犬は駆け回る 2
僕が家で暇を潰している時、姉さんと入れ替わっていた時にクラスメイトだった喬都目さんから、家にお邪魔したいと連絡が入った。急な連絡で驚いたが、姉さんが嬉嬉として準備をするのを見てもしやと思った。
姉さんには嘘の時間を教え、僕も準備をする。いつの間にか慣れてしまったスカートを着て、カツラを被れば僕は姉さんになる。それだけでほとんどの人が見分けられなくなるほど、僕達双子は似ていた。
姉さんの姿をして会った喬都目さんには、本当に驚かされた。僕が姉さんでないと一瞬で気づき、知られていないはずの名前まで当てられる。驚愕するとともに恐怖した。
「私も貴方のお姉さんと同じ、って言えば分かるかな?」
この言葉を聞いた瞬間確信した。この人も姐さんと同じで、姉さんのお姉ちゃんなんだ、と。
その後部屋に入ってきた恋叶の発言にははっきり言って信じられない気持ちでいっぱいだったが、姉さんの言葉を受け入れない喬都目さんに僕は歓喜した。
姉さんを受け入れられるのは僕だけだ。
その想いだけで僕は行動し、姉さんにとってのお姉ちゃんの座を奪った。
そして今──。
「──廉士!」
姉さんは少しずつ外へ出るようになった。僕が連れ出すようになったからだ。
僕だけを頼り、僕だけの言うことを聞いてくれる姉さんは、僕の心の何かを満たしてくれる。
時に喬都目さんが家に来て姉さんと話していくけど、姉さんはだんだん興味を無くしていっているのか、呼び方も「お姉ちゃん」じゃなくなっている。
でも学校に行くようになった姉さんは、時々僕の知らない人の名前を出すようになった。どういう人なのか聞けば答えてくれる。でもその人が姉さんにとってどんな存在なのかは話してくれない。
せっかく手に入れた姉さんを奪われてしまう気がした。
もしそうなら、僕は奪われないためになんでもする。僕の何かを満たしてくれる、僕の大切な姉さん。絶対に誰にも奪わせない──。




