第11章③強化合宿
部活を想い出すなぁ。。。
ガイルと別れ、私とネイマはジンクス家へ戻った。
同化を解いたが、まだネイマは離れない。今回は結構長い時間やったしなぁ。
“メイの記憶にある漫画っておもしろいね~。絵本より迫力あるし続きが楽しみなんだ♪”
あぁ・・・情報が漏洩していく・・・。
純粋なネイマがぁぁぁ汚れるぅぅぅ。
「どうかしたの?」カノンが一人ジタバタしている私を見て気にしている。
「いや、何でもないです・・・。」
「大丈夫よー♪私の部下も皆何とかなっていたから。任せて!」
一抹の不安を感じる。
「あと、まだ試していないことがあるんですけど。」
ネイマがいうには、聖霊体のときに【 装着】で武器とかに憑依して強化できるって。
その事を伝えると、“明日試してみましょう”と言われた。
「まずは体力作りよ!いつも走っているのよね?じゃあ腹筋、背筋、腕立てを50回ずつからね。」
え!!微妙に優しいような鬼軍曹のような?!
ニコニコ言われたので、拒否権はないと判断。
部屋の空いているところで、地味に始めた。
カノンは“薬草を取りに行ってくる”とその場を離れた。
“ファイトー!”頭の中でネイマが叫ぶ。
地球語覚えてるやん・・・
休み休み、なんとかやり切ったけどバテバテや。
「ちょうど良かった♪」とカノンが怪しい液体が入ったコップ持って近づいてきた。それを差し出され、「一気に飲むのがコツよ。味は気にしちゃダメ!さぁ一気よ!」と身体を起こされ、口元に!!
ゴクッゴクッゴクッ・・・
直後、意識が飛びました。
気がつくとベッドの上。この世界に来てから何回もあったシーン。デジャヴュ?
口の中から異臭がする・・・。
一体何を飲まされたのやら。
起き上がりリビングへ向かった。声が聞こえる。
「やり過ぎだと、いつも言ってるだろう!」
「ごめんなさい。つい、血が騒いじゃって・・・。」
珍しく形勢が逆転している。
「お前の部下でも数人しか耐えられなかったのに、10歳の子供に飲ませるなんて・・・。」
小さくなって、アーロンに言われるままだ。
出にくいが喉が渇いたので「あの、お水もらってもいいですか?」と声をかけた。
カノンが走って台所へ向かう。
「スマンなぁ。坊主。」とアーロンが頭をくしゃくしゃ撫でる。
苦笑いをみて「あいつも寂しいんだよ。ミリュが居ないからなぁ。」と一言。
水を貰い、リビングで話をした。
とりあえず、今日はもう特訓は終わり。明日から、という事になり食事の準備に取りかかるカノンの手伝いをする。
「あら!いいのよ。ゆっくり休んでいて?ごめんね。私、ついはりきっちやって・・・。」しょんぼりしてなんか、ギヤップが可愛い。
「大丈夫です!父さんにも一度洗礼受けてますから。」と言うと、“フフ。そうなの?”と笑ってちょっと元気になってくれてようだった。
「それに母さんの手伝いもしてるから、料理けっこう好きなんです。」
「マリーは幸せね・・・。」
二人で色々話をしながら夕食を準備した。
料理をテーブルに並べ始めると“あ!離れた~。”とネイマの声がして、実体化した。
ベストを着せると、椅子に座って『早く食べたーい♪』と待ちきれない様子だった。
ーーーーーーーーーー
「さて、とりあえずは同化前に魔法の訓練ね。」
昨日の場所に移動し、ネイマと風魔法を練習してた時と同じように見せた。
「この状態での魔法はコントロール出来てるわね。というよりも、ネイマが必要な魔力を調整しているのね?」
『そのつもりはないけど、そうなのかな?』
「本人は無自覚みたいですが、多分そうです。それか、実体化している分魔力が弱まっている可能性もあります。」
「そうね・・・。それもあるかもしれないわ。」
この子。子供だけど聡いわね。
国から目を付けられる前に、なんとか魔力コントロールを身につけさせないと。
「じゃあ『エンチャント』やってみましょうか。何か武器は持ってる?」
「父さんから貰った短剣があります。」
「ネイマいける?」
