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恋と略奪  作者: お茶漬け
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12/17

犬は尾を振る


 染野家に着いたのはお昼過ぎになった。アポイントをとり、大丈夫と返事をいただけたのですぐにお邪魔させていただいた。

 

 「大丈夫?」

 

 「すっごく緊張してるし怖いけど大丈夫」

 

 「そっか」

 

 螢は優しく頭を撫でてくれた。

 応接間で待つこと数分。扉が開き、見慣れた姿が部屋に入ってきた。ヒロインだ。

 

 「喬都目さん、早麻さん、お越しくださりありがとうございます。今日はなんの御用でしょうか?」

 

 「染野君」

 

 私の呼びかけに肩がビクッと上がった。こちらを見る目に怯えが混じる。

 

 「染野、廉士(れんじ)君」

 

 「なっ、なんで……!」

 

 「私も貴方のお姉さんと同じ、って言えば分かるかな?」

 

 椅子から勢いよく立ち上がった廉士の動きが止まる。

 

 「姉さんと同じって……まさかっ」

 

 「多分そのまさかであってるよ。だからお姉さんに──」

 

 「もういるよ、お姉ちゃん」

 

 聞こえてきた声に今度は私の体が固まった。そんな私に気づいた螢が、優しく手を重ねてくれる。

 

 「……陽子(ようこ)

 

 「その名前嫌い。恋叶って呼んで。お姉ちゃん、こうして会えたんだもん。また私のお姉ちゃんになってくれるでしょう?」

 

 妹の言っている意味が分からず困惑する。

 

 「あたし気づいたんだぁ。お姉ちゃんがいたおかげで自由にしていられたんだって。だからお姉ちゃんがいればまた私は自由になれる。私のためにお姉ちゃんになって?」

 

 「何……言って」

 

 本当に理解できない。私は今日謝りに来たんだ。全てを投げ出してしまったことに。全てを妹に任せ、自分の世界に篭ってしまったことに。なのに妹は訳の分からないことを繰り返すだけ。

 

 「姉さん!姉さんは陽子じゃない!喬都目さんは姉さんのお姉ちゃんじゃないんだ!」

 

 妹の肩を掴み止めに入る廉士。まったく同じ顔。そう、廉士はヒロイン恋叶の弟で攻略キャラクター。全員を攻略した後で開放される隠しキャラクターである。

 私が教室で見たヒロインに違和感を覚えたのは、座っていたのが彼だったからだ。顔は同じでも男。体格が違っていて当然だった。

 

 「……お前に言いたいことがある」

 

 突然、ずっと黙っていた螢が声を出す。その声には怒りが滲んでいて、眼鏡の奥の瞳も鋭い。

 

 「あなただぁれ?」

 

 「俺は早麻螢。舞雪の下僕(しもべ)だ」

 

 「そんな人がなんでここにいるの?ここには私とお姉ちゃんだけでいいの」

 

 「お前は舞雪をなんだと思ってる?」

 

 螢は妹の言葉を無視し、質問を投げかける。妹は螢の質問に少し考えると、にこにこと笑顔で答えた。

 

 「お姉ちゃんは私の──盾」

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