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第13章 男旅その4~旅は道連れ世は情け~

翌朝、元気になったゴウとチイは【カタ】へと向かう準備をしていた。


チイの足は腫れもなく、痛みもないままだったので、一応治っていると判断した。


下の酒場では、話し合いが行われていた。


二人を【カタ】まで送っていってはどうか?とアーロンとガイルは相談していた。

しかし、全員で【カタ】へ行くとなると、【ドン】への到着が遅れてしまいマシュウに迷惑をかけてしまう。


「俺は馬を借りて予定通り戻るから。アーロンとメイとネイマで、二人を送ってやってくれ。」

「そうだな。俺は別に構わないよ。坊主もネイマもそれでいいか?」


『「うん♪僕らはこのまま旅を続けたい!」』


意見もまとまったところで、二人が下に降りてきた。


「「皆さん、ありがとうございました!」」

二人は頭を下げて、お礼を言った。


「まずは、ご飯を食べようか。」

「ゴウとチイもここに座れよ!」


食事をしながら、さっきの件を二人に伝えた。


「そんな、大丈夫です。もともと歩いて行くつもりでしたし。」

「私も歩けるよー。痛みもないから大丈夫!」


「遠慮しなくていいぞ?子供二人だとやっぱり心配なんだよ。」とアーロンが言うと、二人の尻尾がブンブン動いていた。


嬉しいんやな!


「僕もゴウ達のお父さんに会ってみたい!それにもうちょっとだけ一緒に旅しようよ~。」と私も伝えた。


「本当にいいの?!」チイが上目遣いに言った。


「いいぞ!俺は用事があるからここで別れるが、メイと仲良くしてやってくれ。」ガイルもニカッと笑った。


「じゃあ・・・よろしくお願いします!」とゴウも嬉しそうだった。


―――――――――――――――


宿屋を出て、ガイルは馬を調達に行くため別れた。

「気を付けて帰って来いよ。」

「うん!父さんも気を付けてね!」

「こっちは任せろ。お前も気を付けろよー?」


“じゃあな!”とガイル。

「「ありがとうー!」」とゴウとチイも大声で見送った。


「こっちも出発だ!」『「「「はーい♪」」」』



馬車の荷台に乗り、ゴウとチイ、ネイマと私はいろんな話をした。


二人は狼族らしい。犬族とよく間違われるが、見分け方としては、垂れ耳が多い。狼族はいつも耳がピンッと立っていると主張していた。

でも、犬族で耳が立っていると見分けは相当難しいらしい。


人族が多い地域ではいつも帽子をかぶっているが、耳が痛いのだと教えてくれた。

あと、尻尾を隠すためにマントを羽織っているが、相当暑いらしい。


ジュールド共和国についても教えてくれた。

【トルスの森林】は通称“ 円壁(えんへき)”と呼ばれている。

ジュールド共和国をぐるっと取り囲むように森林地帯が拡がっているため、国を守る壁のように見えるからだとか。


国民は獣人族、ドワーフ族、少数の人族や隠れエルフ族(ハーフやクァーターのエルフ達を指すさらしい)で構成されており、武器や装備造りを得意としてる。また肉体労働などの出稼ぎや派遣での武器、装備修理などの請け負いを生業としている者も多いらしい。


