第12章②サプライズ当日
今日は楽しいクリスマス♪
ミリューイは朝からそわそわと落ちつかなかった。
同室のマリアンヌは、その様子を見て“可愛らしいなぁ。”とクスクス笑っていた。
「ミリュ?リボン曲がってるわよ?」
「え!マリア直してくれる?!」
謹慎後、学院に戻ってからのミリューイはかなりマリアンヌに打ち解けてくれた。
珊瑚のブローチは友達の証として、ほぼ毎日つけている。
今日はミリューイの誕生日なので何か贈り物をしたいと思っていたが、外出もできないし、仕方ないから持っていたレースと布でリボンを作ってプレゼントしたのだった。
あまり上手とはいえない手作りリボンでも、ミリューイはすごく喜んでくれた。マリアンヌにとって今は、“妹”みたいな存在になっている。
「手紙でママとパパが面会に来てくれるって書いてたから、きっとお昼は外の美味しいもの買ってきてくれるわ♪
マリアにもお土産持って帰ってくるからね!」
「私の事は、いいのよ。気にせずにお誕生日を楽しんできてね。」
「ごめんなさいね。この三ヶ月外出もできなくて・・・。本当にごめんなさい。」
「もう・・・それは言わない約束でしょ?私だって、来月は実家に帰れるし♪あと少しだもん。さ!悲しい顔してたら、お父さんやお母さんが心配するよ?」
“うん・・・。”と午前中の授業の準備を持って二人で部屋を出た。
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カノンとアーロンは朝から買い出しに来ていた。
昼の面会に持っていく食べ物やミリューイが使う日用品など、娘の喜ぶ顔を思い浮かべながら。
「マリアンヌちゃんにも何かお菓子買って行かなきゃね♪」
「それはいいが、まだ買うのか?もうこれくらいで、あとは小遣いを渡したらどうだ?」
「何言ってるの!まだ完全には謹慎が解けたわけじゃないんだから、二人とも三ヶ月よく頑張ったからご褒美よ。」
と言いつつ、カノンの物もドンドン買っている気もがしたが、アーロンは黙って付き合った。
一方、体調が戻ったマリーの提案で、パロット家はネイマの墓参りに来ていた。
本人が居るので変な感じはするが、人間だったネイマローズはここに眠っている。
マリーにとっては、来たくても来れず、気持ちの整理をするためには必要な過程なのだろう。
「すごく綺麗なままね・・・。」
「あぁ・・・アーロンだろうな。俺も時々報告やらでこっち来たときは掃除してたが、定期的にノクターン君にでも頼んでくれてたのかもなぁ。」
枯れかけた花が置いてあったが、墓石やその回りは整っていた。
普通は共同墓地に埋葬されるが、ネイマの場合は小さな墓石を発見された近くに作ったのだった。
“魔獣に襲われる可能性は誰にでもある”、その事を皆が忘れないようにと思いを込めて。
ガイルとマリーが祈りを捧げていた。右手を胸に当てて、頭を下げる。
私も真似て祈った。“ネイマと逢わせてくれてありがとうございます”・・・。
「戻ろうか。」ガイルがマリーの肩を抱き寄せて歩き出した。
そっとマリーの手を握り、ガイルの手をネイマが握っていた。
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アーロン宅に戻ると荷台にたくさんの荷物が積まれていた。
「えらく買い込んだな!」ガイルが言うと、
「頑張っている娘への贈り物だからね♪」とカノンが応えた。
「時間に間に合わなくなるから行くぞー。」とアーロンの号令で魔法学院へ向かった。
ガイルとマリーは残って留守番。
荷台で揺られていると『昨日の門番の人居るかなー?』とネイマ。
「あ、会うと厄介だから隠れておこうか?」
カノンが“どうしたの?”というから、昨日の事を説明すると、「私にいい考えがあるわ♪」と嫌な予感しかしない。
門に着き、アーロンが何か話をしている。
こちらに人が来て、荷台を確認。
チラッと目があったが何も言われず、中に入ることができた。
剣士官学校と同じで木彫りIDを首からかけて、面会室へ通された。
カノンはミリューイの部屋へ、荷物を運んでくると出て行った。
「アーロンおじさん!もうこれとっていいでしょ?!」
「俺はいいが、カノンがなんて言うかなぁ。」とクックッと笑いを押し殺していた。
実は女装をさせられていた。別にいいけどね?!
