第12章③新しい友達
メリークリスマス!ぼっちでもいいやんっ
最近嬉しいことがたくさんあり、とてもいい気分だった。
“あ~・・幸せやなぁ。”
異世界なかなか楽しくなってきたわ。
「あれ?」
はっっ!!
ここは・・・また真っ白な空間にいた。
“やぁやぁ。私、布袋尊言います”
「どうも。お世話になってます。」
“あなたが周りを笑顔にしてくれたおかげで、ようやく私の加護も効いてきたみたいで良かったですわ”
「あ、母さんの赤ちゃんは布袋尊さまが?」
“そうです~。この世界はエコーとか妊娠検査薬がないからねぇ。まだ半信半疑みたいやけど、大丈夫ですわ”
「本当に?!ありがとうございます!とっても喜んでました。」
“恵比寿天が迷惑かけたみたいやからね~。これくらいはさせてもらいますよってに”
“スマイルでみんなを幸せにしたってくださいね~”
と布袋尊さまもフワフワとゆるーく消えていった。
えっと、じゃあここで寝たらまた戻れるんよな?
横になり、目を瞑った。
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『ねー起きないとあの子との約束に遅れるよー!』
ネイマが起こしてくれて目が覚めた。
「ありがとぉ~。ふわぁぁ~。」とでっかいあくび。とてもスッキリしていた。
リビングへ向かうと皆は食事を終えて、帰宅の準備を整えていた。
「おはようございます。」
「あら、おはよう。」
カノンがガイルとマリーは診療所に行ったと教えてくれた。
朝ご飯を食べながら、夢でのことを思い出し、マリーの妊娠が確定していることに改めてホッとした。
「いつここを出発するんですか?」
「坊主は昼予定あるだろ?夕方だと宿屋に着くのが遅くなってしまうし、明日にしようかってな。」
「あ、あとね。マリーと私は先に転移魔法で帰ることになったのよ。」
「良かった。母さん、馬車つらそうだったし・・・ありがとうございます!」
「いいのよ。ミリュの誕生日盛り上げてくれたしね?」と大笑いになった。
これからしばらく、このネタでいじられるな。
「じゃあ帰りは男だけの旅になるね!」と言ったら、カノンが氷の笑みで「メイ君。大人がハメはずさないようにしっかり見張っててね。」と任務を与えられた。
「はい!」心の中で“イェッ・サー!”と敬礼した。
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約束の時間までには、余裕があったので街を散策。
さっきお小遣いをもらったので、お店に入って服をみたり、雑貨をみたり、のんびり過ごした。
お菓子屋さんで、回復キャンディーが売っていた。
色んな形がかわいかったので、いくつか購入。クッキーも。
“そろそろ、時間かな?”と時計がないかキョロキョロするとお店に置いてあった。
時計は一般にはまだまだ拡がっていないが、ないわけではない。ノグに来てからは、わりと探せば見かける。
『11:30だね!ちょうどいいよね?』二人で回復キャンディーを食べながら向かった。
門にはワンダが立っていて、用件を伝えると“中で待ったらいい”と、木彫りIDを貸してくれた。
あまりウロウロできないので、授業を覗きに行った。
1クラス20~30人くらいで、3クラスあった。下級生ロウ、ミドル、ハイとクラスが分かれていた。
「たぶんロウクラスだよね?」『だよね~。』と
教室をチラッとみてみると、あの時校庭にいた子供達がいた。リカを探してみる。
黒い艶やかな長いストレート。すぐにわかった。
“羨ましい!”
日本にいたとき、私はくせ毛で髪の量も多くて、雨の日はうねるしで、ヘアスタイルを決めるのは悩みの種だった。
リカの黒い髪は、光が当たると天使の輪が出来て、もう本当に綺麗!
あと周りをよくみると、獣人や混血種の子もいた。
先生は人間やった。
カラーン、カラーンと遠くで鐘の音が鳴り響いた。
「はーい!今日はこれで終了です。お昼を食べたら各自自習してね。」先生が出てきた。
ペコッと会釈すると、ニコッと先生がしてくれてそのまま去っていった。
リカが急いで出ようとしてたが、誰かに呼び止められていた。なんかちょっと言い合いになってない?
