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第13章 男旅その1~袖振り合うも多生の縁~

【ノグ】で過ごす最終日。


「みニャさま、よろしいですかニャ?ではカンパーイ!!」


『「「「「「乾杯!!」」」」」』


ミリューイの誕生日、マリーの妊娠、メイに新しい友達ができた事、全てに喜びと感謝を―――――


「今日は飲むぞー!!」「そうだな!飲もう!」

親父組はとことん朝までコースを決め込んでいる。


「水を差すつもりはないけど、馬車の運転はあなた達がするのよ?その辺は気を付けてね?」

「メイ君もいるし、生まれてくる子供のためにもあなたも気を付けて。お願いよ?」


“生まれてくる子”

ガイルはその言葉にジーン、と込み上げてくるものがあった。

最初はもう二度と子供は作らない、と思っていた。でも時が経つとマリーのためにも必要ではないかと思い始めたが、こればかりは神さまが決めることなので、自分達ではどうにもならなかった。


そんな時メイと出会い、家族になってネイマとも再会ができた。それだけでも報われたと思っていたが、まさかの新しい命の芽生え。自分は幸運だと思った。


「おい?ボーッとして大丈夫か?まさか、もう酔ったのか?!」

「いや。俺は恵まれてるなって。アーロンやカノンには感謝してる。俺達を見守ってくれてありがとうな。」


「こんな謙虚なガイル初めてだな!しんみりはやめて、さぁ飲もう。」

「どうぞですニャ!」

「ノクターン君もありがとうな!ネイマの墓、いつもキレイにしてくれてたんだろ?感謝する!」


「ノンでいいですニャ♪それくらいはお安いご用ですニャ。私がノグに居る間はお任せ下さいニャ。」

「ノンは本当にイイヤツだろ?!さぁノンも飲んでくれ!」


親父組にノンも参戦し、あちらは大盛り上がり。


女性陣は、ハーブティーと果実酒でしっとり乾杯し、静かに飲んでいた。

私達もジュースとノクターンが腕を振るって作ってくれた料理を口一杯に頬張った。


「ネイマは【トゥ】に行ったことある?」

『あるよー。あそこはお金持ちの別荘地があったり、中流階級が多くて、落ち着いた郊外って感じの土地かな。首都からも近くて【カタ】や【オキ】の街にはさまれてるから他国から攻められても一番安全なんだよね。』


「へぇ?人族以外、例えばエルフとかは居るの?」

『あんまり見かけないなぁ。ハーフエルフやクォーターになると外見は人族と変わらない人もいるから分かんないだけかも。』


「そっかー。じゃあノグでもハーフエルフとかは居るかもなんだね?」

『うん。そうなるね~。でも純粋なエルフはこの辺で見かけるのは難しいかもしれないね。』


エルフ族ってファンタジーでは外されへんからなぁ。

あとドラゴンとかスライムとか!


