第8章①ネイマとの約束
聖霊という存在について考えるのは楽しいです。
「ネイマってここに来る前はどこに居たの?」
ミリューイが帰ってからお昼ご飯を食べて、今はちよっと自分の部屋で休憩中。
“えーと、いろんな所に行ってたかな。わたしは契約者がいないから、世界を旅してる途中なの”
聖霊は、幼体→成体→業熟体→極体という過程があるらしい。
幼体は生まれてから100年くらいを指し、成体は500年くらいで殆どはこの段階で聖霊王の元に還り、また新たに幼体として生まれ変わったり、別の種族になったりすることもあるとか。
成体の中でも長い間契約者と共に過ごしたり、稀に膨大なエナ(自然のエネルギー)によって力を持った成体が、業熟体と呼ばれるのだそうで、千年以上の時を生きるらしい。そして、その中から選ばれた6属性(光、闇、火、水、土、風)の聖霊が吸収され、極体となり空の聖霊つまり、聖霊王になるのだそうだ。
聖霊王ともなると何千年とか何万年レベルの長生きなんかな?とか考えていると
“まだ行った事のない国もたくさんあるから楽しみなんだー”
とネイマは部屋を飛び回っている。
「ネイマはまだ幼体だから、契約とかはできないの?」
“そんなことないよーでも聖霊としての力は弱いから、出来ることが限られてるかな”
「そうなんだ。聖霊って前の世界ではみたことなかったから面白い!もっといろいろ教えてもらってもいいかな?」
“いいよーわたしが知ってることなら教えてあげるよ!”エヘンッと頼りにされているのが嬉しいようだった。
「聖霊って性別があるんだね?ネイマは女の子でしょ?」
“ないよーでも契約するときに決めないといけないかな”
「えー!じゃあ自由に選べるんだね。姿も変えられるんだ。」
“うん。契約したら実体化できるんだけど、その時一応決めないといけないらしい”
「実体化できるの!?じゃあ他の人にも見えるんだ?」
“・・・それはムリみたいなんだぁ”
“実体化は契約者のみ触れることができるの。あと見えるのは同じ聖霊か契約者、それと他の聖霊と契約している者にしか見えないらしいの”
「そっかぁ・・・」と言った私を見てネイマは少し悲しそうな顔をした。
たぶん、同じことを考えてたやろうから。
私と契約して実体化したら、ガイルやマリーに会えるんとちゃうかなって、触れることはできなくても元気な姿がみられたら・・・
でも浅はかな考えだとすぐに思い直した。立ち直ろうとしてる二人に、混乱させるような事をしてはいけない。
話題を変えるために明日のことについて聞いてみた。
「ネイマ!明日どうする?ほら、遊ぶ約束してたでしょ?」
ピッと羽根がたち、パタパタ元気よく動いた。
“そうだねー何して遊ぼうかなぁ♪”
「あ!僕魚釣りやりたい!師匠に頼んでまた海の方まで行ってみたいなー」
“楽しそうだね~わたしは触れないけど、いろんなお魚さんとか見れたらいいな♪”
「どんな魚がいるんだろう。泳ぐのも楽しいかもしれない♪」
キャッキャッと盛り上がっていたら
「メイ君?誰かと居るの~?」
とマリーがコンコンッとノックした。
やばいっ声が大きかったかな?と慌てていると部屋に入ってきて
「あら?またミリュちゃんが来てたのかと思って心配したんだけど・・・」
「誰もいないよ?ちよっと思い出し笑いしてただけ。先生、びっくりさせてごめんね!」
“そろそろ、残りの畑仕事をしましょうか”とマリーと一緒に部屋を出た。
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マリーの畑はそんなに大きくはない。自分達が食べる分だけを育てている。
午前中は畑を耕したり、新しい種を蒔いた。午後からは、畑のまわりの柵を補強する作業に取り掛かる。
ガイルが手伝うと言ったが、マリーは“メイ君がいるから大丈夫”、と断った。
あとでこっそりガイルが教えてくれたんやけど、最近ガイルばっかり私と二人でズルイと言われたらしい(笑)
言語指導もほとんどやることがなくなったからだ。ハラ王国語を大体マスターしたし、なんせユニークスキルの【通訳Lv.1】のおかげもあって最後の方はテストで満点を連発したから、“天才”だなんて騒がれたので焦りまくった。
その後わざと間違えたりして落ち着いたけど、二人は結構親バカなとこがあるから、私が気をつけないとね!
「メイ君運ぶの手伝って~。」
「はーい!」
二人で木材を運び、適当な大きさに切って、柵を作った。
前の世界でもモノ作りは好きで、とても楽しい時間を過ごした。
「ありがとう~これで十分だわ。」
満足そうなマリーを見て、私とネイマも笑顔になった。
さて、次はガイルを説得しなきゃなぁ。
明日海に連れていってもらえるかどうか。
どんな理由でお願いしようかな、と考えていた。