第29話 トゥルバル国②
週1ペース更新を頑張りたいと思います!
めっちゃ避けてたんやけど、モリー船長だけならまだしも・・・。
ナイトおるやん!・・・上司やから無視するわけにもいかんよなぁ。
『メイ、なんかイヤそうだね?』
”ナイトがちょっとね・・・。”
「どこに行くんだ?」
「あ、ちょっと色々・・・。モリー船長はなぜここに?」
「俺はナイトと一緒に買い物だよ。日用品を仕入れるんだ。ゆっくりできる時も少ないからな。」
「そうなんですか。では、僕はこれで・・・。」
歩き出そうとしたとき「お前も一緒に来いよ! 市場初めてだろ?案内してやるよ。」とモリー船長。
すかさず「いえ、お2人の時間を邪魔しては申し訳ないので失礼します。」と一礼してその場を離れようとした。
「待てよ。船長がせっかく誘ってくれてるんだ。・・・お前も来い。」
「ナイトさん。今は自由時間ですよね?それは命令ですか?」
なんとなく前回のモヤモヤの件もあって、思わず刃向かってしまった。その様子をみて
「あー、悪かったな!メイ、気にせずに行け。ゆっくり見て回るといい。」
「・・・すみません。失礼します。」
モリー船長が助け船を出してくれたおかげでその場は何とか収まった。2人が見えなくなると
『メイ~~。どうしたの?ケンカ?ドキドキしたよー。』
”ごめんね。ナイトが何かとつっかかってくるからさ!一緒に居たくないんだよね。”
頭に血が上ってるから冷静になろうと思い、市場を抜けた先にある湖が観光名所らしいのでそこへ向かった。
『「うわぁー!」』
しばらく歩いた先にかなり大きい湖があり、琵琶湖を思い出した。立っている所からは全体が見えないくらいの広さだった。
さっきまでのモヤモヤは忘れて、湖の美しさに心を奪われていた。
「すごい・・・鏡みたいに、水面が透き通ってる・・・。」
自然と鼻歌を唄いながら湖の周りを散歩した。ポツポツとすれ違う人はいるけど、私を気にする人はいなかった。
ちょうど陽当たりのいい大きな木があって、近くの岩場には影が出来ており人気のない場所を見つけた。
寝そべって目を瞑った。あー・・・なんかまったりと時間が流れてて、暖かいし、タンダンの丘に来たみたいやなぁ・・・。
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”メイ、目を開けて下さいな”
なんかこれ、久しぶりやな。起き上がると女性の姿があった。
”初めまして、私は弁財天。ようやくお会い出来ましたね”
「初めまして、弁財天さま。加護、ありがとうございました。」
”恵比寿天からの頼みとはいえ、3つも加護を与えるなど非常識だと思いましたが・・・唯一の日本の神なので、日本人の事が気になるようですね。それに、手違いでこちらの世界に送った贖罪もあったのでしょう”
「あ、色々助かってます。ユニークスキルもそれぞれの神様由来のようですし。ただ使い方はよくわからないのですが・・・。」
"そうですか。・・・自然にあなたに働くようにオート機能になっているようですね。恵比寿天は商売人気質故に無駄を嫌いますから。あなたが使うにはこの方が効率が良いと判断したのかもしれませんね”
「あの、マニュアル化っていうか、オート機能オフにしてもらえませんか?あとその場合どうやったら使えますか?」
”そうですねぇ。自分で使い分けをしたいのなら念じればいいでしょう。オート機能はなくしておきますわ。”
「ありがとうございます!」
”あ、そうでした!私はあなたに贈り物をしようと思って会いにきたのです”
「え、なぜですか?」
”フフフ。あなた、お歌が好きなようですね。”
「はい。歌うと色々効果があるんで控えてますが。」
”それは私の加護が影響してるかもしれません。好きな時に歌えるように、ユニークスキル化しておきましょう。今オート機能をオフにしましたので、歌で回復をさせる場合は《歌声Lv.1》と念じるか唱えるとよいですよ”
「え!じゃあ普通に歌っても周りに影響しなくなるんですか♪」
”そうです。私は音楽の神でもありますので、自由に歌って欲しいと思いましたの。それと元はインド河(水)の神でもあります。あなたは、恵比寿天と私の加護をお持ちですし、今は海や湖など水に関係する場所にいるので、もしかしたら面白い出会いがあるかもしれませんよ”
