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第8話 バイヤー親子

【傾向の美女】ってどれくらいの美人レベルなんだろう・・・

「リカ!もうすぐ峠を越えるぞー。トロ爺達にも久しぶりに挨拶して行ったらどうだ?」


「そうねー。タイナさんやマレナ姉さんにも会いたいわ。」


大体3か月毎に帰省する機会はあるのだが、今年は卒業論文や就職に関連した活動があり、何かと忙しい。

だから、次に帰ってくることができるかわからないので、できるだけ親しい人達には顔を見せておこうと思っていた。


「お!なんだ。トロ爺が手ぇ振って待ってるぞ。」

「本当だ。おーーい!!トロ爺ぃ~~~!」


ジルの横に座り、手を大きく振り返した。

よく見るとマルコやルーベンも居て、皆で通るのを待ってくれていたようだ。


「リカ、お帰り。朝食まだじゃろ?食べていきなさい。」

「「リカー!おかえりーーー。」」


「ただいま!トロ爺もマルコもルーベンもお迎えありがとう。」

「じゃあ、朝食食ってから帰るか。」


馬車からおりて、外用のテーブルが置かれているところに向かう。


ジルは馬を休ませ、水や食事を与えていた。

「リカ!先に行って食べててくれ。」

「はーい!」


出来たてのパンをルーベンが持ってきてくれて、マルコが椅子を下げて誘導してくれた。


「二人ともありがとう。」

ニコッと笑顔を見せると、2人は頬を真っ赤にしてぼーっとなった。


「どうしたの?」

とリカが声をかけるとハッと我に返り、慌てて朝食の準備に戻って行った。


「はははっ。リカは罪作りな女じゃなぁ。」

トロ爺がハーブ水を持ってきてくれて、コップに注ぐ。


「なんでよー。ただ笑っただけなのにっ。」

「すまんすまん。悪くとらないでおくれ。リカの笑顔は素敵なんじゃよ。」


コップを渡してくれたので飲むと、ひんやりとして美味しい!


「はーっ!ジフ村の朝露ハーブ水は最高ね♪」

「美容にもいいんじゃよ!リカが飲んだらますます美しくなってジルが大変じゃな。」


お世辞でもちょっと嬉しくて笑っていたら、ジルがやってきた。


「トロ爺!俺が居ない間特に変わりはなかったか?」

「まぁ、それは後でな。まずは食事をしなさい。」


パンとスープとサラダ、食後に絞りたてのミルクと果物のジュースを用意してくれてお腹いっぱいになった。


トロ爺とジルは少し離れたところで話をしている。


リカは晴天を眺めながら、故郷の澄んだ空気や穏やかな時間を楽しんでいた。


タイナとマレナがやって来て、ギュッと抱きしめてくれた。

「お帰り、リカ。」

「リカちゃん、お帰り!」


「ただいまぁ!」


リカにとってこの2人は母親、姉のような存在。7歳の時に母親が亡くなってから、色々な事でお世話になっている。


なんせ父親と兄なので、年頃になるとリカにどう接していいかわからず、リカも男親や男兄弟には相談しにくい悩みもあった。

そんな時にいつも話を聞いてくれたり、時には泊まりで面倒をみてくれていたので、この2人が居たから乗り越えられたことも多い。


「また一段と美人になっちゃって。ジルも大変ねぇ。」

「リカちゃん、いい人はできたの?」


「いないよー。私なんて全然そんな人来ないんだから。皆大げさよ。」


タイナもマレナも”高嶺の花なのね”、と目を合わせた。


「そうだ!私ね、主席なんだよ。今クラスで剣術一番なの。男の子にも負けないんだから。」


「すごいわね。頑張ったのね。」

「ケガとかは大丈夫?気を付けてね。本当にそれだけがいつも心配。リカちゃんは強いけど、無理しちゃだめよ?」


「うん。わかってる!」


女子トークは一度始まるとなかなか終わらない。


マルコとルーベンもリカと話したくて仕方がないが、今この場に割って入ってはいけないと幼心にも空気を読んでいた。

ソワソワとタイナとマレナの後ろを行ったり来たりしている。



離れた所ではジルが難しい顔をして、トロ爺からの話を聞いていた。


「そうか・・・。ククドっていやぁ俺達にとっても因縁の魔獣だからな。それをガイルの息子が倒したってのは偶然でも敵討ちみたいなもんだ。」


「何にせよ、本当に助かったんじゃよ。ルーベンだけでなく、メイは儂らの恩人じゃて。」


「あいつにもケガがなくて良かった。魔法の件はわかった、こっちで上手く伏せて報告しておくから。」


魔獣に対抗するには、魔法が一番効果的である。

物理攻撃も有効ではあるが、相手は体躯が大きいため、手練れの数が多ければ剣術や物理攻撃も対抗し得るが、こんな辺境では兵士の人数もおらず、ましてや普通の人が戦うのはかなり困難だ。


頻繁に魔獣が出現するならば、国も対策を講じてはくれるだろうが、このように滅多にないからずっと放置されている。


”魔獣に出会ったら天災と思って過ぎ去るのを待つしかない”


このハラ王国では、そう言い伝えられている。

実際のところ、魔法使いの数は増えてきている。なのに、配置は首都のみに集中しておりバランスが悪く、定期的に辺境地へ派遣される制度もない。


魔法使いを学院に集めて研究員にしたり、軍部に重きを置いているのが現状なのだ。


メイみたいな”隠れ魔法使いの存在”がいなければ、街が壊滅する恐れだってある、とジルは考えていた。


皆が自衛出来る程度に魔法が使えるようになったら、もう少し安心して暮らせるのに・・・。


考えを巡らせながらもリカの方を見て、タイナ達との話が終わるタイミングを見計らっていた。


―――――――――――――


「母さん、そろそろ仕事戻らなきゃ。」

「そうだねぇ。片付けしなきゃね。」


ようやく自分達がリカと話しができる!とマルコとルイーズが声を出そうとした瞬間、「リカー!!そろそろ行くぞー!!」

と言うジルの大きい声にかき消されてしまい、とうとう話しかけられなかった。


見るからに意気消沈の2人の様子を察して、リカは頭を撫でてやり

「また帰りに寄るからね。その時遊んであげるわ。」

と伝えた。


「「約束だよ!!」」

同時に顔をあげてリカに詰め寄る。


2人のおでこにリカが自分のおでこをくっつけると、マルコもルイーズもふわっと香るいい匂いとリカの美しい顔が急に近くに来て固まってしまった。


いや、周りから見ると恍惚状態?


「あの2人の初恋は兄弟でライバルだねぇ。」

「母さん、リカが初恋の男の子なんて、学校じゃあ山ほどいるんじゃない?」


クスクスと笑いながら、子供達の様子を見ていた。


トロ爺が「これ。儂の孫達の邪魔をするでない。」とジルに一言。


「あいつらもガキとはいえ、男だからな!認めてるからこその試練だよ。」

笑いながら馬車を取りに行った。


馬車の荷台から、ジル村が見えなくなるまで手を振った。


「楽しかったわー。そうだ、父さん。私が手綱を握るわ!学校でも練習してるから見ててよ。」

「いいぞ。どれだけ上達したか見ててやろう。」


もうすぐ麓の自宅に帰れると思うと、嬉しさと安心感で自然と笑みが零れるリカ。

ジルは美しく逞しく成長した娘の姿に、“本当に大きくなったなぁ”と感慨深く思うのだった。


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