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初ダンジョンと初ダメージ

 僕はゆっくりと目を開け、上半身を起こす。


「本日、三回目のログインだ! 頑張ろ!」


 僕は両手で顔を軽く殴って眠気を吹き飛ばす。

 一日に三回もログインをしてしまうなんて、異常かもしれない……。

 僕は少しずつだが、剣道バカからゲームバカへと変わりつつある。

 

「さてさて、ツキナはもうログインしたかな!」


 僕は隣で寝ているはずのツキナの方を見るとツキナの姿はなく、どこか寂しさを覚える。


「あれ……? どこ行ったのかな……?」


 僕がツキナに連絡を取ろうと、フレンドリストからチャットを開こうとしたときに突然、後ろから両目を塞がれる。


「誰でしょう?」


 この宿には僕とツキナしか入ることができないので、自ずと誰かは分かるのだが……。

 ツキナにもこう言うところがあるんだなと思い、改めて惚れ直してしまった。


「ツキナ!」

「あたり! 驚いた?」

「心臓が止まるかと思った!」

「そう!」


 ツキナは子供のような笑みを浮かべる。やっぱり可愛いなぁ……。


「三回目のログインだけど何やるの?」

「ヒビトの武器と防具が揃ったから、ダンジョンを一人で攻略してもらうわ!」

「ダンジョンって何だ?」

「強いモンスターがたくさんいる危険な場所のことよ!」

「そうなのか! なんかワクワクしてきた!」

「そう! なら早速、行きましょ!」

「おう!」


 僕とツキナは宿を出て、ダンジョンへと向かって歩き出した。

 初めて一人でモンスターの巣窟に潜り込む訳なので、闘志を燃やしていた。

 ダンジョンがある場所は、初めてログインした時にレベル上げを行った菜の花が一面に広がるフィールドの奥に石でできた建造物が存在しており、地下がダンジョンになっているらしい。

 

「ここがダンジョンかぁ……!」


 僕は期待に胸を膨らませながら、ダンジョンの入り口をじっくりと見ていた。


「ここで見張っているから、行ってきなさい!」

「おう! 行ってくるわ!」


 僕は軽い気持ちでダンジョンの扉を開け中へと入っていく。


 ***


 ダンジョンの中に入ってみると、少しだが全身が痺れているような感覚に襲われる。


「何だ……ここは……」


(こういう時はツキナに連絡して情報を聞き出すのが手っ取り早いか!)

 僕はフレンドリストからツキナを選択して連絡を試みようとするが、チャットを開くことができなかった。


「どうなってるんだよ!」


 僕は大声で悪態をつき、奥に進むことにした。

 奥に進むこと十分、僕はベトベトしている黄ばんだ色をしている変なモンスターに囲まれていた。


「うえぇ! 気持ち悪い! 何だ、この気色悪い奴は!」

 

 動くたびにベチャベチャ音を立てている。


「うえぇ! マジでキモい! とりあえず斬ってみるか!」


 僕は大剣を抜き、剣道のように構える。ベトベトしているモンスターに一撃入れてみる。


「面‼︎」


 とは言ったものの面がどこか全く分からないのだが……。

 ベトベトのモンスターには攻撃はあったったものの、弾力のある体に大剣は通らなかった。

 

「マジかよぉぉぉぉ‼︎ 最悪だぁぁぁぁ‼︎」


 悲痛な叫び声を挙げながらベトベトしたモンスターに呑み込まれてしまった。

(きもちわるぅぅぅ‼︎)

 僕は声にならない悲鳴をあげる。

 どうやら麻痺してしまったようだ。ベトベトしたモンスターの中で何度も何度も麻痺状態になってしまう。


【麻痺耐性(中)が麻痺耐性(大)に進化しました‼︎】


「おっ! 少し体が楽になったぞ! と言うか、そんなこといてる場合じゃねぇだろぉぉ‼︎」 


 僕は一人でボケとツッコミをしながらどうやってこの状況を打破しようか考える。そして更に時間が経つ。


【麻痺耐性(大)が麻痺無効に進化しました‼︎】


「どうしようかなぁ……」


 麻痺攻撃を一切受けなくなった僕はベトベトのモンスターに飲み込まれた状態で腕を組む。

 じっくりベトベトのモンスターを見ていたら、いつしか飲み物に見えてきてしまった。

 ヤバイ……病気だぁ……精神的に追い込まれているのかもしれない……。

 僕はベトベトのモンスターをジュースのように飲み始めた。


「おっ! 炭酸ジュースみたいな味だな! 美味しいかも!」


 僕は二十秒くらいかけてベトベトのモンスターを飲み干す。 


「くぅぅぅ! 美味しかった! お前ら全員、僕の飲み物になれ‼︎」


 僕は残ったベトベトのモンスターも同じように飲み干した。


帯電たいでんを獲得しました‼︎】


「帯電って何だ?」


 僕はリンクメニューからスキルの項目を選択して【帯電】をタップして説明を見る。


【帯電、スキルを発動してから十分間、触れたモンスター、プレイヤーを麻痺状態にする。ただし麻痺無効を持っているモンスターとプレイヤーには効果はない。 獲得条件、麻痺属性のモンスターを三十体、取り込む】


「おっ! これは強い! 相性抜群だ!」


 このスキルを発動すれば勝手にモンスターが麻痺状態になってくれるので、麻痺の効果が切れるまでの間にモンスターの急所を攻撃すれば【弱点特攻】と【達人芸】の効果が発動して簡単に倒せる訳だ。


「よし! これで簡単にこのダンジョンをクリアできるぞ!」


 僕は【帯電】のスキルを発動して奥に進む。

 次に僕の前に立ちはだかったのは二匹の狼だった。狼は二匹同時に僕に噛み付いてきた。


「自分から突っ込んでくるとはな!」


 僕は狼の噛みつきをわざと受ける。

 これで狼は麻痺状態になってくれると思ったのだが、期待はあっさりと裏切られた。

 1300あったHPが1250になり、ゲームにログインしてから初めてダメージを受けてしまったのである。だが【麻痺無効】を持っていたので、牙に含まれていると思われる麻痺効果は無効化できた。


「何だとぉぉぉ‼︎ こいつ麻痺無効のスキルを持っているのかよぉぉ‼︎」


 僕は叫び声をあげてしまう。

 ヒーリングブレスレットを装備しているので、受けたダメージは無かったことになるのだが、悔しくてたまらないという顔つきになる。

 僕は気持ちを直ぐに切り替えて武器を構える。


「かかってこいやぁぁ‼︎」


 僕はわざと隙を見せて攻撃を誘う。

 狼はそれに答えるかのように噛みつき攻撃をしてきたので、前に足を大きく踏み出し脳天に一撃‼︎


「面‼︎」

 

 狼は攻撃を始めてしまっていたので、回避することができずあっさりと消滅した。これは剣道では出鼻面と呼ばれている技だ。


「あとはお前だけだ! こいよ!」


 僕は再び狼を挑発する。

 狼は一回、吠えてから一直線に向かってきた。


「いい心意気だ! だが相手が悪かったな!」


 僕は後方に下がりながら狼の脳天に一撃をお見舞いした。


「面‼︎」


 この狼もあっさりを消滅した。これは剣道の引き面という技だ。


「終わったな! 次だ! 次!」


 僕は心を弾ませながらダンジョンの奥へと進んでいった。


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