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第7章②ファブールの森

お父さんの職場見学&体験的な感じです。

「おはよう。」


いつもと変わらない朝だけど、少しくすぐったい。


「おはよう、メイ君。」

「おはよう!メイ。」


テーブルについてみんなで朝ご飯を食べる。


今日は何しようかな、と考えているとガイルが


「メイ。今日は予定あるのか?」


「ないよー。何しようか考えてたんだ。」


「そうか。だったら、一緒にファブールの森へ行ってみるか?」


マリーを見ると「あら、いいわね。行ってらっしゃいよ。」と特に気にしていない様子。


「行く!師匠よろしくお願いします!」とはしゃいでしまった。


「急いでお弁当作るわね~。」とマリーがはりきっている。


ガイルが支度している間、私も出掛ける準備のために部屋へ戻った。


「開け、ステータスブック。」


言葉を変えてみたが、ステータスブック(と呼ぶことにした)はちゃんと出てきた。


声を出さずに、心の中で “閉じろ、ステータスブック”

と念じると消すことができた。


人からはどう見えてるんやろ?


色々と試したくなった。


“ステータスブック、オープン”


内容は昨日と特に変わりはない。


ユニークスキルってどうやって発動させるんやろ?

それに回数制限とかあるのか、魔力を使うのかまたは何か消費するのかなー?


トントンッと音がしてマリーが入ってきた。


「メイ君これ、持っていって~」とあの日潰れたはずの鈴がまたヒモに通されていた。


「これって・・・」


「そう。ネイマが使ってた鈴なのよ。いくつか持っててね。お出掛けのたびにヒモの色を洋服に合わせてたりしてたの。」


マリーは楽しそうにネイマのことを話すので、私もつられて笑顔になった。


「ありがとう、先生。それ着けて行くね!」


チリンチリン―――


動く度に音がする。


その時、暖かい風?空気に包まれたような気がした。


“・・・”


何か聴こえたような、耳を澄ましてみる。


「おーい!そろそろ行くぞー!」

とガイルの声で集中が解けてしまった。


“あ、そういえばステータスブック出したままやった”

けど、マリーには見えていないようだ。


「マリー先生。僕何してるようにみえる?」

と目の前で、ステータスブックのページをめくってみた。


「座ってるようにみえるけど?」


“ステータスブックを触ってるときは、静止しているようにみえるんかな?”


「・・・へへっ当たり~。」


「? 変な事言うのね~。さぁさぁ、ガイルが待ってるわよ~。」


「はーい。」 “クローズ”


短剣も持ったし、準備もバッチリ。




「気をつけてね~。」

マリーが手を振っている姿を見届けて、ガイルとファブールの森へ出発した。


「師匠。ファブールの森には見回りに行くの?」


「あぁ。俺がどんな仕事をしてるのか、お前にも教えてやりたくなってなー。」とガイルは仕事について話してくれた。


国境の警備はファブールの森だけではないが、ここが広範囲で国の最東端のため、定期的に見回りをしているらしい。

さすがにガイル一人で【ドン】を担当してるわけではなくて、ファブールの森とは反対側にあるジフ山脈にも二人程常駐しているんやって。

“今度紹介してやるよ”って言ってた。

あと、ファブールの森の先には海があったはず。


この世界で海を見るのは初めてやから楽しみやなぁ。


機嫌よく歩いていると、タンダンの丘に来ていた。

この先を超えて行ったことはなかったから、ステータスブックのマップにも新しく記されるハズ♪


「どんどん行こう!」

と私の張りきった様子をみてガイルは“ようやく子供らしい一面がでてきたな”と思っていた。


森に入るとこれまでとは違い、少し生き物の気配が濃くなっていた。奥に進むほど、見たことのない草花も咲いてるし、ガサガサッと何かが動いたり、バグも遠目で確認ができた。


「変わりはないようだな。」と、ガイルが呟く。

時折、木に目印がついてあるのを見かける。それを確認し、また新たに目印を刻んで進んでいく。


「森とか初めての土地で入り組んでいる所を歩くときは、自分なりに何か目印をつけておくといいぞ。」


「はい、師匠。」ガイルは、仕事をこなしながらこうやって色々教えてくれる。


途中罠も仕掛けてあって、マリーへのお土産?を回収したり、食べられる木の実や薬草の見分け方なども教えてくれた。


“ステータスブック、オープン”

確認すると、さっき教えてもらった木の実や薬草のことが載っていた。


“ほんまに助かるわ~恵比寿天さま感謝いたしまっす!!”