でもメイ君のプライドってもんがあるでしょうよ。
髪はショートなので帽子を被っていた。
容姿はまだ子供なので、中性的な感じ。顔はね、ほんまにふつー。仔犬顔に見えるけど、鏡って女性しか持たない習慣みたいで、自宅にもマリーとガイルの寝室にしかない。
だから、まじまじと自分の顔をみたことなくて、水に映るぼやけた感じとミリューイに小さい鏡を借りて目とか口とかみたけど、あえていうならカワイイ感じ。まぁ大抵の子供はカワイイけどね。
成長期やし、もしかしたら将来はガイルみたいな厳つい系になるかもやけど。・・・ちよっと嫌やな。
で話しは戻るけど、これがサプライズなん?!
とか思っているとミリューイがやってきた。
先生と話して、こちらに静かに歩いてきたと思ったら、先生がいなくなった途端にアーロンに走り寄り抱きついた。
「パパ久しぶりね!!」
「ハハハッミリュ!9歳の誕生日おめでとう!」
二人で再開を喜んでいる横で、“気まずいなぁ&何て声かけようか?”とモジモジしていた。
「あれ?ママは??」
「もうすぐ来るさ。それより・・・。」またクックッと笑い、私に視線を送る。
「あなた誰?」ミリューイが尋ねる。
「はは・・お誕生日おめでとう、ミリュ。」帽子の下から、顔を見せる。
・・・・・
「えー!!メイ?!可愛いじゃない!!」と大騒ぎ。
その後すぐにカノンも合流して、楽しい時間を過ごした。
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マリーはガイルに打ち明けるなら今かな、と思っていた。
まだはっきりとはしないが、お医者様から告知されたことについて。
ベッドに座っていると、温かいお茶をガイルが運んできてくれた。
「疲れてないか?横になってたらどうだ?」
心配そうにこちらに近づいてくる。
「あなた・・・ありがとう。本当にいつもありがとう。」
「改まってどうしたんだ?あ、医者に何か言われたのか?!」少し青ざめた顔になる。
「ええ。
・・・・・・
たぶんね、妊娠したって。」
「・・・・・え・・・・・。ほ、本当か?」
「ええ。新しい家族がまた増えるわね。」少し笑って、ポロポロと泣きながらマリーは伝えた。
ガイルは混乱していたが、悪い知らせではなくてほっとしていた。
「まだ確実ではないから、いつ伝えようかと迷ってたの。もし、違うならみんなを悲しませるかもしれないし。」
「い、いや。いいじゃないか!違ってても。ネイマやメイも病気じゃないかとすごく心配してるからな!」
「そうよね。カノンは知っているけど、私が決めたらいいって黙ってくれていたのよ。」
「そうか。そうだな・・・。よし!今日皆にも伝えよう。もし違ってても、家族や身内には話しておきたいからな。」
「そうね。なんか、肩の荷が下りたわ~。」と涙を拭きながらマリーはようやく穏やかな表情になった。
「気付いてやれなくて、悪かったな。お互いこれからは何でも話そうな。」
“ええ・・・”と二人は抱き合った。
帰ってきた私達は、マリーの妊娠を聞いて逆サプライズ!
『また兄妹が増えるー♪』とネイマは大喜びだった。
私は病気ではなかったと聞き、ひと安心。
カノンとアーロンもはっきりとお腹が目立ってくるまでは他言無用と約束してくれた。勿論、ノクターンもね。