第7話 もう一人の国境警備兵
頑張ってUPしていくぞー!
ジフ村を早朝に出て、昼前にはジルの家に着いた。
数十メートル先の隣の家から煙が上がっていて、もう一人の国境警備兵が自宅に戻っていることがわかった。
ちょうどいいから挨拶に寄る事にした。
ガイルからジフ山脈側には国境警備兵が2人いると聞いてたけど、なかなか会う機会がなかったからなぁ。
言葉を少し交わしたことはあったけど、だいぶ前やったしあんまり記憶にはない。
確か女の人で『リヴィ』って呼ばれてたな。
歩きながらぼんやりとした記憶を辿り、どんな人やったかなーと思い出していた。
扉の前に立ち、ノックした。
「はい?」
「こんにちは。ジルさんの代わりに来ましたメイというものです。遅くなりましたが挨拶に来ました。」
「あぁ!ちょっと待ってねー。」
ドタドタと慌ただしい音がして数秒後、扉を開けて家に入れてくれた。
「私はオリヴィア・テイラー。よろしくね!さぁ座って。」
「ありがとうございます。僕はメイ・パロットです。よろしくお願いします!」
こちらの建物もこじんまりとしたログハウス風で、部屋の中は資料なのか書類が若干散らばっているけれど、小奇麗に片づけられている。
ハーブティーを入れてくれて、少し話をした。
女性が辺境の地で、国境警備兵として赴任する例はめずらしい。その上もう5年も留まっている。
ガイルとカノンが話していたのを聞いたのだが、どうやらオリヴィアはジルのことを慕っているらしいで♪
その辺りの真相を探ってみようかと思ったり。
「メイ君、冒険者になるんだって?せっかくガイルさんに剣術仕込んでもらったんだから、国仕えすればいいのに。」
「だって、色々な所に行けるんですよ?絶対冒険者の方が楽しいじゃないですか!父さんも賛成してくれてますよ。」
「そっか。まだメイ君は若いからねー。きっともう少し年を取ったら、故郷が懐かしくなったり戻りたくなるわよ。安定を求めたりね。」
「オリヴィアさんはどうなんですか?辺境の地に5年も赴任してる女性はかなりめずらしいって言われてますよー?故郷にいい人とか!いるんじゃないですかぁ?」
「やだ!生意気いって~。ガイルさんね?私はここの暮らしが気に入っているだけなの!のどかだし、大変な事もあるけど、皆で力を合わせて暮らしてていいわよね。」
「あ、あと私の事はリヴィでいいわよー。」
核心に迫ろうとしたんやけど、見回りの報告とか仕事モードになってしまい聞けなかった。
「そうだ。実は昨日ジフ村にククドが出現したんですよ。」
大まかに昨日のことを伝えた。
「え・・・じゃあ私が見たあの魔獣は、メイ君がやっつけちゃったの?!」
「まぁ・・・そんな感じです。」
「すごいじゃない!!だって真っ黒焦げだったわよ?魔法使えたのねー。」
「何とかなりましたけど、本当にギリギリの戦いでした。あと、魔法に関しては秘密にしといてください。たぶんジルさんからも言われると思いますけど。」
「そうなの?私は全然いいわよ!ジルさんが承知ならね。でも魔法使えるならますます勿体ないわねー。この国ならエリートとして迎えてもらえるのに。」
「僕は冒険者になりたいから、魔法学院に目を付けられないように避けてたし、剣士官学校にも行ってないんです。」
「わかったわ。上手く報告書を書いておくわね。」
「ありがとうございます!」
それからククドは地中に埋めて処理したことも伝えた。
「あら、だったら今日は見回りに行かなくて済んだわー。ちょっと時間できたし、お昼は一緒しない?」
「はい。じゃあ、昨日ウーパの肉捕ってきたから家から持ってきますね。」
「ありがとう♪じゃあ私他のを用意しておくわね。」
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食後、片づけをしているとオリヴィアがポロッと本音を漏らした。
「ジルさん、これからどうするのかな・・・。リカちゃんも学校卒業したらすぐ就職でしょ?配属先にもよるけどずっとこのままドンに居てくれるのかしら・・・。」
「やっぱり一人だと国境警備は不安ですもんね。」
「そうなのよ。ジルさんが近くに居てくれたから、5年も私頑張れたんだよねぇ。」
「あ、今度よかったら皆で集まって食事しませんか?なかなかそういう機会もないですし、僕も来年はここから出て行くんで今のうちに皆さんと交流しときたいなーって。」
「え!いいの?嬉しいなー。絶対よ?」
「はい。リカも戻ってくるし、早いうちに父さんや母さんに話しときます。」
「久しぶりにマリーさんの美味しい手料理食べれるんだー♪楽しみだわ!」
ご機嫌なオリヴィアを見て、ネイマも『ご馳走だー!』と浮かれていた。