職人気質のドワーフ族と外貨を稼ぐ獣人族、この二つの勢力を上手く間に入って繋いでいるのが、少数派の人族とハーフエルフ達なのだと言う。

国の首長は、現在獣人族だが、10年毎にドワーフ族と交代するのが通例であるらしい。


へぇ、面白い。色々聞けてよかったなぁ。


「詳しく教えてくれて、ありがとう!全然知らなかったから、勉強になったよ。いつか行ってみたいなぁ。」


「いつでも来いよ!今度は俺が案内するよ。」

「私も♪一緒に遊ぼうねっ。」


『「うん、ありがとう。必ず行くよ!」』


「俺達さ、父さんが普段家に居ないから、アーロンさんやガイルさんと過ごせて楽しかった。」

「おじさん達大好き!」


ちらっと前で馬車を走らせているアーロンを見ると、聴こえていたようで照れているのかソワソワしてる感じが伝わった。


「僕はさ、実は父さんに拾われたんだ。前の記憶があんまりないけど、全然不安じゃないよ?父さんやアーロンおじさんやたくさんの人達が助けてくれて今すっごい楽しい!」


「そうなのか。」ゴウとチイは真剣に聞いてくれていた。


「最近はさ、【ノグ】に初めて旅行にいって友達もできた。いつか二人にも紹介できたらいいな!僕らより少し年上だけどいい奴ばっかりだよ。」


リカやミトラスの事を話した。小鳥のさえずり亭や魔法学院、剣士官学校でのこと。


「俺もあと少しで何をするか、決めなきゃいけないからなぁ。」

「え、そうなの?」


ジュールド共和国は、10~12歳まで住んでる地域の学校で、国の歴史や母国語の読み書きなど基礎知識を学ぶ。13歳からは各自職業訓練のためにどこかに弟子入りをして見習いとしての生活を親元を離れて始める。出稼ぎ組は共通語を学ぶために専門学校に行く人が多いとか。大体15歳になると働いて自立する者がほとんどらしい。


「えー!15歳でもう社会人?」

「しゃかいじん?」


「あ、いやいや大人みたいなんだね?大変だね。」

「そんなことないぞ?大人として認められるのは18歳からだけど、早く金貯めて家出れるのは嬉しいよ。」


「なんで?」

「俺達の下にまだ3人兄弟いるし。そいつらの面倒みなきゃいけないからな!」


おぅ・・・多産系なのね。


「獣人族はね、5~10人兄弟はめずらしくないよ!人族は少ないよねぇ。」

「チイもしっかりしてると思ってたら、お姉さんだったからなんだね!」


「へへっ」


そんなやり取りをしていたらあっという間にお昼になり、食事休憩。

それからしばらく馬車を走らせてやっと【トゥ】の街を出た。

「あと少しで【カタ】に入るぞ。」とアーロンが教えてくれた。


ご飯を食べた後だったので、三人とも昼寝をしていた。

ちなみにネイマはアーロンの横に座っていたそうだ。




ザワザワと活気のある声や音、魚の匂い、潮の香りーーーーーーーーーー




あ、もうすぐカタの街やなぁとぼんやり荷台で揺られながら思った。



「お兄ちゃん!もうすぐだね?!」

「そうだなぁ。予定より早く着いたかな?」


「お、よく寝てたな!」


ムクッと起き上がると、ゴウが笑っていた。

「もう着いた?」


「これから検問のところくらいだよ。」とチイが教えてくれた。


荷台から顔を出すとアーロンが門兵と話している。

ネイマは『やっぱりここは人が多いねー。』とキョロキョロしていた。


「今日はこのまま宿屋まで向かうからなー。」とアーロンは回復キャンディをくれて、馬車を走らせた。


ーーーーーーーーーーーーーーー



宿屋兼食堂『セイレーン』に着いた。

ここで、二人の父親がアドア漁港に戻ってくるまで待つことにした。



ーーーーーーーーーーーーーーー


数日後のアドア漁港に、遠洋漁船が帰ってきた。

地元の漁師達も集まり、船着き場は大にぎわい。


「父さんー!!」

「あなた!」

「お帰りー。」


降りてきた漁師達を迎える人々の声が飛び交う。

その中に褐色の肌の獣人がいた。


見つけるやいなや「「父さーーん!!!」」と二人は駆け寄り飛びついた。


「お?!何でここに居るんだ?!」とかなり戸惑っていた。


二人が一斉に話すもんやから、全く伝わってない。


「どうも。ジンクス商会のアーロン・ジンクスと申します。」見兼ねたアーロンがかいつまんで説明した。


「それは・・・本当にありがとうございました!!まさか、子供だけでここまで来るなんて・・・。あ、俺はロゼ・カナタと言います。」


一瞬怒られると思ったのか、二人の尻尾がピタッと止まり、シューンと下がった。


「説教は後だ。とにかく今は酒が飲みたいし、何か食べたい!」とロゼは叫んだ。


ハハハッとアーロンが笑い、皆もつられて笑っしまった。


「では、美味しいものをご馳走しますよ。」

「いえ!!俺が払います!命の恩人にそんな・・・。」とロゼが言うと

「まぁまぁ無事に帰ってこれたお祝いですよ!」とアーロン。


それから皆でセイレーンに戻った。

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