第39話 カコの過去
もうすぐ令和かぁ。
しばらく一人で、静かな時間を楽しんだ。
暖かい陽射しが、カップの中でキラキラと反射している。久しぶりにゆったりとした気分になり、目を閉じていた。
日本で友達とカフェに言っても、ずっと喋ってるからこんなお茶の時間って初めてかも。
瞬きするとカコがすでに座っており、同じように、目を閉じてじっとしている。
変な人やなぁ。
「カコさん?」
すっと目を開けてニコッと微笑んだ。
「メイにお願いがありますの。」
「何ですか?」
「会ったばかりで警戒するのもわかります。けれども私を信用して下さいませんか?そして本当にお友達になって頂ければと思います。」
「・・・ここ、他の人に話を聞かれることはないですか?どうして僕に執着するのか理由を教えて下さい。」
「そうですね。まず、ここは大丈夫です。恐らくメイは給仕達の事を心配しているのでしょうが、あれは私の部下ですわ。信頼のおける者しかおりません。」
カコは無人島で、私がゴウを魔法で助けている場面を見ていたようだった。魔法を使えることを隠しているので興味を持ったらしい。そのあと色々調べたんやって。しかも家族や友人の事も調べた内容を淡々と教えてくれた。ほんとこの短期間で恐ろしすぎる!
「それで出生も不明のようですし、私の至った結論が・・・」
といいところでお茶を飲むマイペースさ。よ○もとやったら、ズッコケてるわ!
私も緊張が走る。
「あなたは時渡りの方なのではなくて?」
うわー、バレてる。でも表情はポーカーフェイス。これは看護師のときに身につけたスキルや。
患者さんに動揺を伝えたらあかん場面は結構あったから。
「時渡り?何ですか、それ。」
「つまり、この世界の住人ではなく、他の世界から来た方、といえばわかりやすいかもしれませんわね。」
「もし仮にそうだったら、カコさんはどうするんですか?」
「あ、いえ。ごめんなさい・・・。脅すつもりではないのです。ではまず、私の事をお話致しますわね。」
カコはアリア新聖王国出身で、元勇者だったらしい。アリア新聖王国は、アリアという救世主が邪悪な闇を払い世界を救った後に新聖王国を建国したと言い伝えられている。このアリアが異世界人らしく、人々の間で勇者、英雄等と呼ばれ、世間からはアリア様と崇められた。それが今のアリア教団の 礎だ。初代は『教主』と呼ばれ、以後『教主候補者』を勇者と呼ぶようになったのだそうだ。
「私は、小人族と吸血鬼族のハーフなんですの。」
「え?!小人とか吸血鬼もいるんですか!」
フフ、と少し微笑んで、また話を続けてくれた。
勇者候補者は5~10名で、初代が女性だったため、魔力や身体能力が高い者、特技や容姿等も含め王国内の女子限定で何十年かに一度逸材を集めるらしい。そこで、地獄のような日々を過ごし教主が勇者3人を選ぶ。
教主は死ぬ前に、勇者の中から次の教主を1名指名する。残りの勇者は、新たな勇者候補の選定人となるシステムなんやって。
「私は、教主にはなれず選定人を終えた後、ここで隠居生活をしているのよ。」
「・・・あのー、じゃあ今おいくつなんですか?」
「メイ?女性に年齢の事を聞くものではなくてよ?でもそうね、私は今の教主の・・・7代前の勇者だったとだけ伝えておくわ。」と、軽く見積もっても300歳は超えてる気がするねんけど。
「なぜ、こんな話をするかと言うとね。私は秘密を抱えてとても長い時間を生きている。だから、全ては話せないかもしれないけど同じように秘密を抱えている誰かと・・・何かを共有したり、気の置けない友人が欲しいの。」
「・・・。」
「あなたも同じような気がしてね。思い切って声をかけてみたの。正直賭けだったわ~♪でもね、人を見る目はあると思うの。それに、女の勘ってあるでしょ?」
「・・・。」
「どうしても嫌なら諦めるわ。でも私と友人になれば色々な情報も手に入るわよ?それに、あなた冒険者になるんでしょ?この世界についての知識や活きた情報は貴重よ~?」
カコは全部じゃないけど、自分をさらけ出してくれた。私も秘密を知ってて、本音で話せる人がいれば心強い。
「今、少しだけ待ってもらえますか?」
「ええ、どうぞ。」
“ネイマ、テテ聴こえる?”
『何?どうしたのー?』『聴こえてるわよ~。』
カコの事を伝えた。自分の事や聖霊の事など話してもいいか、2人にもちゃんと決めてもらわなくちゃね。
『いいんじゃない?僕は賛成!』『そうねー、私も別にいいと思うわよ?』
“ありがと!じゃあ、話すね。”
「カコさん。僕、友達になります。というか、なって下さい!僕と友達に。」
「フフ、よかったわー。ありがとう!こちらこそ、よろしくね。」
それから私は異世界人で、精霊と契約してることを話した。
あと、この仕事が終わったら友達からパーティーを組んで冒険者になろうと誘いを受けていることや家族や兄弟を置いて世界を旅することが心配など悩みも話した。
「メイは転移魔法を使えるのかしら?」
「はい。でも距離はわからないです。少しずつ長くなってはいますけど。」
「私は結構得意なのよ。転移魔法の特訓してあげるわ!」
「ありがとうございます!コツとかついでに他の魔法も教えてもらえると嬉しいです!!」
「えぇ、いいわよ。あ、もうよそよそしい話し方はやめましょ?メイもゴウと話すみたいにしてよね。」
「はい!あ、違うな・・・わかった、改めてよろしくね!」
滞在中、転移魔法とプラスでカコが得意な闇魔法を教えもらうことになった。