第25話 いざ、出港!
いよいよ旅立ちです♪
夜10時。アーロン別宅には時計があるので確認した。
ツインズは1時間前に寝かしつけて、私もそのまま寝たフリ。
万が一のために、ネイマに残って貰い念話で通信する。
「じゃあ、行ってくるね。」
『うん。気をつけてー。』
“ 転移”
真っ暗闇な校舎裏に着いたけど、どこにおるんやろ?
静かに歩いてると、木の下にクラークが立っていた。案内されて、クラークの部屋入る。
「よ!悪いな。メイ。」
「夜遅くにすまない。さ、座ってくれ。」
ミトラスとクラークに勧められ椅子に腰掛けた。
「で?わざわざどうしたの?」
目線でクラークがミトラスを促した。
「あ。あのさ、メイは来年冒険者になるんだろ?」
「うん。ギルドに登録して、世界を回るつもりだよ。」
「それって一人で、か?一人旅はさすがに危険じゃないか?」
クラークが言うと、ミトラスが相づちを打つ。
「まぁ、でも冒険者ってそういうもんじゃない?危険は承知の上っていうか・・・。」
話の内容が見えない。何が言いたいんやろ?
「そこで、だ。お前、パーティーは考えてないのか?」
「え?!パーティー?・・・今のところは考えてないかな。一人の方が気楽だし。行きたい所に行けるからね。」
「まぁ、そうだよな。けど、ギルドランクが上がれば一人では厳しい依頼も出てくるんじゃないか?」
「そうかもね。でもまだまだ先の話だし、その時にパーティー募集でもいいと思ってるけど。」
「どうしたの?2人とも。ハッキリ言って欲しいんだけど。」
素の私は イラチです。
「あのさ!俺達とパーティー組んで冒険者にならないか?!」
前のめりにミトラスが言った。
「・・・え?!本気で?!」
「本気だ!」「本気だ。」同時に2人が答える。
「クラークも?」
「そうだ。ミトラスと話し合ったんだ。別にすぐに兵士にならなくてもいいよなって。」
「俺も、同じ考えだ。兵士は後からでもなれるからさ。」
すぐには返事できへんな・・・。
ネイマにも相談しなあかんし、何よりネイマの存在を話さないとあかんようになるし。
「戸惑うのはわかる。だから今すぐ返事はいらない。ただ、そういう選択肢も考えてて欲しい。」
「あ、あとな!俺達が出来る事とか色々お前に伝えたい。明日の仕事から帰って来たら、また話をさせて欲しいんだ。」
ミトラスとクラークが真剣に考えている事は伝わった。
「・・・いいよ。考えておく。ただ、あんまり期待はしないでね。色々事情もあるから・・・。」
「よっしゃーー!!」「よかった。」
「声デカいよ?!あと、期待しないでって言ったでしょ。」
「いやいや、断られると思ってたからさ!」
「考えてくれるだけでも嬉しいよ。」
「とりあえず、今日はこれで帰るね。また今度ちゃんと話そう。」
「分かった。」「おやすみ!」
転移魔法で戻り、ネイマに話した。
かなり驚いてたけど、それも楽しそうとネイマは喜んでいた。
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【ノグ】を出発し、【カタ】のアドア漁港に着いた。
昨日のうちにツインズにも話を済ませておいたのが功を奏し、別れ際はスムーズだった。
ジンクス家も前日入りしてたようで、重ねてお礼を伝え、特効丸に乗り込んだ。
「気をつけてねー!」
「無事に帰って来いよー!!」
他の船員の家族も来ており、あちこちから声が聞こえた。
船が離岸すると声も遠くなり、いよいよ旅に出るんだなとワクワクした。
『ツインズまだこっち見てるよー。』
「ちょっと寂しいけどね。」
船が動き出し、しばらくすると号令がかかった。
「全員聞け!船長から挨拶がある。」
甲板に集まり、モリー船長が