『はーい!”風”』短剣を出して、ネイマに見せた。
“装着”
短剣がうっすらと風を帯びているような感じがする。無機質だったのに、握っている柄の部分から温かさをほんの少し感じるのだ。
「どんな感じなの?私には少し魔力を感じるわ。」
「似たような感じです。温かい風を帯びているような・・・。」
「あの木の幹をガイルに習った剣術で切り付けてみて。」
「はい!」
ファブールの森の入口にある木を適当に切り付けた。5~6回切りつけて「やー!」と最後の一振りに気合いを入れて突いたら、グググッと木の幹の中に入っていった。
「すごい力ね。」
「いや・・・初めてです。こんな奥に入っていったの・・・。」
なかなか刃先が抜けない。力を入れてぐっと引くとスッとあっさり抜けた。
「メイ君が力を込めたときに魔力が一瞬刃先を纏うような感じね。切り付けている部分も普通の短剣では無理よ?斧か槍のようなもの、それにかなり筋力のある大人でないとできない跡だわ。」
ネイマの力すげー。
「最後は同化ね。ネイマお願い。」
“同化”
剣先の温かい風が身体に流れ込み、轟々と吹き荒れている。
「本当に聖霊の魔力ってどれくらいあるのかしら・・・。」
「魔力値って見えるんですか?」
「魔法学院にある特殊な装置でね。中にはスキルで他人のそういうのが見える人もいるらしいわ。けど、一握りよ。」
ハイ。私です!他人はわかりませんけどね。そういえば同化してるときってステータスどんなんやろ?
“ブック、オープン”
あ、レベル上がってるやん。魔力6000 ?!やばっっ
全体的にもめっちゃ数値上がってるなぁ。
単純にネイマのがプラスされてるわけでもないけど、これなら冒険に出てもある程度自衛はできるな!
「大丈夫?なんか動かないけど。」
やっぱりステータス見てるときは、私が静止してるみたいにみえてるんやなぁ。
“クローズ”
「だ、大丈夫です!」
「本題に入るわよ?まずはね、目を閉じて深呼吸してみて。」
「それから、イメージするの。これは魔法使いには重要なことで、創造する力。今あなたの中に吹き荒れている風を収める器を想像してみて。何でもいいのよ。その膨大な魔力を一旦そこに集める感じよ?」
うーん。何かあるかな?
風、かぜ、カゼ・・・
カッコイイのが浮かばなーーい!!
何でもいい。
・・・・・とりあえず収める、集める・・・。
あ!クーラー?
クーラーやったら弱風とか強風にできるな!
ダッサイけど、とりあえず集中。
一生懸命、この膨大な風が収められるクーラーを創造した。
集めて、溜めて、いつでも出せるようにする。
段々と周りの風が落ち着いてきたように感じた。
そうしたら、ネイマの声?みたいのが聴こえてくる。
“何それ?ププッ・・・○○最高ー!”
おい!漫画読んでるんかい?!
呑気やなぁ。あれ?これ・・・。
ネイマが人間のときの記憶。映像のようで、直接自分が体験しているようで不思議な気分。
若いガイルとマリーも視える。
あ・・・急に猛烈な恐怖感に襲われた。人間やったときの最後の記憶。それからは聖霊として気ままに生きて楽しい、嬉しい感情が流れてくるけど、時々ガイルとマリーの様子もみえて辛かった。
「メイ君!メイ君!!大丈夫!?」
はっ、と顔を上げると涙を流していた。
風は私の周りを穏やかに覆っている。
「良かったぁ~。また動かなくなるし、魔力は収まってきてるのに、メイ君が泣いたり様子がおかしいから心配したわよー。」
「すみませんっ。なんか色々わかっちゃって・・・。」
「・・・・今日はこれまでにしましょう?さぁ戻りましょ。」
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4日間カノンの特訓を受け、ある程度魔力制御もできたし、他に魔法を教えてもらったり、薬草について学んだり。
なんだかんだ楽しかった。
そして5日目の朝、様子を見に来たガイルと共にジンクス夫妻にお礼を言い、家に帰ったのだった。