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第5話 ジフ村②

ジフ村の村長は、『トーロ・ニチカ』、トロ(じい)と親しみを込めて呼ばれている。


夫婦で宿泊施設を管理していて、娘夫婦が一緒に住んでおり、食事などを提供したり、経営を担っている。

あと2~3人のバイトを繁忙期に雇って切り盛りしているようだ。


「食後にちょっと甘いものでもどうだい?」

トロ爺が声をかけてくれた。


ネイマの姿は見えていないので、一人でここに来ているように見えている。


「久しぶりだね、トロ爺。ちょうど食べたいなーって思ってた!ありがとうございます。」


ドライフルーツとハーブティーを持ってきてくれた。

きっと奥さんの『タイナ』が淹れてくれたんやな。


「儂も一休みしようかね。」


隣に座り、ちゃっかり自分のも用意している。


「今日は父さんは来てないのかい?メイ1人か?」

「そうだよ。ジルさんの代理で見回りに来てたんだ。リカが帰ってくるって迎えに行ったんだよ。」


「おお!リカが戻ってくるのかい。マルコとルーベンも喜ぶだろうなぁ。」


『マルコ』と『ルーベン』はトロ爺の孫。娘の『マレナ・アレクサンドロス』の子供で、年子の男の子二人。

そういえば今日はまだ見かけてへんなぁ。


「二人の姿が見えないけど。どこかに行ってるの?」

「ちょうどタイナがおやつを作っておったから、きっとつまみ食い目当てで手伝いでもしてるんだろう。」


はははっと笑って、トロ爺もドライフルーツをパクパク食べている。


「タイナさんのお菓子美味しいからね!ジフ村の名物の1つだよ。」

「嬉しいこと言ってくれるなぁ。タイナにもそう言ってやってくれ。」


話しながらも、お菓子を食べるペースが速い。私の分がなくなるっと手を伸ばしつつも、容器にネイマの分もキープ!


「あ、たぶん明後日にはジルさん達ここ通るよ。大体4~5日の予定って言ってたからね。」

「そうかい。ちょっと休憩していくように、ジルが通るのを気にしておくかの。」


リカは美少女なので、【ドン】でもけっこうファンが多い。腕っぷしも強いし、年上やけどマルコかルーベンのお嫁さんにでも考えてるんちゃうかな?


孫2人は10歳と9歳。リカは17歳やからまぁ、ありっちゃあアリやね。

2人の初恋もリカっぽいしね。


【ドン】は土地は広いけど、人口は多くないし、のどかで田舎な感じやから嫁取り合戦がすごい。

跡継ぎ問題やら、日本とあんまり変わらんなぁ。


「あーお腹いっぱい、ごちそうさまでした!」

「儂はもう少しここでゆっくりしていくよ。メイ、帰りも気を付けてな。」


「はーい。またね、トロ爺。」

手をひらひらさせて挨拶をすませ、私達は山頂に向かった。


30分くらいで着くからそこまで行ったら、あとは下山するだけ。

ネイマはさっきのドライフルーツをおいしそうに食べている。


ウーパがいたので1匹狩った。今晩のおかずにしよう。

血抜きをして袋に詰めた。


初めは解体作業が辛かったけど・・・命を頂く事への感謝をしつつ、大事に食べさせてもらう。

色々な所に行くから”何でも出来る様になっとけ”、ってガイル達からも仕込まれたからね。


山頂の立札が見えたので、その横に小さい旗を立てた。これで見回り終了!

ジルが帰りに確認することになってて、回収してくれる。


「ネイマ急いで帰ろう。ウーパを料理しないとね。」

『何にする?香草焼きがいいかな?あ!唐揚げでもいいよね!」


「唐揚げいいね!!おいしそう。」


ジフ村を通り抜けようとしたとき「助けてー!!」と悲鳴が聞こえた。

声に向かって走っていくと、大きな鳥がルーベンを咥えて飛び去ろうとしていた。


『ククドだ!!メイ!急いで!!』


浮遊(フロス)噴射(ジェット)

一気に加速して空中へ飛んだ。


「 ネイマー!(ベントゥス)装着(エンチャント)!」


もう一撃必殺でいくしかない。

魔力を手に集中させて短剣をククドの頭めがけて思いっきり突き刺してやった。


「ギュュイィィーーー!!!」


ルーベンがまっ逆さまに落ちていく。

やばい!!


