第12話 子供だけでバーベキュー!②
「おはようございます。」
バイヤー家のドアをノックした。
反応がないのでもう一回。
「はーい!」とリカの声。
でもなかなか出てこないのでドアを開けると、めっちゃ大きい荷物を背負ってヨロヨロしながら近づいてくる。
「何?!その荷物・・・。」
「お、重いのよ~。父さんとリヴィさんがあれこれ持ってけって詰め込むんだもん。」
とりあえず荷物を下ろしてもらい、中身を確認。
要るものと要らないものを分けたら、半分くらいになった。
「助かったわー。ありがとう!」
「皆で持ち寄ってるから、そんなに必要ないよ。残した分は、夜に持って行ってもらったら?」
リカは手紙を残し、半分になった荷物を軽々と持ち上げて出てきた。
「お待たせ!行きましょ♪」
手を繋いで“転移”。
転移したところは、サプライズゲストがちょうど魚を釣ってる最中の所やった。
“あ、失敗したわー・・・。”
案の定「うわ!お、お前ら何で手繋いでんだよー!!!」と叫んでいる。
「は、はあ?!なんでアンタがここに居るのよ!!え?!・・・めっずらし~。クラークまで来てるじゃない!」
「よぅ。お邪魔してるよ。」
「早く手を離せーーー!」
サプライズゲストは、ミトラス・ムーと同じクラスの『クラーク・ロイブ』でした。
クラークの事はあんまり知らんけど、ミトラスが連れて行きたいっていうし、クラークもぜひ同行させて欲しいって言うからね。
しかも、このクラークは“隠れ魔法使い”で、転移魔法や下級魔法は扱えるくらいの魔力持ち。
ミトラスも知らなかったらしくて、驚いてたわ。
かなりクセモノ臭がするクラーク君やけど、面白そうやし、人手も要るから招待してん。
リカは驚きのあまり、私の手をかなりきつく握ってるから離したくてもなかなかほどけない。
「リカ・・・。驚いただろうけど、手ぇ痛いから離して?」
「あ!ご、ごめんー!」
ヤキモキしているミトラスを見て、めっちゃクラークが笑ってる。
そういう関係か。なかなか楽しくなりそうな予感。
リカも怒りを通り越して笑えてきたらしくて、
「ここは彼らに任せて行きましょー。」
と、またわざと私の手を引いて小屋に向かうから、ミトラスの叫び声が遠くから聴こえたけど、すぐに海の波の音にかき消されてしまった。
小屋にはミリューイとツインズも到着していた。
「「兄ちゃ!!」」
“わーい“と、近づいてきたが、リカを見て固まった。
「リカ・バイヤーさんだよ。2人とも挨拶は?」
「「こんちゃ!!」」「こんにちは。」
ルイとリマローズ、ライールも挨拶した。
「こんにちは。今日はよろしくね!」笑顔で答えると、3人ともポッと顔が赤くなった。
「兄ちゃ!あついー。」「ぽっぽ(頬)、まっかー!」
「なんでかなぁ、ドキドキします!」
マルコとルーベンは、その様子に“わかる、わかる”と頷いていた。
「リカ!久しぶりね。よろしく!」
ミリューイはライールを後ろから抱きしめて、リカを牽制している。
「ミリュ久しぶりねー。よろしくね!」
きれいなお姉さんは大変やなぁ。
「さぁ全員揃ったし、外でバーベキューの準備しよう!」
「メイ!これ運んだらいいの?」「何したらいいか言って!」
マルコとルーベンが張りきっている。
リカとミリューイにはチビ達をお願いした。
焼き場は、なんちゃってコンロをミトラスとクラークに説明して造ってもらっていた。
さすがに2人は優秀で、きちんと炭を作って石や乾燥した枝も短時間で集めてくれてたし、木の箱を利用して出来上がっていた。
火をつけてみて、燃え具合を確認。
ちゃんと使える!
