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第8章②海は広いな大きいな

主人公はムードクラッシャー・・・

「さぁ行きましょ~」

「よし出発するか!」


ガイルとマリーと私、そしてネイマで【ストラ海岸】に向かっている。

ファブールの森を抜けた、海に面した海岸一体をそう呼ぶんやって。あの小屋がある所ね。


しかも、ストラ海岸ではカノンとミリューイも待っている。



何があったのかというと、話は昨日の夜に遡る―――――



――――――――――


ガイルが仕事から戻ってきて、夕食のテーブルに着いた。

明日のことを話すと、マリーも久しぶりに外に出たいと言い出して三人で海に行くことになった。


ホッと一息ついていると、また突然、カノンとミリューイが現れた。


カノンも転移魔法が使えるようで、今日のことをマリーに謝りに来たんやって。

“そんなわざわざ・・・”って感じやってんけど、どうやらカノンはマリーを今度、お茶でもどうかとお誘いを兼ねての来訪やった。


そしたら、トントン拍子で二人も一緒に海行きの話が進み、今日に至った訳であーる。


「出掛けるのなんて、本当に久しぶり・・・」


マリーは軽く引きこもりやったから、遠出が嬉しいようだった。

ガイルも仕事を兼ねてはいるが、マリーの様子をみて喜んでいる。


私は、ネイマが遊べないと拗ねるのではないかと思っていたけど、両親の姿をみて喜んでいたので安心した。


「みんなで出かけるのって初めてだね!」


私もワクワクしてきて、自然と足早になっていった。


マリーはファブールの森は初めてらしく、少し緊張していたので、私が手を繋いで一緒に歩いた。ネイマも“ママを守る!”とマリーの隣から離れなかった。


休憩を挟みながらやっと森を抜けると、岩場の先に海がみえて、あの小屋から煙りが見えた。


すると前方からミリューイが駆け寄ってきて「待ってたわよ!」と私の手を引っ張って行った。


「仲良しね~。」とマリーはふふっと笑ってガイルと二人海を眺めていた。


「ママがね、ガイルおじさんとマリーおばさんを二人っきりにさせてあげなさいって♪」


“カノンさん、気が利くなぁ”とか思いながら、私は小屋の方へミリューイに引きずられて行った。


中では、カノンがお昼ご飯の準備をバタバタと忙しそうにしていた。


「こんにちは、カノンさん。僕も手伝います!」


「あら、こんにちは。嬉しいけど、ミリュの相手をしてくれる?あと少しで準備はできるから、それまで外で遊んであげて。」


「じゃあ行ってきます。」


「あ、遠くへは行かないでねー。声が届く範囲でお願いね☆」ウィンクして、念を押された。


「「はーい!」」ミリューイと二人、ガイルとマリーとは反対の方に散歩に行くことにした。


“ブック、オープン” ステータスブックを確認する。

マップが順調に新しく描かれている。“よっしゃっ!”


「何ぼーっとしてるのよ?」ミリューイが腕を引っ張る。


「あ、いやぁ。海って大きいなーって。ミリュは初めて来たの?」 “ブック、クローズ”・・・


「何度かあるわ。パパが魚を売りに行くのに、ここへ釣りに来たりしたけど。日持ちしないからあんまり売れないって、それっきり来なくなったの。まぁ魚ってそんなに需要がないみたいだし。」


日本ではサバブームやのにな。

それに海の魚食べ尽くして、今や貴重な食材になりつつあるのになぁ。


「おいしいのってどんな魚がいるの?」


「私が知ってるのは、それぞれの季節に捕れるのくらいだけど。[ルハ]と[ツナ]、[キア]に[ユフ]かな?

今は夏居ナツイだから、[ツナ]がおいしいと思うわよ。」


「よし!じゃあツナを釣ってみよう!!」

「えー!道具もないのにできないわよ~。」


少し森の方へ行って、適当な大きさの木の枝を探してみる。

一度小屋に戻ってロープか紐みたいなのを探してみた。


「師匠が色々と置いてあったはずなんだけどなぁ。」


しばらくするとガイルとマリーも小屋に来たので、とりあえずお昼ご飯を頂くことにした。


「釣りかー!どっかに竿があると思うぞ。」


「本当?!だったら私も釣りをしたいわ!」ミリューイもやる気満々。


「あんまり海に近づいたらダメよ。ミリュ、あなた泳げないんだから。」


「わかってますー。危なくなったら転移魔法で戻ってくるわ。」


便利やな。転移魔法!