噴射(ジェット)

ルーベンに向かって加速し、何とか服を掴んで地面に激突は避けられた。


数秒後、耳を劈く(つんざ)音と共に、ククドが痛みのせいか暴れながら私に凄い勢いで向かってきた。

手のひらに再び魔力を込める。


火炎放射(フルファイヤ)

正面のククドは炎に包まれ、もがき苦しんでいる。


このまま建物に落ちたら厄介やな。


強風(ブロウ)

ひとまずジフ村から離れるようにククドの丸焼きを吹き飛ばした。


後で様子を見に行かないとな・・・。


「「「「ルーベン!!」」」」



トロ爺達が取り囲み、気を失ってぐったりしてるルーベンを抱き抱えていた。


遠目やけどクチバシで噛まれたところから、かなり出血もしている。

早く治療しないと・・・。


「「ルーベン!!」」「うっうっ・・・。」

「目を覚ましておくれ・・・。」

「ルーベン・・・。」


皆もパニック起こしてるな。近づけないか?

トロ爺やマルコとかも傷だらけや・・・。



『“歌を唄ったら?”』

“そうや!!”



ネイマとを同じ事を考えてたから、不謹慎にもクスッと笑ってしまった。


今は【同化】してるから、魔力をしっかりコントロールして・・・。


「ラーラーラー、ラララ・・・」と小さい声で歌い出す。


「え?」タイナがこちらを見た。


「ラ、ラ、ララ。ララーラ。ラーララ・・・。」


ちょっと恥ずかしいけど、気にしないで続ける。


やっぱり家族と言ったら、小○和○さんやろ!

名曲を心を込めて熱唱しつつ、魔力をこの場だけに留めるように意識する。


歌いながら、シンプルでいい歌詞やなぁとか考えていた。


そっと目を開けると、皆がボーッとしていて、トランス状態っぽい。


歌い終わると、服とかはボロボロのままやけど、ルーベンの出血や傷口は治っていた。他の皆の擦り傷も。


全員意識が戻ると落ち着いており、ルーベンも間もなく目を覚ました。


「大丈夫?」ルーベンに声をかける。


「う・・ん。あれ?ぼく・・・助かったの?」


「メイが助けてくれたんじゃな?」

「メイ君・・・ありがとう!!」


「メイありがとな!!ルーベンを助けてくれてほんとにありがとう!」


「メイすごい・・・。魔法使えたんだね!!」


一斉に喜びに包まれた。


「緊急事態だったから・・・魔法のことはナイショにしといて欲しい。あとけっこう魔力使いすぎちゃったから少し休ませてもらってもいいですか?」


「勿論よ!今日は泊まっていきなさい。ご馳走するわ!」

「しばらく休んでおけ。夕飯ができたら運んでやるよ!」

マレナと夫の『ルカ』もルーベンをだき抱えて家に戻って行った。


「命の恩人よ・・・。メイ君ありがとうね。」

「本当に。メイ、ありがとうな。」


トロ爺とタイナも安堵の表情を浮かべている。


マルコが駆け寄ってきて

「メイ!またすごい魔法見せてくれよな!」

と興奮ぎみに言った。


「魔法のことはナイショにしててよね?」

「わかった!じゃあ今度秘密基地教えるよ!そこで見せてくれよな!!」


マルコは返事を聞かずに、そのまま家の方へ走り去っていった。


「はっはっは!マルコはしつこいぞ。さぁさぁ、早く休んでおいで。」

「後でロダティーを持っていくわね。ゆっくり休んでてちょうだい。」


トロ爺とタイナに促され、宿泊用の民家で休ませてもらうことにした。

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