「リカー!来たよー。」と言うと「今行くー!」と掴まれた腕を振り払ってこっちへ来た。
「大丈夫?」「うん!平気よ。お昼ごはん食べに行こう♪」
なんか強烈な視線を感じながら、リカについていった。
「部屋に教科書置いてくるから、門で待っててね。すぐ行くわ。」
「うん。」
リカと別れ、ワンダの所へ行った。IDを返却して門から出ようとしたら
「おい!」と大きな声で呼び止められた。
あ、さっきの男の子や。わりとカッコいいこれからが楽しみな感じの彼。性格はわからんけどね。
じっと見ていると、「お前、ここの生徒じゃないよな?なんで勝手に学校入ってるんだよ?!」
ハイハイ。何となく察した。
私が説明する前にワンダさんが「こいつは俺が見学を許可した坊主だ。文句あるか?」と凄んでいた。
うっ・・・と怯んだが、「今からどこ行くんだよ?」と聞いてきた。
教えてやる義理はないが、武士の情けだ。
「たぶん、お昼ご飯食べに行くと思うよ。」
『この子何だろうねー?』
「お、俺もついていってやる!」と言った。
「僕はいいけど、リカにも聞いてみないとね?」
「な!そこはお前がいいって言ったんだから、いいんだよ!」
「んー。僕は決められないな。」いじわるを言って反応を楽しんだ。
「くっ。・・・俺、ミトラス・ムー。今から、お前とは友達になってやるよ!お前、名前は?」
仕方ない。苦肉の策が可愛いので、許してやろうか。
「メイ・パロットだよ。よろしくね。」
「おう!よろしくなっ!」とミトラスはニカッとガキ大将風のヤンチャな笑顔を見せた。
うわっ眩しい!!
「メーイ!」とリカが走ってきたが、ミトラスを見つけて「げっっ!!」と美少女にあるまじき声を出した。
「なんでアンタがここに居るのよ?」
「俺はメイと友達だからなっ。これからご飯食べに行くんだ。」
「なっ?!メイはこれから私とお昼ご飯に行くのよ!」
ギャーギャー言い合いになったので、とりあえず「三人でご飯行こう。お腹すいたし~。」と門を出た。
私が突然立ち止まり、「ねえ!どこに行く?」と聞くと「「小鳥のさえずり亭!!」」と声が揃った。
「案内よろしくね♪」『どんな美味しいものがあるんどろうね?!』私とネイマの期待が高まる。
――――――――――
【小鳥のさえずり亭】は、学生のよく集る食堂で、値段が安いし、美味しいし、量が多いと評判の店。まぁ、ワンコインで腹一杯になれる学生食堂やね。
リカとミトラスは私を挟んで少し静かになったけど、険悪なムードは変わらない。
店に着いて注文を選ぶ。
昼はメニューが3つのみ。ウーパの煮こみスープ、クックのから揚げ、バグの香草焼き。
これにパンが食べ放題なのに、銅貨5枚。水も飲み放題。
ドリンクは別料金やけど、店外にもテーブルと椅子があるから、女子がお茶するのにも良さそうだ。
「どれがおすすめ?」
「ウーパの煮こみスープね!」「クックのから揚げ!!」意見が分かれた。
「バグの香草焼きは?」
「バグの独特の匂いを薬草で消してるんだけど、けっこう量が多いのよ。その点、煮こみスープはあっさりしてて、野菜もたっぷりで美味しいよ♪」
「女はいいけどよー?物足りないと思うぜ?やっぱから揚げだよ!ガッツリ腹一杯になるし、本当にうまいんだ!」
二人が力説する。
『僕も食べたーい!』とネイマからのリクエストもあり、“から揚げなら持ち帰ることができそうだな”、とミトラスと同じものを頼んだ。実はいつもこういう事があるので、容器は持ち歩いてます!
食べ始めると和やかな雰囲気になり、二人はあまり話さないけど、ケンカはしなくなった。
明日帰るので、これからは手紙のやり取りをしようという事になった。短い時間だったけど新しい友達ができて嬉しかった。
案内してもらったお礼に、回復キャンディーとクッキーを二人に渡した。
また必ず会おう、とおでことおでこの約束をした。