第14話 バーベキュー夜の部②
「来たぞー!」
「こんばんはー。」
ジルとオリヴィアが到着。荷台から酒やら、ウーパの肉、野菜の塩漬け、ハタハタの開きなど酒のあて(肴)になるものを沢山持ち込んでくれた。
「ありがとな!」ガイルは運ぶのを手伝う。
「いらっしゃい~。」マリーは顔だけ見せてすぐ台所に戻っていった。
リビングの賑やかな声や音で、眠ってたことに気がついた。
『メイ!そろそろ始まりそうだよー。』
「よく寝たぁ~。」
ちょっとお腹も減ってきたし、ご飯食べにいこ。
ネイマは台所へ直行するって。
「リカはまだ寝てるのか?」椅子に座り、さっそく酒を飲み始めるジル。
「そういえば、見てないな。お、メイ起きたのか。リカを呼んできてくれー。」ガイルもすでにコップにお酒を注いでいる。
「わかったー。」あくびをしながらツインズの部屋に向かう。
トントン、「リカー?起きてる?」
返事がないので、もしかしたら私の部屋にいるツインズと遊んでるのかも?
トントン、「入るよー?」
中を確認するとツインズが眠っている。
どこにいったんやろ?
ついでやからトイレに行っておこう。
ふわぁぁ。まだ眠いなぁ。
そういえば、最初はこの汲み取り式トイレに慣れなかったけど・・・。
魔法を使って臭いとか中に溜まった汚物の処理を定期的にやってるから、うちのトイレは割と清潔だ。
大体の家は、外にトイレを作ることが多い。
もちろん水洗トイレなんて技術はまだないから、最初は辛かったなぁ。
ぼやっとしたまま用を足し、部屋から出ようとしたら「え?!」と目を疑った。
リカが裸で背を向けてうずくまっている。
「こっち見ないで!そのまま進んで!!」
「はい!!」
えーーー!リカお風呂入ってたん?
なんで鍵かけてへんかったんやろ・・・
チラっとだけやったけど、ジルにバレたら私・・・殺されるやん・・・。
扉の外から小声で「リカ。鍵あるからかけといてよ?あと、この件はジルさんに内緒で頼む!」
「わかってるわよー。メイも誰にも言わないでよ?!」
「誓います!!」
その場を立ち去って、ガイルを小声で呼んだ。
うちはユニットバスといえば聞こえはいいが、トイレと風呂場が同じ部屋にある。
少し離れた位置で、風呂の方には外の井戸につながる裏戸もあり、タライと水を溜める瓶がある。
カーテンとかしきりはないし、風呂場といってもタライにお湯を入れて、周りに水が溢れないように囲いをした超簡易風呂。
工夫して外に水が流れるように改築はしたけどね。さすがにシャワーまではない。
「リカは今、お風呂に入ってるよ。」
「そうなのか?なんで小声なんだ?」
「別に何でもないけど、しばらく手洗い場は使えないからお願いね!」
「わかったよ。」
ガイルも少し酔い始めていたので、深くツッコまれなかった。
”よかったぁ~。”
「リカー!まだ起きないのか?」ジルが叫ぶ。
「今風呂に入ってるってよ。皆ー!しばらく用を足す奴は外使ってくれ~。」とガイルが呼びかけた。
「はーい。あ、ジルさんもガイルさんも!もう飲んでるじゃないですかー!」オリヴィアがチラチラ気にしている。
「はいはい。リヴィさんもいってらっしゃいな。ここはもう終わりだからねー。」マリーもようやく料理を出し終えたみたや。
オリヴィアも飲みに参戦。
けっこうハイペースで進んでるなぁ。
「入るわよー!」声と同時に扉の方で音がして、カノン入ってきた。
後からアーロンも。
「あれ?アーロン来たのか?!」
「ミリュがさ、2人で留守番できるって、無理やり追い出されたんだよ。」
「あら、その割には嬉しそうだったじゃない?」
