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第12章①サプライズ計画-中編-

ジンクス家では、行商用の馬車が待っていた。


馬はいつも近所の人から借りている。荷台部分はアーロンが所有しているものだ。

アーロンはもちろんだが、カノンやガイルも馬を扱えるので今回は気が楽だな、といそいそと準備を進めていた。


「あなたー。そろそろガイル達来るわよ?」

「そうだな。休憩して待つか。」


馬達も調子が良さそうだし、荷台も異常なし。パロット家一行が来るのを待っていた。


お茶を飲んで、程なくしてから・・・


ドンドンッと勢いよくドアを叩く音がして「来たぞー!」とガイルの声が聞こえた。


「さて、行くとするか。」アーロンはカノンを呼びにいき、全員揃ったので出発した。



―――――――――――――――


まず【ジフ山脈】の山頂付近にある【ジフ村】で1泊して山越えをしたあと、【カタ】の街で2泊して【ノグ】で3日間滞在する。その後、帰りは【カタ】ではなく【トゥ】に寄り2泊してから【ジフ山脈】を越えるルートで行くと伝えられた。


ジフ山脈を越えると【カタ】と【トゥ】は南北に並んでおり、その先が首都【ノグ】に続いている。


馬車に揺られながら、まずジフ山脈の麓にあるガイルと同じ国境警備兵の元に向かった。

そこで、カノンの元部下である『マシュウ』とガイルが引継ぎを済ます手筈になっていた。


外を見ると、ジフ山脈に近づくにつれ、ポツポツと民間家があり、放牧していたり、畑を作っている所も見られた。


“今度遊びに行ってみたいなー”とその景色を眺めていた。ネイマも同じことを思っていたようで、目が合うと何となくお互いに分かり、『今度来ようね~。』と言ってきた。


一時間程して、ジフ山脈の麓に着いた。


家が2軒あり、人が立っているのが見えた。

「ガイルー!こっちだー!」ガイルと同じ脳筋タイプっぽい男の人が大声で呼んでいる。


『ジル・バイヤー』というこの人は、ガイルの先輩らしい。ライオン顔のなかなか渋親父だ。


今度はカノンが「マシュウー!居るんでしょ?!出てきなさいよっ!!」と大声で呼ぶと、家からイケメンオーラの『マシュウ・レオナルド』が困惑顔でやって来た。


「そんな大声でなくても聞こえてますよ?カノン先輩。」カノンがガシッと肩を組んでワシャワシャとイケメンのサラ髪を撫で回している。


迷惑そうに“やめてくださいっ!”と抵抗しているが、最早ぐしゃぐしゃになっていた。


「その辺にしといてやれよ!カノン。マシュウ久しぶり!今回はありがとうな。助かったよ。」


「いえ。お役に立てて良かったです。ガイルさんも奥さんもお元気そうで安心しました。」


「とりあえず引継ぎするか!積もる話は帰ってきてからだな。」

「そうですね。」


「おっそうだ。ジルとマシュウに紹介しておくよ。俺の息子のメイだ。詳しくはまた今度な!」


「お!坊主。よろしくなっ」

「メイ君、よろしく。」


二人とも詮索することもなく、受け入れてくれていた。その事がすごく嬉しかった。


「メイ・パロットです!よろしくお願いします!」


“元気だな!”とジルは笑い、マシュウも笑みを見せた。


30分くらい留まり、すぐに【ジフ村】を目指して出発した。


山は緩い坂道だか、舗装されていない道も多いので馬車が揺れたり、振動が強いときもあった。

マリーは馬車酔いし、休憩をしながら進んだ。木々はそこそこに色づいており、風は心地良かった。


やっとジフ村に到着し、その夜は村の宿泊用民家に泊まった。


そして山を越え、【カタ】の街に到着。

マリーは疲れており、宿屋『セイレーン』に直行し休ませてもらった。


他の者は自由行動。

カノンは買い物へ。ガイルはマリーの看病。私も付き添うと言ったが、“メイはネイマと観光してこい”とお小遣いをもらった。

「あとな、ミリュへのプレゼント買ってこい。」というミッション付き。


この旅はミリューイの誕生日祝いを兼ねているらしく、カノンがサプライズを企画したのが発端だと教えてくれた。


ネイマとも相談して市場を見て回ることにした。元女子二人組なので、何となく好みはわかるけど。あれくらいの女の子はおませさんやから、さて何がいいやろか?


『ねーねーこの真珠のネックレスは?めっちゃかわいいよー。』

ネイマは、最近地球語をふつーに混ぜてくる。


「可愛いけど、高いよ?」

『そっかー。パパいくらくれたの?』

「銀貨1枚・・・。」


マリーやったらもうちょい気をきかせて持たせてくれるんやけどな。


とか考えながら歩いていると、貝殻で作ったブレスレットを見つけた。

「ネイマ。これはどうかな?」

銅貨5枚くらいだったので、十分買える。

『あ、いいね~。あとはラッピングだね!』


露店やから、袋なんか適当やろうな。

この街中に店舗で雑貨屋とかあるんかな?


「とりあえず買って、宿に戻って考えよう。」

『ママか、カノンおばさんに相談してみよー。』


貝殻のブレスレットを購入し、マリーの所へ向かった。


―――――――――――――――


『セイレーン』の女主人、『アリア・ロドリゲス』はカノンに頼まれて、胃腸に優しい食事を作っていた。馬車酔いがあったらしいので、一応酔い止めの薬草茶も作っておいた。


無理に食べなくてもいいけど、とりあえず夜に一度食事をすすめてみようかね。


食べれないなら白湯をゆっくり飲ませるようにガイルに教えないとね。明後日までに良くなるといいけど・・・。


―――――――――――


『「ただいま。」』そっとマリーの部屋に入るとガイルも座ったまま、マリーの横で眠っていた。

マリーも寝息をたてて良く眠っている。

ネイマと目で合図し、静かに下の食堂へ行った。



アリアが私達に気がついて手招きしている。


「こっちへいらっしゃいな。」


温めたミルクを出してくれた。

「初めて来た客へのサービスだよ!」とクッキーも添えて。


「ありがとうございます!頂きます。」ネイマの分はこっそりハンカチに包んでポケットにしまっておいた。


「女将さん。この辺りで雑貨屋って市場以外でありますか?」


理由を説明したら、“ちょっと待ってな。”と店の奥へ消えていった。


しばらくして、綺麗な袋とリボンにちょうどいい長細い布を持って戻ってきた。

「これで良ければあげるよ。」

「本当に?ありがとうございます!」喜ぶ私をみて、アリアも笑っていた。


―――――――――――――――


翌日マリーの体調も落ち着いついてきたので、もう一泊してから予定通り【ノグ】へ向かうことになった。


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