かされた。

 

 「どう?藤野」

 「うん。答え合ってる。ケガも聞いてたんと違う」


 宮地さんはうーんと唸ると頭を抱えてしまった。

 

 「何なのよ、もう。私たちまで騙されてたって事?」

 「なんか簡単な問題じゃなくなってきたかんじ」

 「センセー。私たちの手にあまるんですけど」


 藤野さんは机に突っ伏して宮地さんはイライラと貧乏ゆすりをしながらスマホをいじりはじめた。

 話がなんか見えないんですけど。

 そして宮地さんは爆弾発言をしてくれたのだった。


 「空木、貴女カンニングした事になってるよ」


 …青天の霹靂。


 

 

 「ケガは男子の気をひくためで仮病だし、先日のテストではカンニングしたってこのSNSに書いてある」

 「津川は馬鹿だからこういう文書けないと思うよ。たぶんだから篠宮だ」

 

 「…なんで」


 びっくりしすぎて、12歳の遥がまた表に出てきたいみたいだ。

 瞳に涙がもりあがってくるのがわかった。


 「…ひどい」


 それまでいうと後はもう言葉にならなかった。

 しゃくりあげていると、宮地さんと藤野さんは申し訳なさそうな顔をして謝ってきた。


 「ごめん」

 「私たちもそれ、クラスの子から聞いて、そう思ってた」



 「津川が吉田のこと好きなの気が付いてた?」


 それは何となくそうかなーって思う事はあった。でもどちらかといえば、津川は篠宮達のグループに入りたいのかなって思ってたから。


 「貴女がしてることは、津川にとって残酷なことなんだよ。」

 「まぁでも、津川って吉田とカレカノって訳じゃないじゃん?それを求めるのはちょっとどうかと思うけど。行き過ぎというか」

 「えっと。私と吉田君はそんなんじゃないです。席が隣で吉田君、いい人だからよく話すだけで…」

 「ええ?それ本気で言ってる?」

 「ダメだこりゃ」

 藤野さんは再びそういうとまた机に突っ伏した。


 「めんどくさーい。なんでそんなんになるのー?津川」

 「津川からしたら、自分より下だと思ってる空木が自分より吉田に構われてるのが許せないんじゃないの?」

 「やめてよー。同じクラスメートじゃないの。なんでそこに上下関係つけるの?」

 「そこはほら、人間の先祖が猿だからじゃないの?」


 クールにドヤ顔しつつ宮地さんが言うと藤野さんがジタバタと暴れていった。

 「進化はどうなったー!!」


 「藤野、脱線。脱線。」


 藤野さんのコミカルな動きに、少し遥の涙がひっこんだ。

 手で涙をぬぐっているとバツが悪そうに 宮地さんがティッシュの箱を遥の方におしつけてきた。


「んで、なんで篠宮が津川に乗っかってるのかって話なんだけど、心当たりある?津川と篠宮ってそこまで仲いい感じしないんだけど」


 「あのグループ全体あまり仲よくないって私はにらんでるんだけど」


ぶっちゃけ、自分はあまり関わり合いたくない人たちなんだと藤野さんは言った。


 その疑問には遥は答える事が出来る。


小5の時の「わたしの方が先に好きになったのに盗らないで」事件だ。






 




 



 

 





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