アーロンとカノンも席に座り、「「「「「カンパーイ!」」」」」
マリーは子供たちの分を私の部屋に運んでくれた。
ツインズも匂いにつられて起きてきた。
バーベキュー夜の部は、リンビングで大人がワイワイやってるので、子供は私の部屋で食事することになった。
「兄ちゃー。しっこ。」「わたしもー。」
ツインズが催している。
2人を連れて外へ行った。
家に戻るとオリヴィアがジルの横をキープしており、積極的にお酌をしている。
それをニヤニヤ見てるのはガイルとカノン。
「ジルさ、このままずっと一人でいるつもりなのか?」
「そうよね~。ジルったらけっこうモテるくせに奥さん一筋だよね。けど、リカちゃん卒業したら、自分の事も考えてみていいんじゃない?」ガイルとカノンが本題に切り込んだ。
「なんだぁ?急に何言ってるんだよ。俺は、ドンをずっと守っていくつもりなんだよ!別に今更、嫁さんもらわなくても一人でやってこれたしな!」
「何言ってんのよー。リカちゃんが帰省のたびに家事やら掃除をしてくれてたから何とかなってたんじゃない。」
カノンが笑いながら言うと、”うんうん”、とアーロンも頷いている。
「リカだって嫁に行くんだから、これからずっと一人ってのもつらいぞー?ちょっと気になる女はいないのかよ。」ガイルがオリヴィアに目で合図を送っていた。
「兄ちゃ!ごはん!」「早くいこ!」
あーやっと面白い展開やのに~~。
ツインズ達に引っ張られて自室に戻る。
リカが濡れた髪を拭きながら、ベッドで座っていた。
「さっきはごめんね。居るって知らなかったんだ。」
「わかってるわ。鍵をかけ忘れた私が悪いのよ。気にしないで。」
そうは言うけど、顔が赤いリカ。
「リカちゃ、まっか!」「ほんとー。ぽっぽ(頬)あつい?」
ルイとリマローズが無邪気に言うから、なんか微妙に気まずい空気が流れた。
「さー。ごはん食べよう!あ、リカ。髪乾かしてあげるよ。」
「え?どうやって?」
「ちょっと横向いてね。」
リカの隣に腰かけて、両手をかざした。”微風”
まぁ、ドライヤーです。ちなみに魔力に水か火をプラスイメージすると温風、冷風になります。
「うわぁ!髪に風が当たってる。」
「冷たくない?」
「大丈夫。これって魔法なの?」
「そう。髪の毛乾かすのに便利なんだ。ツインズ達にやってあげてるんだよ。」
黒髪でストレートのツヤツヤ。いつみても綺麗やなぁ。
「リカって髪結ばないの?」
「剣術の試合とかでは結ぶかな。めんどくさいんだよねぇ。卒業したら髪切ろうかな。」
ジルやミトラスが泣いて反対しそうや。
「リカちゃ、かみ切ったらだめー。」「きれいだもん。切ったらだめ!」
ツインズもファンかい。
「ほらね。言うとこうやって周りが反対するのよねー。切る時は誰にも言わずにバッサリ切るわ♪」
「もったいないよー。綺麗で長い黒髪素敵だよ。」
急にリカが黙る。
「リカちゃ、またぽっぽまっか!」「おねつあるー?」
めずらしく照れてるんかな?
「はい!終了。乾いたと思うよー。」
確認の為に、髪を触ったらほんとにツヤツヤやった。
「あ、ありがと。ちょっとタオル置いてくる。」
そのまま出て行ってしまった。
「兄ちゃ!これおいしい♪」「ジュースおいしい!」
ツインズはご機嫌。私もお腹が空いたので先に食べることにした。
リカも戻ってきて、沢山あった食事も全部食べ終えた。
リカとジルは、このままツインズの部屋にお泊り。オリヴィアは、ジンクス家に泊めてもらう事になっていた。
子供組はわりとすぐに就寝したが、大人組は朝方まで飲んでいたようだった。