「初めての奴もいると思うが、分からないことは周りに聞け!考えて行動しろ!ただし、勝手な真似をして周りに迷惑をかけたら自分で責任を負うことになる。それができないなら、上に従って行動しろ!いいか?!」
「「「はい!!!」」」「「「ウスッ!!」」」
野太い声が響き渡る。
「進路は東南へ、サド海域を出て、ジリハマ海域へ入る。まず目指すのは、【トゥルバル国】だ。途中、 断絶海域を横切るから、その時は気を引き締めろ!新入りは担当の上の奴からしっかりと話を聞いとけ!以上!!」
「「「はい!!!」」」「「「ウスッ!!」」」
それぞれが持ち場に戻っていった。
「メーーイ!こっち、こっちー!!」
ゴウが呼んでいる。ロゼも一緒だ。
「ロゼさん、よろしくお願いします!」
「おう!よろしくな。じゃ、さっそくゴウとメイに仕事の内容を伝えとく。」
私とゴウは同じ所を担当する。主に荷物の運搬と調理補助だ。
直接の上司は『ナイト・キララ』という、キラキラネームな海の男にしては麗しすぎる容姿だとか。20歳で、若手のホープらしい。
あと、追加情報はロゼからやけど、最初に船長と会った時に一緒にいた厳つい男A、Bは、この船で有名な『キララ三兄弟』。
男A(長男)『カイト・キララ』30歳、男B(次男)『ライト・キララ』25歳、で三男が私達の上司、ナイトって感じ。先代船長からの側近で、ナイトはモリー船長と同い年で親友らしい。
情報収集を終えたところで、タイミング良くナイトが現れた。
「お前らが新入りだな?名前は?」
うわっ!ほんまにイケメンやん。色黒のマシュウみたい。ほんまにカイトとライトの兄弟なんかな?
「ゴウ・カナタです!よろしくお願いします!」
「メイ・パロットです!よろしくお願いします!」
「ゴウとメイだな。来い!仕事を教える。」
船内に入った。
『ちょっとみてくるねー。』ネイマが先にいってしまった。
基本的に調理場の隅で、野菜の皮むきとか指示された盛り付けとか食事ができたら呼びにいくとか。
あとは、荷物が積まれた後、指示された場所に運ぶとかが主な仕事のようだ。
「それから、断絶海域のことは知ってるか?」
「はい。」ゴウが答えた。
「じゃあ、言ってみろ。メイに教えてやれ。」
「はい。【ニケピヒ】=【未開の大陸】へ行くことが出来る唯一の海域のことで、年に1~2回夏居と冬居に1日だけ潮の流れが納まり、ニケピヒへの道が開けると言われています。通常は、流れの不規則な渦潮の集まりの海域の為、不用意に入ってしまうと二度と戻って来れない海域です。またニケピヒへは、戻って来た者はほとんどいない為、本当にそのような大陸があるかどうかも今のところ確認はされていません。」
「はは!完璧だな。ゴウ、教科書通り覚えたな?」
「はい!必死で勉強しました。将来船乗りになりたいので。」
「いいぞ。メイは金策の為にこの船に乗ったらしいな?共通語はちゃんと話せるようだな。」
「はい。まだまだですけど、来年には冒険者になるつもりなんで旅の資金を貯めたいので仕事をお願いしました。」
「冒険者か!じゃあしっかり働いて金を貯めろ。海の知識も身に付けた方がいいな。よし、これで『断絶海域』についてはわかったな?横切るだけでも船には相当負担がかかるし、この時船の操縦はかなり慎重になるんだ。だから、船内や甲板、どこにいても伝達が届く。この時ばかりは気合いを入れて指示に従ってくれ。」
「「はい!」」
「じゃあとりあえず、昼と夜の食事の下ごしらえをするからここの野菜の皮むきを昼までにやっといてくれ。」
「「は、はい!」」
ナイトが部屋を出て行った。
3分後くらいにゴウと顔を見合わせて「この量を2人で?!」と泣きそうになった。