第23話 家族旅行③
馬車で半日、ようやく【ノグ】へ到着。
マリーの様子は特に変わりなく、ツインズはガイルと一緒にいられる事が嬉しいのかくっついて離れない。
というわけで、今日も馬車の運転中。
『検問をすぎたら、アーロンの別宅に直接行くんだよね?』
「そうだよ。滞在中、泊まってもいいってさ。」
『ノンにも久しぶりに会えるかな?!』
「そういえば最近はこっち来てなかったからねー。」
大門が見え、検問待ちも懐かしい。
大体転移魔法で来てたから、検問パスやったんよな。
大門をくぐり、街に入ると【カタ】とはまた違う、首都の賑わい、匂い、たくさんの人が行き交う景色が広がる。
「さー着いたよ!」
「わー、おっきい・・・。」「ひと、いっぱいだね!」
ツインズも圧倒されているようだった。
先ずはアーロンの別宅へ向かった。
馬車を停めて、皆が降りるとノクターンが現れた。
「お久しぶりですニャー!いらっしゃいニャせ。」
ふさふさ、ふわふわの獣人ノクターンを初めて見たツインズの反応は・・・。
一気に走りだし、ノクターンの身体に突進!しがみついて「「うわー!!のんたーん!!」」と顔を埋めてモフり放題。
「こら!ノンすまないな。チビ達会うの楽しみにしてたもんだから・・・。」
ガイルが慌ててツインズを離そうとする。
「大丈夫ですニャ♪ルーにリマ!お会い出来て光栄ですニャ。」
ノクターンが挨拶すると、ツインズもやっと離れた。
「「こんちゃ!」」
「2人ともご挨拶できてスゴいですニャ!」
柔らかそうなノクターンの肉球で、ツインズの頭をナデナデしてくれた。
「「・・・のんたーん!すきー!」」
また抱きついて、すっかりメロメロのツインズ。しかし、その“ノ○タン”って日本人なら絵本で有名な猫の名前を想像してしまうんやけど・・・。
「ありがとうですニャ。私のことは“ノン”でいいですニャ♪さぁ!お家に入って下さいニャせ。」
両手にツインズ状態で、ノクターンは家に入って行った。
「父さん、馬を休ませておくね。」
「頼んだ。俺は荷物運んでくるよ。」
『僕も荷物運ぶの手伝ってくるねー。』
一仕事終えて戻ると、ノクターンが豪華な昼食を用意してくれていた。
「ノンがつくったの?」「ノン、りょうりじょうず!」
「どうぞ、お召し上がりくださいニャせ。お代わりもありますニャ♪」
皆で美味しく頂き、食後のお茶まで出してくれた。
ツインズはお昼寝。さっき興奮しすぎたみたいで、食べ終えたらテーブルで舟をこぎはじめていた。
昼過ぎにガイルはマリーを連れて診療所へ行く予定なので、私がツインズの世話をするつもりやったんやけど。
「メイ、せっかくなのニャ。ルーとリマは任せて遊んでくるニャ。」
「いいの?」
「任せニャさい!」
ネイマと馬車で話してたんやけど、ノグの西側、つまりネイマのお墓がある辺りに行って、少し先まで探検しようかって。
お墓まで転移魔法で、そこから徒歩でマップを埋めていきたいなーって作戦です。
「じゃあ行ってきます!」『行ってきますー!』
“転移”
「確かこの先は【ロフ国立森林地帯】で、その先に【ジザ】、【クピ】、最西端の【ヌイ】の街があるんだよね。」
『ヌイの先は砂漠地帯だよ!』
とりあえずロフ森林地帯を抜けて、ジザかクピの街に行けたらマップ更新やな。
『森林地帯は魔獣もいるかもだから気を付けていこうね。』
あ、ネイマが魔獣とあったのもロフ森林地帯の入り口やったな・・・。
「ネイマ、大丈夫?」
『大丈夫だよ!メイと一緒だし、あの時とは違うからね。』
南北に長いこの森は、動物も多い。
そして魔力も濃いので、魔獣が引き寄せられるのかもしれない。
ネイマと同化するようになってから、“自然のエネルギー”=“魔力”の存在を強く感じるようになった。
霧のような、煙のような色や匂いはないのに、濃い所や薄い所がある。空気もそうやん?酸素が薄い高地に行くと何となく息苦しいとか。そういう風に感じるねん。
「あれ?真っ直ぐ進むと意外と森抜けるの早いね。」
『世界地図でも見たけど、東西は距離ないからねー。縦長の森なんだよ。』
とすると、あの検問の先は・・・。
『ジザだよ!』
「どんな街かな?!行こう!」
検問では“観光”で来ており、中に叔父がいるとウソをついた。あまり詮索はされず子供一人でもあっさり通してくれた。
なんか武器とか装備品が売ってる店多いなー。
お、冒険者ギルドもある。
ハラ王国では、【ノグ】と【ジザ】に登録ギルドがある。
最近知ったんやけど、他の街には支店しかなくて、仕事の依頼は受けられるけど、商人ギルドも職人ギルドも登録するならノグとジザまで行く必要があるねんて。
「せっかくだし、ツインズにお土産買っていこうかな。」
あんまりお金も持ってないけど、剣術や魔法の練習頑張ってるし何か役立つモノはないかな?
