第11章②風魔法の威力
俺TUEEEEEになりつつあります。
今日は久しぶりにガイルと鍛練することになっている。
昨日【同化】しているときの魔力の制御についてガイルに話すと、ネイマと二人だけでは危険だと判断され、自分もその状態を確認したいと言われたのだった。
「じゃあ父さん。実践訓練しようよ?前にミリュの事があったから流れちゃったし。」
『行きたーい!』
「そうだな。そろそろファブールの森で狩りをするか。」
「十分気をつけてね。あなたが居ても魔法は扱えないんでしょう?あ、カノンにも一緒に付いてもらったらどうかしら?」
「となると、今日は狩りはやめてカノンに魔力の制御方法を教えて貰いに行くか?」
『“行く”』とネイマが字を書いて喜んでいる。
「カノンさんの予定が空いてればね。アーロンおじさんがまだ帰ってなかったら忙しいんじゃない?」
「そうね~。あなた、迷惑にならないようにお願いね。」
「分かってるよ!じゃあカノンがダメだった時は剣術の稽古して帰ってくるか。」
『「決まりだねっ!」』
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ジンクス家に到着し、『「こんにちはー!」』と勢いよく扉を開けるとアーロンがカウンターに座っていた。
「お、いらっしゃっい。」
「カノン居るか?」
「薬草庭園の方に居るんじゃないか?どうかしたのか?」
「そうだ。お前にも聞いて欲しいことがあるからちょっと奥いいか?」
アーロンは“カノン呼びにいってくるから、適当に座っててくれ”とリビングへと通してくれた。
そうや、ネイマの事話さなあかんよな。
三人で待っているとカノンを連れてアーロンが席に着いた。
『「こんにちは~。」』「よう!」
「いらっしゃっい。すぐお茶用意するわね。」とパタパタと小走り、ロダティーを持ってきてくれた。
「「で、話って?」」二人が少し緊張している。
「悪い事じゃねぇよ!まぁ驚くけどな。」とニヤニヤとしているガイル。
それで場が和んだ。
「何よ?もったいぶらずに早く話して?」カノンがいつも通りに氷の微笑みを見せた。
「あ、あぁ。あのな、信じられないかもしれないが、ここにネイマが居るんだよ。」
それからは私が代わりに話した。自分の特異体質のこと。ネイマが風の聖霊になって、今は契約により実体化して一緒に暮らしていること。
「ほ、本当なのか?」アーロンはずっと黙って聞いていたが、何とか声を絞り出したという感じだった。
カノンも冷静になろうと必死のようで「確かめることはできるの?」と言った。
「ネイマ。」と私は紙と鉛筆をテーブルに置いて字を書いてもらった。
「う、嘘・・・。」「こんな事があるんだな。」と半ば信じられない様子。
そしてネイマにベストを着てもらった。目の前でフワフワ浮いてる。
「ほ、本当にネイマがいるんだな?」
「聖霊の実体化については知ってたけど、こうやって確かめることができるだなんて・・・。」
しばらく沈黙が続いたが、仕方ない。
私達三人は、アーロンとカノンの反応を待った。
「えと、それを今日は伝えにきてくれたの?」とカノンが聞いた。
「いや、それでな。ネイマとメイが契約を交わしたのは理解したよな?」
二人は頷いた。
「で、実は【同化】というのができるらしいんだ。」と言った瞬間、カノンが大声で「同化ですって?!?!」と立ち上がったので、カノン以外の全員がその声に驚いた。
コホンッ「あ、ごめんなさい。いや、だって【同化】よ?本当なの?」
そんなに凄い事なのか。嵐の予感・・・。
「お、おお。昨日初めて同化したらしいんだが、どうも魔力の制御ができないとか言っててな。」
視線が私に集まる。
「あのね、身体の中で風が暴れ回ってる感じがするんだ。だから、同化のときにまだ風魔法は使ってない。」
「じゃあ同化してないときは、風魔法使えるのね?具体的に教えてくれる?」
ネイマと二人で練習した風魔法について話した。魔法を使う方法や3つの魔法の威力とか今の時点で分かっていることを詳しく。
カノンはかなり興味深く聞いていた。
「面白いわね。魔法使いは自分で魔力を使うから。」
「制御の方法教えられそうか?」
「やり方はね。でも出来るかどうかは、メイ君次第よ。あと、同化したときの魔力の威力を見せてもいたいわ。」
「頼むよ!俺はわからないからなー。威力の程度はさ、お前ら魔法使いのを見てたから何となく想像つくが、万が一暴走したら止められないからなー!」ワハハッと笑ってるけど、それをカノンさんにやらせるんだけど?
