第22話 家族旅行②
家族旅行続きものです。しばらくお付き合い下さいませ。
ジフ村を早朝に発ち、荷台ではツインズとガイル、マリーがまだ眠っている。
『バーベキュー皆で出来て良かったねー。』
「本当にねー。旅に出る前にいい思い出ができたね。」
朝陽が眩しいけど清々しい空気と、人気のない山道は静かで心が落ち着いた。
少しの間、馬車の運転をネイマにお願いして、ステータスブックを確認していた。
マップを見てると、ハラ王国はノグから先がないなぁ、と実感。
ライールと勉強している時に世界地図を見せてもらってたけど、国名として載っていてもマップはどうやら実際に私が行かないと記されない。
ジュールド共和国の前に、ハラ王国内から行くべきかな?
『そろそろジフ山脈出るよー。検問あるから交代しよー。』
「はーい。ありがとね。」
検問を通り抜け【カタ】の街へ入ると、活気ある人々のざわめきで一気に雰囲気が変わる。
「おー?着いたかぁ?」
「父さんおはよ。もう少しだよ。」
「久しぶりによく寝たなぁ。マリーもまだ起きてないぞ。」
「いいんじゃない?まだ時間あるからさ。」
「ネイマもいるのか?」
『“起きてるよー。おはよう!”』ノートに書いた。
「そうか。じゃ、2人に任せてのんびりさせてもらうよ。」
そう言って荷台へ戻った。
「今日ここに泊まるし、船長さんがいたら先に挨拶してこようかな。」
『船見に行きたいねー。』
小一時間程で宿屋兼食堂『セイレーン』に着いた。
マリーとツインズもようやく起きて、市場へ散策に向かった。
ガイルと私とネイマは、船着き場へ行き船長を探した。
船長の名は『マリオン・モリー』。
船は『トッコウマル』ってアーロンからは聞いている。
探していると一番端に停めてある船体に『特攻丸』って漢字で描いてあるのを見つけた。
「あの船だよね?・・・なんか緊張してきた。」
『どんな人だろうね?』
近付くと、ガタイのいい男2人と少年のような背丈の低い1人が後ろ向きに立っていた。
「おーい!すまんが、こちらに“トッコウマル”の船長はおいでだろうか?」
とガイルが大きな声で呼び掛けた。
ガタイのいい男Aが「何のようだ?」と答えた。3人がこちらを向いた。
あ、やっぱり少年なんかな?ショートカットの日に焼けた小柄な男の子、あと厳つい系男Bが鋭い眼差しでこちらを見ている。
「あー、突然すまない。実はジンクス商会のアーロンからの紹介で来た。今度こちらの遠洋漁港の下働きに雇ってもらった者なんだが、船長はおられるか?」
「そうか。で、その坊主が?」
「俺の息子だ!よろしく頼む。」
「初めまして!メイ・パロットです。よろしくお願いします!」
頭を下げて、出来るだけ声は大きめで伝えた。
「そうか、ヨロシクな。俺はモリーだ。モリー船長と呼んでくれ!」
あれ?声高くない?
頭を上げてみると、まん中の少年が腕を組んでいる。
「え?あんたが船長なのか?!」ガイルも驚いた声だった。
男Bがおっかない顔で「おい!船長が小さいからってなめんなよ!!」
男Aは「モリー船長は若いが、ちゃんと先代からこの船を任されている。それは俺達が保証するから安心してくれ。」
モリー船長は、特に不快な表情もなくどっしり構えて何も言わず状況を見ている。
「いや、すまない。こちらこそ失礼した。少し驚いただけだ。どうか息子をよろしく頼みます。」
ガイルは深く頭を下げた。
「承知した。帰ってくる頃には一端の海の男にしてやるよ!俺についてきな。」
「ほら、とりあえず行って来い。俺はセイレーンで待ってるからな。」
「う、うん!」『わーい!船が見れるー。』
「カイト!メイを船に案内してやれ。俺は船長室に戻る。」
「はい!来い、坊主。」
と男A、いやカイトに呼ばれて付いていった。
『「おおー!」』
甲板に上がると他の船員も数人いて、忙しそうに仕事をしている。
「お前達下働きの見習いは、荷物を運んで整理したり、調理の補助をしたり、まぁ人手が足りない所の雑用係だな。」
「あの、カイトさん。出港は3日後ですか?」
「あぁ。ただ、天候にもよるからな。海に出たらあとは運任せだ。」
「見学してもいいですか?」
「いいぞ。でも荷物は触るなよ?」
「はい!ありがとうございます!」
船内をネイマと探索。
船の構造、仕事内容やどんな人が働いてるかを見とかないと。
ネイマに聖霊体になってもらって船を鑑定。
船員達はさすがにプライバシーもあるし、今はやめとこう。
ステータスブックで船を確認。
うん、問題はなさそうやな。
「おーい!メイ!!」
聞き覚えのある声。
船首の方を見るとゴウが手を振っている。
「えー?!ゴウも来てたのー!」
駆け寄るとロゼも一緒にいた。
「メイ!今回は俺の息子も同じ下働きだからな!見習い同士頑張れよ!!」
「俺もさ、職人より漁師のが向いてる気がして、こっちの道に進むことにした。」
「そっかー!知ってる人いると僕も心強いよ。」
「今日はここに泊まるのか?」
「うん、家族で旅行にきてるんだ。そういえばチイも来てるの?」
「いや、あいつは家の手伝いもあるし、チビ達の面倒みないといけねーからさ。」
「兄妹多いもんねー。」
「ま、お互い一番下っ端同士だし、よろしくな!」
「うん。こちらこそよろしく!」
一通り見学もしたので、船を降りた。
『面白そうな船だねー。』
「船長は若いけどしっかりしてそうだし、何よりカナタ親子が一緒だから安心したよ。」
宿屋に戻り、船での事を話したらガイルも安心してくれてた。
もうすぐ旅に出るんだと思ったら、ドキドキ鼓動が高鳴り、夜はなかなか寝付けなかった。