「それ・・・サンカクラークみたいなヤツじゃないですよね?」
”さぁどうでしょう?あなたは冒険者になるようですし、沢山の出会いと別れがあるでしょうけど、せっかく新しい人生を歩んでいるのですから今を楽しんで下さいね”
「・・・はい。ありがとうございました!恵比寿天さまにも布袋尊さまにもお礼を伝えて下さい。この世界の人生を楽しんでますって!」
”ええ、わかりました。私達はいつでもあなたを見守っております。どうぞ、今世を全うして下さい”
そう告げるとスーッと消えてしまった。
私も再び目を閉じて、眠りに就いた。
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どれくらい眠ってたのかはわからないけど、スッキリと目が覚めた。
”ステータスブック”
ステータスのユニークスキルには歌声Lv.2が追加されていた。
あと、それぞれLv.1とLv.2の説明もあり効果などがどう影響するかがわかった。
これからは魔法みたいに念じてユニークスキルが使えるんや♪
『メイ?起きたならそろそろ買い物しに行かない?』とネイマに誘われて、市場へ戻る事にした。
市場は食べ物の露店もあり、気になるものを買い食いしながら回った。
”父さんと母さんにもなにかお土産ないかな?”
『お酒とおつまみとかって言ってなかった?』
”いつも2人で夜遅くに晩酌してるからさー。ツインズいないときの時間も大事だよ。”
ウロウロしていると酒場のような、バルみたいな場所があった。
ここなら何か置いてるかも・・・。
「おいおい、君にはまだ早いんじゃないか?」
長身のエルフ男に声をかけられた。
「えと、家族へお土産を探してて。父さんや母さんに美味しいお酒と晩酌用の食べ物があればと思って。」
「へぇ。まぁ、人族が好むかはわからないがこれはどうだい?」
『トゥルバル産パラナの花酒』と書かれており、フローラルな甘い香りのお酒の様だった。試飲したいけど、子供やからあかんやろうなぁ。
「有名なんですか?」
「そうだね。ここに交易に来る商人や君たちのような船乗りが買っていくよ。」
”交渉Lv.1”と念じてみた。
「あと、これに合うつまみはないですか?」
「そうだなぁ・・・。あ、パラナが花を咲かせる前に収穫した実を塩漬けして、エルフ族に伝わる万能調味料があるんだがそれで味付けしたのがあるよ。」
「食べてみたいです!」
「どうぞ。」
ネイマとゴウの分もキープしつつ、2~3粒食べてみた。ん?塩気とナッツみたいな味プラス香辛料でピリッとするけど美味しいやん。
「美味しいですね!これも下さい。おいくらですか?」”通訳Lv.1”
値段は銀貨2枚くらいかな?
「そうだな。本当は銀貨2枚だが、酒とこのつまみで銀貨1枚にしてあげるよ。その代り君が大人になったらまたこの酒を買って呑んでくれよ?」
「はい!ありがとうございます。」
やった!お得に買えたぁ。ユニークスキルが効いてるね♪まだ使いどころが慣れへんけど、数をこなすしかないから、これからもどんどん使ってみよう。
『お土産届けてみる?』
”うん!時間もあんまりないし、もう一回湖のところに戻ってやってみよう。”
人目に付かない所に移動した。”転移”
湖の岩場に着いて、周りを確認する。
”感知”
『こっちも大丈夫そうだよ~。』
”そうだね。こっちも人の気配とかないみたい。”
手紙とアクセサリー、お酒とつまみを持ってきていた布に包んで風呂敷包み風に整えた。
『キレイに包装できたね♪』
"日本では昔、こうやって風呂敷って布に包んでたんだ。"
距離もあるから、ここはネイマの力を借りることにして、“同化”。
手先に魔力を集めて・・・【ドン】の私の部屋をイメージしながら・・・。
“転送”
『“上手くいったかな?”』
“たぶん。荷物は消えてるし、届いてたら手紙が欲しいって伝言しといたから夜に一度確認してみよう!”
『“届いてるといいね~”』
“うん。じゃあ、そろそろ部屋に戻ろうか?”
“転移”
宿泊施設の部屋に戻るとベッドに倒れ込んだ。色々疲れたし、ゴウが帰ってくるまで眠ることにした。