「仕方ないわね!私も興味があるし、魔法のシールド張れるのは魔法使いだけだからね。」
“本当に人生何があるか分からんな・・・。”会話を聴いていたアーロンがぼそっと呟いた。
『これでやっと同化で魔法が使えるねー♪』
大変なことになりそうなぁと思いながら、アーロンを除く全員で外に出て行った。
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外に出て、しばらく歩きファブールの森辺りまで近づいた。
「ここまでくれば周りへの影響はないと思うけど。」と言うと地面に木の枝で魔法陣のようなものを書き始めた。
「森の動物とかを刺激しないか?問題ないとは思うが、魔獣とか潜んでたら・・・。」
「その時はその時よ!それより家に何かあると困るもの。」
「はぁ~。」と二人は相当腕が立つようなので、その辺りは自信があるんやろう・・・きっと。じゃなきゃ困るけどなっ!
「よし。」と地面には結構大きい円陣が描かれており、その中心にカノンは立っていた。
「メイ君とネイマ~。こっちに来て。」呼ばれて隣に移動した。
「ガイルは少し離れてて。あと一応周りに注意しててね!」
「あいよ~。」とゆるーく返事した。
「じゃあまず、私からね。」と両手を挙げて「”魔法内陣”」と唱えた。
魔方陣に魔力が放たれ、一瞬光ってバチバチっと小さく音がしたがすぐに消えてしまった。
「これでいいわ。本当は複数の人数でやる方が強固になるんだけどね。ちょっとこの円陣から出てみて?」
歩いて出ていこうとすると何も起こることなく、すんなり円陣から出られた。
「まずは同化せずに”ブロウ”を私に使ってみて?」
ネイマと手を繋ぎ「”強風!”」強い風がカノンさんに向かうが円陣の所で弾かれて消滅した。
「これは、魔力にしか反応しないのよ。」とこっちに戻って来いと手招きして呼んでいる。
「じゃあ、本番!同化してみて。」
『はーい♪風』聖霊体に戻ったネイマと目が合う。
「いいよ!」
スッと身体に入り“同化”と唱えると、風が起こり魔方陣内が魔力で溢れた。
「凄い・・・!」とカノンも肌で感じる膨大な魔力に鳥肌が立っていた。
「これはまずいかもしれないわね~。」と考えている。
“風魔法使ってもいいのかな?” ネイマが聞いてくる。
「どの魔法にしましょうか?」と私が尋ねると
「そうね・・・『ヴァンウォール』にしましょう。」と答えた。
「いきます!”風壁”」
ゴォォと魔方陣内の魔力が私に集まった感覚になったと思ったら、繭のようになってどんどん周囲へ拡がり、円陣の外をも覆っていった。中は暖かい空気で充たされており、何か癒されてるんですけど?!
「あー・・・回復力まであるのかぁ・・・。」カノンが若干呆けた顔になっている。
ガイルが走ってきて「どうなってんだ?!」とカノンに詰め寄った。
実体化ネイマとの時は、こんなに範囲が広くなかったし、ましてや回復力なんてなかったけど?!
「あー・・・うん。推測だけど、本来のネイマ、風の聖霊の力ってこんなもんなのよ。聖霊の存在=魔力の塊みたいなものなの。同化したってことは、ネイマ本来の力をメイ君の身体を通してそのまま出してるわけ。だから当たり前なんだけど、魔法の威力は絶大。これを自分でコントロールできないと同化で魔法は使えないわ。」
「お前がいてよかったよ。これでブロウとかぶっ放してたら大惨事だったな・・・。」
“すごかったねー。僕もあんなに力出したの初めてだよ!”
やっぱりヤバい魔力やな!聖霊!!
「数日メイ君借りるわよ。魔力制御の特訓だわ!」
「よろしく頼むよ。」
“お泊りだー♪楽しそうだね、メイ!”
「よろしくお願いします。」
こうして、ジンクス家での魔力制御合宿が決定したのだった。