第4話 ジフ村①
1/7 今日は七草粥を食べました。美味しかったぁ、優しい味♪
ジルの家はログハウスっぽい、こじんまりとした建物。
奥さんは亡くなっていて、リカともう一人、リカより5つ年上のお兄さんを男手ひとつで育てたと聞いている。
お兄さんはもう自立しており、リカが寮に入ってからは一人暮らしなので、かなり家の中が汚い。
“勝手に掃除していいぞ!”って言ってたし、自分が生活するところは綺麗にしておこうかな。
『なんか散らかってるね~。』
「まぁ仕方ないよ。仕事大変だし、あの性格だと細かいことは気にしなさそうだしね!」
『頑張ってきれいにしちゃおうー。』
「おー!」
手分けして、洗濯と掃除をした。
それで一日が終わった。おかげで家中ピカピカになったけどね!
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翌日。
ジフ村の見回りに行くため、ネイマとお弁当を作っている。
ジフ山脈を登って降りるので、ほぼ一日かがりの予定。
転移魔法なら一瞬やけど、麓からジフ村までの道々の確認も警備に含まれてるから、遠足みたいな気分で徒歩での移動になる。
馬を借りる事も考えたけど、馬車ならましやけど、馬に跨がるのはかなりしんどい。
片道3時間くらいやし、疲れたら魔法で浮いて移動という裏ワザがあるからね。
「さぁ、そろそろ出発しよっか。」
『はーい!』
ネイマと二人、ジフ村へ!
今は春過で、木々も春らしいパステルカラーの花や草木も芽吹いている。
風もちょうどいい暖かさで、陽射しも穏やか。
『いいお天気だね!』
「ほんとにねー。坂道でも今の時期は景色見ながらだといいよね。」
まったり、警備?しながら進む。
たまに馬車とすれ違い、顔なじみの人と挨拶する。
ジフ村は、一応【ドン】に属する。
山頂より少しドン寄りにあるから、ドンの兵士が国境警備も担当なんやって。
山頂を超えた先からは、【カタ】や【トゥ】の兵士が担当やけど、山頂付近にジフ村が近いから休憩に寄ったり、何かあったときは泊まることもある。
だから、けっこう数日おきに兵士が見回りに来てるのでわりと安全らしい。
ジフ村まではほとんど一本道やし、道を外れなければ迷うこともないから危険も少ない。
たまに道に迷う人もいるらしいから警備兵士はルートを時々かえるけど、私は慣れてないから一般の道を確認するだけでいいって言われてる。
『ねぇ~メイ。いつもの道だとつまんないよね?』
「いやいや、このままでまったり行こうよー。」
『大丈夫!何とかなるなる~だよ♪」
ネイマって自由やわぁ~。
「どの道行くの?僕この道以外知らないよ。」
『まっかせて!ついてきてよ。』
急に横に曲がり、獣道っぽいところをズンズン進んでいくネイマに若干の不安を覚えながらついて行った。
なんか道がなくなって、クロスカントリーでもしているような険しい坂道が続く。
はぁ、はぁ、息が上がり始めた。
「ちょっと!本当に大丈夫??」
『あとちょっとで休憩だよ。頑張ってー。』
横っ腹が痛くなってきた。フロスで浮いて行こうかな・・・。
草木が生い茂った道を抜けると、見たことのない崖の窪みに出た。
「うわー!ドンが見えるね。」
剥き出しの岩だけではなく、木も生い茂ってるからこんな場所があるなんて気付かなかったなぁ。
「ネイマよく知ってたね?こんな場所いつ見つけたの?」
『昨日遊んでたときにね~。メイにも見せてあげようって思ったんだ。』
「ありがとう!素敵な場所だね。」
眼下に広がる故郷を見ながら、お茶で一服。
ネイマが一緒なら冒険者業もきっと楽しいやろうなぁ。私だけやったら安全な所しか行かへんやろうし。
自由人がおった方が、予想外なことが起こっていいかもね。
「ネイマさ、いつでも気ままな精霊暮らしに戻っていいからね。もちろんずっと一緒に居たいけど、ネイマは自由なんだから。忘れないで。」
『急に改まってどうしたのー?僕はさ、兄妹ができて嬉しいんだ!それにみんなよりずっと長生きだがら・・・たくさん思い出作っておきたいんだ。メイが嫌って言うまで一緒に居るよー。』
「そっか。”ありがと。”」
それから1時間くらい歩いた後、ジフ村に到着。
宿泊用民家の中で、二人で作ったお弁当を食べた。