折り畳み式ナイフが売っていた。大きさも果物ナイフくらいやし、持ち運びにもちょうどいいサイズ。
『これにするの?』
「2つ買うとちょっと足りないかな・・・。」
悩んでいると店の兄ちゃんが2つ買うつもりなら、値引きしてくれるというので交渉してみた。
「坊主は口が上手いなぁ!いいさ。初めてジザに来たんだろ?その値段で売ってやるよ!」
「ありがとうございます!お兄さんのおかげで兄弟達にいいお土産が買えました。」
それからもしばらく店やら建物を見物して回った。
教会らしきものがあり、数人の子供とシスターがいた。私設学校もカタとかよりは多く、私と同じ年頃の子供をよく見かける。
冒険者ギルドがあり、ちょっと興味本位で入ってみた。ガヤガヤとしており、ノグ同様人は多い。
子供でも登録さえ済ませば、その時点で冒険者だと名乗れる。だから、私が中に入ってもジロジロ注目を浴びることはなかった。
あとやっぱりギルド嬢は確認しとかないとね!
異世界やファンタジーの王道は、テンション上がるわぁ。
受付を見ると、“えっ?!”と足が止まった。
そこには執事系のイケメンさんが3人いて、忙しなく対応していた。
『漫画ではギルドの受付嬢は定番なのにね!男子だね~。』
まぁ私は目の保養になるなら、男子でもいいねんけど。でもなんか男だらけの職場か・・・。華が欲しいよなぁ。
“あ、でも奥で資料とか事務仕事っぽいのやってる人いる。あれは女子じゃない?”
『ほんとだー。中に女子がいるみたいだね。』
受付嬢と冒険者とのトラブル対策なんかな?
『依頼っていっぱいあるんだね。』
“どんなのがあるか見てみたい!”
ランク毎に分けられていて、AからEの5段階。AとB、CとD、Eランクの3つ掲示板があった。
Eランクは雑多に依頼も多く、上のランクへ行くほど意外と依頼は少ないんやな。
『Eランクって薬草採取とか、失せ物探しとか、畑の仕事の手伝いとかもあるよ。』
”たくさんあるし、簡単そうなものが多いなぁ。数をこなすって感じだね。”
「お、坊主も冒険者か?それとも依頼人か?。」
振り返るとおじいさんっぽい男性から声をかけられた。
「あ、いやぁ。もうすぐ冒険者になるのでちょっと見学に来たんです。」
「そうか。じゃあ冒険者ギルドは初めてなんだね?」
「そうです。だからわくわくしちゃって!でももう帰らなきゃ。観光で少し寄っただけなんで。」
「そうか。時間があれば話をしてみたかったんだがなぁ。」
「すみません。また必ずここに来ますので、その時はぜひ!あ、僕はメイ・パロットと言います。」
「グァレンド・バズゥーと言う。グレさんでいいぞ?」
「はい!ではグレさん、今日はこれで失礼します。」
冒険者ギルドを出て、検問所まで走った。
『どうしたの?』
”あ、あのグレさん・・・ネイマが見えてたんじゃない?”
『えー。そうかな?』
”わかんないけど。なんか視線がネイマを見てた気がして。”
『他の精霊の気配はなかったけどなぁ。』
”ならいいんだけど・・・。すっごい緊張したー!もうなんか疲れたし、そろそろ戻ろっか。”
”転移”
アーロン別宅の裏庭に着いて、家に戻るとツインズが「「おかえりー♪」」と迎えてくれた。
「ノンに遊んでもらったの?」
「うん!」「ばんごはん、つくったー。」
「お帰りニャさい!もうすぐ用意できますニャ。」
「父さんと母さんはまだかな?」
「そういえばまだ帰ってませんニャー。」
「もう少し2人を見ててもらっていい?」
「大丈夫ですニャ!行ってらっしゃいニャせ~。」
ガイルとマリーが気になるので迎えに行くことにした。