「メイ君は泳げるの~?」

「泳げないなら危ないから止めといた方がいいぞ?」ガイルとマリーがじっと見ている。


「泳げる!」と思うけど。前は遠泳もできるくらいのレベルやったし。


「本当に大丈夫?ミリュはまだ誰かを連れて転移できる技術はないから・・・。」とカノンまで心配そうにしてる。


「本当だよ?だったら、ご飯食べたら泳いでみせるよ!」


「そこまで言うなら心配ないかしら?できるだけ、近づかないように気をつけてね。」と大人達は渋々納得したようやったけど、ミリューイとネイマは早く釣りに行きたくてウズウズしている様子だった。



食事が終わってガイルが竿を見つけてくれた。1本しかなかったので、私はロープと餌になりそうな動物の肉を少し分けてもらって自作の竿で釣りをすることにした。


マリーも一緒に行くつもりやったみたいやけど、カノンが久しぶりに二人で話をしようと引き留めてくれた。


ガイルも子供だけで行かせるのは・・・と心配していたが、カノンに子供達を信じてあげなさい、と言われ仕事に戻っていった。


カノンは「わかってるわね?あなた達を信じてるんだから、無茶しないでね。」とミリューイと私を真剣に見つめて話した。


「わかりました!」「分かったわ!」“はーい!”

と同時に答えて、釣りへ出掛けた。


ネイマも楽しそうにビュンビュン飛び回っているし、ミリューイもご機嫌だった。


「ねぇ、ミリュはネイマって覚えてる?」


「うーん、小さい時だったからあんまりかな?同い年の女の子で、ガイルおじさんとマリーおばさんの子供でしょ?」


「そう。やっぱり知り合いだったんだね。」


「3歳まで【ノグ】に住んでたの。それから引っ越して、【ドン】でパパが自分のお店開いたみたい。」


「幼なじみかー。」


「生きていたら、一緒に魔法学院に通ったりできたかもしれないけどね。ママが言うには、ネイマは風の魔力があったらしいし。」


“ミリュは火の魔力持ちで、小さい頃から目立ってたから、カノンおばさんが国に子供が取られちゃうって引っ越ししたんだよー”


「そうだったんだ。」


「私が引っ越してからネイマの事件があったから詳しくは知らない・・・でもママもひどく落ち込んで、パパもすごく悲しんでた・・・」


しまった・・・ミリューイもネイマも浮かない表情になっている。


「あ!この辺りで魚釣ろうか。あんまり遠くにも行けないしね。」

あまり高さはない岩場に腰を下ろした。


“うん・・・”とまだミリューイはどんよりモード。

ネイマも心なしかテンションが下がってしまっていた。


とにかくこの空気を変えないと!って急いで餌を付けて、魚を待った。


が、そうすぐに釣れるわけもなく・・・


・・・・・・



広い海を眺めていると、さっきまでの暗い雰囲気もいつの間にかなくなっていた。

沈黙していても気にならない。

いつもはうるさいミリューイも海をみて何か考え込んでいる。ネイマも同じく、隣に座ってじっと海の先を見ているようだった。



私も心をからっぽにして、ぼーっとし始めた瞬間!!


まさかの私の竿に引きが!


「「“わー?!”」」と皆で驚いたけど、竿を何とか握りしめ、必死に釣り揚げようと頑張った。


“がんばれー!”ネイマがビュンビュン飛び回る。

ミリューイは私の腰をしっかり押さえてくれていた。


「ぐぅーーっっ」と歯を食いしばり力一杯引っ張ったが、リールがあるわけではないのでなかなか厳しい。



“助けて!神さま!!”


と強く思った瞬間、後ろにひっくり返ってしまったが魚も宙に浮いて釣り揚げられた。


「うわぁ!!」「きゃあー!!」と叫んだ。


“痛たた・・・”と身体を起こすとミリューイもゆっくり起き上がっていた。


“すごーい!これ[トユトユ]だよー。すごく美味しいんだよー!!”とネイマが大はしゃぎしていた。


ミリューイも魚をみて「嘘でしょ~?幻の高級魚があんな釣竿で釣れるなんて!」とかなり驚いている。



泥まみれの50cmくらい?の魚は、よくみると鱗が光でキラキラと輝いている。うっすらと青紫色をしているが、結構大きい魚やなー。


「大丈夫ー?!」

「おーい!!無事かー!」

ガイルとカノンが向こうから走ってきた。


どうやらずっと、カノンが魔法で小屋の周りの気配を見張っていたのだと後で知った。

割と余裕やったのは、そういうことね。


大人達も[トユトユ]が、あのなんちゃって竿で釣れたことに驚いていた。


それから小屋に戻り、もう今日は解散することにした。

釣った魚はカノンが持ち帰り、明日またジンクス家に集まって、トユトユ料理を皆で作ることになった。


―――――――――


あれ釣れたのって、絶対【恵比寿天さま】の加護やな。


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