とステータスブックの確認も出来たところで、そろそろ休憩したいなと思っていたら


「メイもうすぐだぞ。」とようやく森を抜け、少し岩場を歩いた先に一面の大きな海が見えた。


「うわーーー!」


潮の香り、青く、広い、端のみえない海ーーーーーーーー



ガイルも声をかけずに傍に立っていてくれた。


「凄い・・・」



しばらくぼーっと眺めていた。






―――――――


気がつくといつの間にかガイルの姿が見えなくて焦った。


周囲を見ると少し先に小屋があり、煙りがみえた。

走って小屋へ行くとガイルがお昼ご飯を作ってくれていた。


「海はどうだった?もういいのか?」


「まだ見たいけど、お腹すいちやったよ!」


ハハハッと笑って二人でマリーの作ってくれたお弁当を食べた。


ガイルは罠で捕った獲物を火にかけて焼いていた。

“独特の匂いやなぁ”とか思いながらも貴重なタンパク質なのでしっかり頂いた。

塩だけのシンプルな味付け。THE男の料理やな!


ちなみに[ウーパ]っていうウサギみたいな動物のお肉でした。

血抜き、まだやったことないけど、この世界ではできないと困るやろうから今度教えて貰おう。


お腹いっぱいになり、横になって寝そべる。

「少し周りを見てくる。何かあったら大声で呼べよ。すぐ戻ってくるつもりだけどな。」

「はーい。」


一人になり、波の音が子守唄のように優しく聴こえてくる。


“幸せやな~”とウトウトしていると


チリンチリン―――――

“メイ”


「ん?」


気のせいかな・・・


“メイ、起きてよー”


まさか、また神さま?


目を開けると今度はフェアリーな感じの半透明物体が飛んでいた。


“やっと気付いてくれた♪”


これ、妖精ってやつ?


“わたし、ネイマだよ”


「え!ネイマ?!」


“うん。ずっと傍にいたんだよー会えてうれしい”


クルクルと私の回りを飛んでいる羽根がついた妖精のような姿の、これがガイルとマリーの子供?


ネイマは死んだあと、魂が魔力を持っていたため、聖霊王の元に召されて風の聖霊として生まれ変わったらしい。

ガイルとマリーへの思いが強く残っていたため記憶が魂にきざまれ、聖霊になった今も覚えているんやって。

時々二人の様子を見にきていて、私のところへガイルを導いたのも実はネイマだったらしい。


“本来はわたし達聖霊は、エルフやドワーフ、あとは特別な能力の獣人や人にしか見えないんだ。メイは霊体と接触できる体質みたいだから、きっとお話できると思ったんだよ”


にこにことあどけない笑顔のネイマ。


「なんで僕の体質知ってるの?」


“日本の神さまに会って教えてもらったよー”


「じゃあ異世界の人間って知ってるんだ?」


“うん。時渡りの人達は時々会うこともあるし、聖霊王さまとかも手伝ってるみたいだよー”


「それ教えてもいいの?」


“だいじょうぶだと思うよー?”


ネイマが飛ぶのをやめて目の前に立った。

そっと手を伸ばしてみたが、触れなかった。


“わたし達に触るには契約しないとダメだよー”


聖霊は、光の聖霊、闇の聖霊、地の聖霊、水の聖霊、火の聖霊、風の聖霊とそれを生み出した空の聖霊=聖霊王がいるらしい。それぞれが自然界に属する領域で存在し、エネルギー=魔力(エナ)を作り出している。因みにエナを身体に取り込み、自分の魔力として変換できる者が、魔法を使えるんやって。


「聖霊と契約したらどうなるの?」


“んとね、色々あるけどかんたんに言うと聖霊を使えるんだよ!”


「聖霊魔法ってこと?」


“契約者はそういうのかも?まぁ聖霊が持ってる力を借りることができるの”


「それは魔力がなくても?!」


“そうだよーだってわたし達のちからを引き出す器さえあれば魔力はいらないんじゃないかなぁ”


それって、私も魔法っぽいものが使えるかもしれんってことやーん!!

剣術だけやと心もとないと思ってたし、やっぱり異世界言うたら魔法やろ!


「ちなみに契約ってどうすればできるの?」


“聖霊が認めたら、かんたんな儀式をして成立するよ”


“でもね、聖霊はひとりとしか契約できないからね。契約者が死んじゃうか、聖霊じたいが消滅するまで有効なんだぁ”


「そうかぁ。聖霊も契約する人も慎重に選ばないとだね。」


“そうだよー人間はまだいいけど、長生きする種族だとねぇ。まぁわたし達も長生きするからいいんだけどね”

とケラケラ笑っていた。


「またこうやって話しできる?」


“うん。その鈴に呼びかけてくれたらねーメイの声は届くよ”

“でも、しばらくは傍に居ようと思ってるからよろしくね”


「うれしい!こちらこそよろしくね。」


触れないけど、ハイタッチの仕方を教えて、ネイマは私の手を触れようとしてすり抜けた。




“あ、もうすぐパパがくるよー”



「おーい。そろそろ帰るぞー!」と小屋の外で声が聴こえた。


「はーい!」


片付けをしているとガイルも荷物をまとめ始めた。


「何ニヤニヤとしてるんだ?」


「え?何でもないよー?」


ガイルの背中にネイマがまとわり付いてるから微笑ましくって。

こうやって本当はずっと傍にいたんやろうな。


「帰るか!」


こうしてネイマも一緒にマリーの待つ家に帰ることになった。

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