そして、お腹一杯になった私達は、“先に寝る”と大人達に伝え、部屋に戻った。


『今日会ったミトラスとリカって何で仲良くできないんだろうねー?』

「思春期ってやつだよ。」


『漫画で出てくるあの甘酸っぱい感じだね?』

「解るの?」

『メイの感情が流れてきたときにね、ちょっとずつ理解できていくんだぁ。』


ますます私の思想に感化されていくな。


「漫画とか面白い?何系が好き?」

『ギャグとか恋愛ものかな?スポーツもこの世界にないものがあるから、面白い!やってみたい♪』


「野球とかサッカーみたいなのってない?」

『鬼ごっこみたいなのとか、かくれんぼはあるけど。リレーとマラソンもあるよ!』


「走るのはあるんだね。」

『うん。かけっこは楽しいよ!僕、風の聖霊だし、スピードには自信あるよ!』


「マラソンは嫌だけど、今度かけっこで競争しようか?」

『いいね!そうしよう♪』


その日は遅くまで話して、いつの間にか寝落ちしていた。


―――――――――――――


翌朝、案の定二日酔いのガイルとアーロンに奥様達が、例の二日酔いを治す謎の液体を飲ませていた。


30分程したら、二人とも少し元気になり、なんとか出発出来る事になった。


「じゃあ私達は先へ行くわね。荷物お願いね!」

「皆気を付けてね~。ネイマやメイ君も無理しないように、旅を楽しんでね。」


そう言って、カノンの転移魔法で先に出発した。


「俺達もボチボチいくか。」アーロンとガイルは、2日間で【ドン】に戻る予定を立てた。


「じゃあノン。また留守を頼むよ。」

「はいニャ!いってらっしゃいニャせ~。」


『「ありがとうー!」』ノクターンと別れ、馬車を走らせた。大門で検問を受けて、【トゥ】の街へ。


街に着くまで風景を見ながら、ボーッとしていた。

「坊主も馬車引いてみるか?」アーロンがこっち来い、と呼んでいる。ガイルは荷台で眠っていた。


「ここをこんな風に持って。そう、そのまま、力を入れずにな。」

『僕もやりたーい!』


「じゃあ同化する?」

『うん!(ベントゥス)』、『“同化(どうか)”』


一瞬だけ魔力(エナ)の制御が出来なくて馬を驚かせてしまったが、アーロンが手綱をフォローしてくれた。


「なかなかいいぞ?左右はこんな風にして、もっと走らせたいときは、こうだ。」

手取り足取り教えてくれた。


もうすぐ【トゥ】の門に着く頃、子供が道の真ん中で手を振っているのが見えた。


「おじさん!止めてっ。」

「うおっ!」


急ブレーキをかけて、なんとか止まれたが、馬達が興奮している。ガイルが“どうした?!”と荷台から飛び降りた。


「すみません!!どうしても手を貸して欲しくて・・・。」


切羽詰まった表情の男の子が、頭を下げて街中まで荷台に乗せて欲しいと頼んだ。近くで妹が足を挫いて、動けないと言う。


ガイルとアーロンはすぐに返事をしなかった。


“あれ?何ですぐ助けてあげへんのやろ?”と思って「ねぇ?乗せてあげないの?」と小声で尋ねた。


アーロンは小声で「こうやって子供を使った商人の馬車を襲う強盗団がたまに居るんだよ。」と、その間にガイルは男の子から詳しく話を聞いてた。


「ちょっと見に行ってくるわ。」

『「僕も行く!」』


「じゃあ先に馬を走らせて、門兵に知らせてくるな!」

「頼む。」


ちょっとドキドキしながら、ガイルと男の子の後に付いて行った。


500メートル程歩いた先に女の子が座っていた。ガイルは周囲を見渡して、私達はここで待つように指示する。


感知(ディテクト)


今は同化中なので、かなり広範囲で周辺の敵意や人や動物の動きを感知できる。

とりあえず、こちらに向かってくるものはなさそうで安心した。人影も私達以外には、見られない。


「メイ、この荷物持ってくれ。さぁ【トゥ】まであと少しだ。頑張れ!」女の子はガイルにおんぶされ、男の子が「ありがとう。俺も手伝うよ。」と半分荷物を持ってくれた。


門に続く道まで戻ってくると、アーロンが馬車で待っていた。


「その子達を荷台へ乗せてくれ。街の診療所まで連れて行ってやろう。」

「ありがとうございます!」男の子が目の端を拭って、深く頭を下げた。女の子は、痛みを我慢していたのかシクシク泣き出して、ガイルが荷台にある薬草で応急処置をしてあげていた。


アーロンによると、門兵も男の子の訴えは聞いていたが、彼らが獣人のハーフだと分かった途端、理由を付けて結局助けてやらなかったらしい。ガイルは怒りを必死で抑えていたが、殺気に子供たちが怯えていた。


「父さん!気持ちは分かるけど、二人が怖がっちゃってるよ。」

「あ、ああ。すまんな!君らに怒ってるんじゃないんだよ。」


「これ渡してくれ。」とアーロンが回復キャンディをたくさんくれた。

二人はそれを食べて、少し落ち着いたみたいだった。


門を通るときに、アーロンが門兵をひと睨み。そのまま検問を通過し、街の診療所を目指した。


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