第9章②恵比寿天さま再び
他の七福神さまもいつか登場させてみたいです。
“なぁなぁ、ちょっと起きぃや~”
・・・この聞き覚えのあるコテコテの関西弁。
寝たフリをしようかとも思ったが、“やっぱり失礼やな”、と思って起きた。
「どうも。」
“あれ、どうやった?トユトユ美味しかったやろ?”
「ありがとうございました。美味しかったし、恵比寿天さまのおかげさまで色々とうまくいきました。」
“よかったわぁ。最初裸でこっちの世界に送り込んでもたし、色々ほったらかしにしてたから悪いなぁと思っててん”
けっこう気にしてくれてたんやな。ええ人(神)やん。
「あの、ユニークスキルとかってどう使えばいいんですか?」
“説明しにくいなぁ。スキルの内容にもよるから自分で試しながら使ってみてー”
「・・・そうですよね。」
“そや!あの称号役に立ったやろ?”
「・・・」
“聖霊と契約しとったやん!めっちゃレアやでー”
「ネイマの事は感謝してます。やっぱり、あの能力もらってよかったかもです。ありがとうございます。」
“そやろ?”ドヤぁぁとこっちを見ている。
“もうちょっとしたら、【あの加護】も効いてくるから!そっちの世界をエンジョイしぃーや!!”
言いたい事を伝えたら、何処かへ消えていってしまった。
あの加護ってどの加護やろ?3つあるねんけど。
まぁ恵比寿天さまの性格がわかってきてたから
“もうええわ”と、考えるのはやめて真っ白な空間の中で、もう一度眠りについた。
ーーーーーーーーーー
『おはよー!メイ!朝だよー。』
ネイマ?
目を開けるとネイマが私のほっぺたをツンツンしている。
「おはよー。本当に触れるようになったんだ。」
『ねー。』と感触を楽しむようにしつこくツンツンするので、やめい!と振り払うとケタケタ笑っていた。
聖霊のときは本当に5歳くらいの小さな女の子だったのに、今の姿は同級生の男の子だ。
『朝ご飯だよ♪早く食べたいなぁっ』
「待って!ポルターガイストになっちゃう!!」
“ぽるたぁーすとぉ?”
「おばけーみたいな感じになるって言ってたよね?あれだよ。」
『じゃあつまみ食いだけしにいくよ♪』そう言って部屋を出ていってしまった。
あー!なんか騒ぎになる前に私も行かないと、と急いで着替えた。
「おはよう。」
「「「おはよう~」」」マリーとカノンが朝食を作っていた。ミリューイも手伝っている。
「僕も手伝うよ。」と台所に向かうと、ネイマがつまみ食いしているのを発見。
まだ誰も気付いてないけど、あれ・・・私以外には浮いてるように見えてるんとちがうのか?
「あー!ちょっと忘れものとってくる!」とわざと声を大きくして注目を集め、その隙にネイマを引っ張って部屋に戻った。
「ネイマ~!あれ、見つかったら大騒ぎになっちゃうよ?」
『ちょっとのつもりが、ママの料理久しぶりでついおいしくって~。』
全然反省してないわ、これ。
「思いきって、ネイマのこと二人に話してみようか?」
『別にいいけど、ミリュとかにも教えてあげたら?』
「いいの?!」
『いいよー!』
恵比寿天さまはレアやって言ってたけど?
