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第3話 ジフ山脈の麓(ふもと)

レイグラム・ドランダスの世界地図を考え中です。

私は時々ガイルの国境警備の手伝いをしている。

転移魔法のおかげで普段なかなか見回りに行けない所とか、首都【ノグ】にも行けるくらい転移の距離は長くなったからや。


私が魔法を使える事はできるだけ内密にしたいので、カノンがマシュウ(カノンの元部下のイケメンさん)に根回ししてくれた。おかげで魔法学院からの勧誘もなかったし、色々ややこしい国事情に巻き込まれなくて済んでる。


マシュウも現在は魔法隊の幹部クラスで、なかなかの権力をお持ちのようです。 

そんなエライさんやのに未だにカノンにこき使われているのは、身体に叩きこまれた関係性ゆえか。



本題に戻って、今日はガイルからの指示で【ジフ山脈】の麓側の国境警備兵に会いに来てんねんけど。


その人は、ジル・バイヤー。剣士官学校で出会ったリカのお父さんにして、ガイルの同僚ね。


”リカが帰省するから迎えに行く!”って急に休暇をとったらしくて、そのために急遽人員補充が必要やねんけど、人手が足りへんからってマシュウに泣きつかれた。それで私が駆り出されたってわけ。


ジルが戻るまで数日はかかるけど、私やったら何かあっても転移魔法で自宅に戻ったりできるし、マシュウには借りが多いのでここで恩返しって感じです。


―――――――――――――――


「坊主!!よく来たな!」


デッカイ親父が手を振っている。

「こんにちは!お久しぶりです。」


「すまんなぁ。リカが帰ってくるからよ!いくら強いったって、年頃の娘だしな。それにやっかいな虫が纏わりついてたらぶっ飛ばしてやらんとなぁ!!」

ガハハハッと笑ってるけど目は本気やし。



・・・ミトラス頑張れ!



待ってましたとばかりに引き継ぎを終わらせると、ジルはそそくさと旅立ってしまった。


『行っちゃったね~。』

ネイマが聖霊体になってフワフワと浮いている。


前は【同化】や【装着】のときに聖霊体になるくらいやったけど、最近は聖霊体になって私から離れて動ける範囲がかなり広くなった。


ネイマも聖霊体で好きに動き回れるのが嬉しいようで、時々ふらっと離れていく。

だけど契約しているからか、離れていても気配は感じるし、魔力を込めてよぉーく見ると細い糸みたいなので繋がっているのが分かる。


「今日はこの辺りの見回りをしてくるよ。ネイマはどうする?」


『うーん・・・。ちょっと風に乗って遊んでくるね♪」


「オッケー!じゃあ後でね。」



この辺りは比較的人が多い。ジフ山脈を越えると【カタ】や【トゥ】そして【オキ】があるので、行商や交易にはいいから、自然と【ドン】の人口がここに集中したらしい。


テクテク歩いていると、住人が手を振ってくれる。

ここにもあの旅以降、ガイルと何度も来たことがあるので皆と知り合いになった。


自宅からは離れてるけど、たまにアーロンの馬車を借りて家族でここに来て交流もしてるねんで。

マリーがツインズを産んでから、一層パワフルになって、外にもけっこう出かけるようになったからね。


大きな木があったので、座って木陰で一休み。


そのままズルズルと寝ころんだ。


ここに来て14年。

最初は大変やったけど、家族もおるし、友達もできたし。

剣も魔法も体験できて幸せやなぁ・・・。


なんかふと、私が昔大好きやったbackyardバックヤードの歌を唄いたくなった。

実は日本に居た時はカラオケが大好きで、ストレス発散のためにしょっちゅう行ってた。


ヒトカラも行ってたし、友達とわいわいするのも好きやったなぁ。


「ふふーん♪ふふふん♪」


鼻歌から始まり、なんかノッてしまって久しぶりに声に出してフルコーラスで歌ってしまった。


「あ~スッキリしたっ!」


よっと起き上がり、周りを見るとなぜか鳥や動物に囲まれていた。



「な、何これ・・・。」


遠巻きに集まった動物達は、しばらくすると何もせずに離れて行った。


そういえば、この世界に来てから日本の歌とか口ずさんだことなかったわ。


【レイグラム・ドランダス】は、子守唄とかはあるみたいやけど、音楽ってどんなんがあるか知らんなぁ。

年に2回くらいある祭りで、小さい劇団がちょっと太鼓や笛みたいなんで盛り上げてくれてたのは覚えてるけど。

今度マリーとかカノンにでも聞いてみよかな。


起き上がり、残りの範囲を見回りに歩いた。

もうすぐお昼やし何食べようかな、と考えていたらネイマが戻ってきた。


『ねー!ねー!さっきの何だったの?!』すごい勢いで顔を近づけて来た。


「お、落ち着いて!何のこと?」


『なんかね!風に乗ってメイの歌声が響いてたんだけど、あれ日本語だよね?最初呪文みたいに魔力を帯びた歌声が風に乗って拡がってね、身体や心が暖かくなっていってしばらくボーッとしちゃったんだよ!』


「えー?!何で・・・。」


『気づいたら周りの人達も同じ感じでね、作業の手が止まってた。歌声が聴こえなくなって、ボーッとしてた人達が作業に戻ろうとしたら驚いてたんだよ!』


「何に?」


『傷が治ってたり、腰の痛みが楽になってたみたいでみんな“やおよろずの神さまの恩恵だー!!”って喜んでたよ!』


日本語の歌・・・癒しの力があるんや。



【レイグラム・ドランダス】での信仰はいくつかある。


①やおよろずの神:自然や物、全てのものには神さまが宿っている=それを総称して八百万の神って呼んでて、自然や物を大切に、感謝を忘れずに、って考え方。日本と似てるよなぁ。人族や獣人族に多い信仰のようだ。


②聖霊信仰:光、闇、地、水、風、火、とそれら全ての源である空に属する聖霊を信仰の対象にしてるみたい。

エルフ族やドワーフ族、魔族とかが多く支持している信仰。


③アリア教団:これは、アリア新聖王国が組織する宗教で、この信仰でないと国民として認められない。わりと大きい国なので、信徒も多く、人族やハーフ種族が国民のほとんどを占めているらしい。


大まかにはこの3つの信仰があって、①と②は昔からあって自由信仰やけど、③は規律が厳しいとか。


ハラ王国は、やおよろずの神や聖霊信仰が浸透しているから、何か不思議なことや天災が起きたときは“聖霊さまのお怒りだー!”とか、“やおよろずの神さまのお恵みだー!”ってなるねん。



「なんか、久しぶりに歌ってたら、こうなったみたいで。そういえば、気づいたら動物とかに囲まれてた。」


『あはは!癒しの魔力に引き寄せられたのかもしれないね!そういえば、カラオケで唄ってたよね~メイ。』


はい!それ以上はプライバシー保護のために言わないで下さいね、ネイマさん!!


「これからは気をつけなきゃだね。」


『別にいいんじゃない?悪い影響じゃないしねー。』


「そうかな?」


『そうだよ!なんかすっごく身体が元気になったし♪』


好きやったあのアニメの歌姫ならぬ、歌の王子やな。


「そろそろ戻ってお昼ご飯にしようかー。」

『うん!帰ろう~。』


ネイマも実体化に戻り、二人で歩いてジルの家に向かった

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