マルコ達が肉や野菜、飲み物を運んでくれてる間に魚が釣れたかを見に行くことにした。
「ミトラース!魚釣れたー?」
結構色々な魚を釣ってくれていた。
「どうだ!これだけ量がありゃ大丈夫だろ?!」
「さっすがミトラス!ありがとうー。クラークもコンロ造り本当に助かったよ。ありがとう!」
「お役にたてて良かったよ。」
「連れてきて良かっただろ?クラークは結構使えるぜ。」
「どういう意味だよそれ!」
ミトラスって残念イケメンやったけど、クラークみたいな友達が側にいるならフォローしてくれそうやな。
「ミトラス達が頑張ってくれたから、皆でバーベキュー楽しめそうだよ♪」
釣った魚を持ってコンロの設置場所へ戻った。
下ごしらえをしないといけないので、ミトラスにちょっとご褒美をあげることにした。
「クラーク、こっち手伝って。あ、ミトラスは小屋に行ってチビ達呼んできてくれる?」
「わかった。」「わかった!」
リカと2人きりにはなれないけど、ちょっと距離が近づいたらいいねんけどなぁ。
「お前、ミトラスとリカをくっつける気なのか?」
マルコ達に聞こえないくらいの小声で、クラークが話しかけてきた。
「え?そんなつもりはないけど、頑張ってくれたからミトラスにも良い事ないとね♪」
「ククッ。お前は僕と同じ側の人間か。今日は楽しめそうだよ。ありがとう。」
お礼を言われる筋合いはないけど、深入りしていいものか判断しかねるから適当に笑ってごまかした。
「マルコとルイーズもありがとう!さぁ、好きなだけ食べてね。」
「「やったー!」」
小屋から皆が出てきた。リカとミトラスは、ルイとリマローズをそれぞれ連れてきてくれて、ケンカもせずに歩いてきている。
バーベキューは、”自分で食べたいものを焼いていく”のがルール。チビ達は例外やけど。
それが新鮮なのか、ライールも積極的に輪の中に混じっていた。
ルイやリマローズもミトラスが手伝おうとすると「「自分でやる!」」と周りはハラハラしながら見守っていた。
私は黒子に徹し、ちょっと食べながらも飲み物や食材の確認、片づけもある程度こなしつつ、バーベキューを楽しんだ。
「もうーお腹いっぱい!」
「美味しかった~。」
「さかな!おいしかった!」「ミーくんありがと!」
ツインズから言われると、ミトラスは照れながら後片付けをしていた。
「あのクラークさん、こんろ作りすごかったです。勉強になりました。ありがとうございました!」
「え?あ、あぁ。いや、こちらこそ楽しかったよ。ありがとう。」
めずらしくライールが話しかけている。しかも、あのクセモノに。
クラークは面食らったようで、戸惑っている表情だった。
「人見知りのライが自分から話しかけてる!凄いものを見てしまったわー!!」
ミリューイが弟の成長を喜んでいた。
「今日は本当に楽しかった!メイ、ありがとう。ミトラスやクラークも一緒で良かったわ。いい思い出になった。」
リカも楽しんでくれたようだ。
「メイ。今日は魔法見れなかったけど、今度絶対見せてくれよな!」とマルコ。
「リカ!僕がそれ持つ。手伝うよ。」ルイーズが行くと、ミトラスも駆け寄り何も言わずに重たいものを運んで行く。
”社会人になったらライバルはまだまだ増えそうやな~”
と生温かい目で見守っていると、それに気付いたクラークがやってきた。
「メイはリカの事どう思てるんだ?」
「クラークこそどうなの?ミトラスの邪魔はしてないようだけど。クラークはリカをどう思ってるの?」
「答えになってないな。僕にとってリカはただの友人、ミトラスの想い人かな。」
「僕にとっても友人だよ。今のところはね。先の事はわからないよー?クラークも結構いい奴なんだね。」
「何だそれ?ククッ。メイ、お前面白いな。気に入ったよ。改めてよろしく頼む。」
「こちらこそ。あ、ミトラスを頼むね!残念イケメンだから、面倒みてあげて。」
「”い、いけめん”?何だそれ。」
「顔がかっこいい男って意味だよ!クラークもけっこう男前だけど、女子受けはしないだろうなぁ」
「言葉の意味はよくわからんが、ミトラスは大事な友人だからな。飽きるまで面倒みてやるから心配するな。それよりまた、面白いことやるなら誘ってくれよ!」
「いいよー。」
ツインズがウトウトし始めてるし、ライールも座ったまま寝てる。
「先にチビ達送っていくから、片付けよろしく!」
「わかった。」
剣士官学校組にここを任せて、ツインズ、ライール、マルコとルイーズを家に帰した。
戻ったら綺麗に片づけてくれてたので、小屋でちょっと休憩して解散した。