タイミングが問題やなぁ。
「ネイマのこと話すまでは、みんなの前でご飯たべりするのちょっと我慢してくれる?」
『わかったぁ。』とおでことおでこを合わせて約束をした。
もう一度部屋から出てリビンクに向かうと
「「おはよう。」」とガイルとアーロンが座っていた。
「なんかお酒くさい・・・」
「昨日はしこたま飲んだからなぁ。」
「祝い酒だからいいんだよ。ただ飲み過ぎた・・・。」
二日酔いみたいで、ぐったりしている。
「これ飲んで、もう少し休んだら?」
「あなたも!ほらー、一気にね。」
日本ではウコンドリンクと相場が決まっているが、一体何が入ってるのか。
「うわ・・・有り難いが苦味がだめだ俺・・・。」
「無理だろ~。一気って量じゃない・・・。」と男達が拒否しようとしたが、
「「はい、どーぞ!」」
それぞれの妻が口元までコップを持っていき飲ませた。
強い女性、素敵です。
飲んでからガイルとアーロンは、再び軽い眠りについた。
「パパもおじさんも!しっかりしてよー。」とミリューイが、出来立てのパンとスープ、サラダを持ってきてくれた。
私も食器を並べるのを手伝った。
――――――――――
昨日はタイミングよく伝えられたけど、ネイマのこと今言うべき?
黙々と食べていると
「メイ君よく眠れた?」とカノンが聞いてきた。
「は、はい。よく寝れました。」
「またいつでも遊びに来いよ、坊主!」
「そうよ。今度は一人で来なさいよねっ。」
「一人で行くなら、もう少し鍛えてからじゃないとなぁ。」
「そうねぇ。ここまではちょっと遠いから、メイ君が一人で狩りができるくらいになってからね~。」
「マリーおばさん、それってまだまだ無理じゃない?!」
あはは、とみんなが笑っていた。
「狩りくらい、すぐできるようになるよ!」と一応突っこんでおいた。
この状況でシリアス展開にはでけへんやろ。
空気を読んで、ここでの発表は控えることにした。
朝食の片付けを終えて、帰ることになった。
「ありがとうございました!」
「本当にありがとう~。楽しかったわ。」
「またな。」
「いつでもいらっしゃいね。」
「また集まろうな!」
「早く狩りができるくらい剣術練習しなさいよ!」
みんな笑顔で別れた。
ネイマは私と手を繋いで、機嫌よく歩いている。
ガイルは荷車を引きながら、マリーはその隣を歩いており、私と手を繋いでいた。
『懐かしいなー。』「懐かしいわね~。」
マリーとネイマが同時に言った。親子やなぁ~。
「こうやってネイマともお散歩したわね。」
「そうだな、弁当持って花畑まで遠出したな。」
『パパったら、まだ歩けるのにすぐおんぶしようか、肩車してやろうか?って甘やかすもんだから、ママが過保護だって困ってたなぁ。』
「そうなんだー。楽しそうだね。」
「今度ネイマにみんなで会いにいきましょうね。」
「そうだな。ネイマに兄弟が出来たことを話してやろうな。」
『ここに居るけどね~。』
「うん。ありがとう!父さん、母さん。」
ガイルとマリーは少し驚いた顔でお互い見つめ合い、私をみて微笑んだ。
“メイ・・・。”
――――――――――
家に着いてから、皆疲れていたのでそれぞれ休んだ。
夕食も、カノンが色々持たせてくれたから、今日は有り合わせのもので簡単に済ませた。
部屋に戻ったら、ネイマが絵本を読んでいた。
『懐かしいなぁ。』
「それ、ネイマのだよね?面白かったよ。この世界についてよく分かったし。」
『大好きなお話で、よくママに読んでもらったんだ。』
「ネイマ。考えたんだけど、筆談で父さんや母さんと話せるんじゃない?紙に字や絵を書いて気持ちを伝えるんだよ。」
『やってみる!』
ところでネイマって字書けるんかな?
『やったー!絵が描けた♪』
これで意志疎通できるやん!
「ハラ王国語は書ける?」
『ちょっとは書けるよ~。』
「明日、二人にネイマのこと話してみるよ。」
『うん。』
まだ早い気もするけど、聖霊魔法とか使うためには話しておくのがベストだと思った。
それにネイマが実体化してる以上、周りで不思議な現象が起こるし、ガイルとマリーに心配かけられへんからなぁ。