空から自分が落ちてきた
空が青い。雲一つない正真正銘の快晴の天気だ。秋の高気圧が到来し、濃く、深く、澄み渡った高い空は背後の宇宙を連想させる。
周囲には稲刈りの終わった水田が虫の国となっているのだろうか、コオロギやマツムシなどの鳴き声が聞こえてくる。
「力が欲しいか?」
あまりに空気がいいものだから、彼女は自分に問いかけてみた。
「はい。是非ともお願いいします」
自分の質問に自分で答える。誰も聞いている者はいない。恥ずかしさはあまり感じられず、むしろ爽快さが得られた。残暑はまだあるが空気は夏ほどはもうジメジメしていない。空気がおいしい。
だが、彼女は、正直日々の生活に嫌気が差していた。毎日高校に通い、同じようなことを繰り返す。この繰り返しの中で社会からの抜け道を手にしたものだけが、世を嘆いてもいいというような風潮も好きになれない。自分のような無気力者には世界は厳しい。ふと、どこかに行ってしまいたくなる。あるいは、力が欲しい、日常を楽に、スムーズに過ごせるような力が。
ふと下の方を見ると、3メートルくらい先の地面に影が映っている。どうやら、その影は徐々に大きくなってきているようだ。今度は上を見てみる。
「女の子?」
上から落ちてきているのは、女の子だった。しかも、人が落下しているのとは思えない遅さで。
「あれ、もしかして私?」
よく見るとその姿は自分とそっくりだった。
落ちてきそうな場所に駆け寄ってみる。
そして、その子は目の前までふんわりと地面にたどり着いた。
やはりこれは自分だ。
ほくろの位置もすべてが同じだった。何もわからない。恐怖が湧くよりも頭が混乱してどうしようもない。
地面についたと思ったらその子は今度はどんどん地面の中に溶けるように沈み込み始めた。えっ何がどうなっているのか。あれ、今私は浮いてるのか。よく見ると自分の体がどんどん地面から離れていく。
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
彼女は頭の処理が完全に追い付かなくなり。
意識が途絶えてしまった。