第6章①変わるもの、変わらないもの
設定を色々考えるようになりました。大変ですが、面白い作業です。
部屋に戻った私は”やっぱりいらんことしたかもな~”と思い直したり、ひとりでジタバタしていた。
「あ~~外でからだ動かしたいっっ。」っと叫んだ。
コンコンッ
「メイ、ちょっといいか?」
「師匠!?ど、どうぞ~。」と言うとマリーも一緒に入ってきた。
「ふふ。メイ君~嬉しいお知らせがあるのよ。」
「ちょっと早いけど、明日ゆっくり歩いてアーロンの所へ行こうか?」
「カノンさんに診てもらって大丈夫だったら、外に出てもいい!?」
ガイルはちらっとマリーを見て確認している。
マリーは”仕方ないわね~”と「カノンがいいって許可してくれたらね。」と二人とも笑っていた。
いつもと同じようだけど、ちょっと雰囲気が変わった気がした。
その日の夜は珍しくガイルも手伝い三人で夕食を作った。
そしてネイマのことを色々と話してくれた。
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「じゃあ行くか。」
「うん!行ってきまーすっ」
翌朝早く、ガイルと私はジンクス商店に向かって出発した。
マリーは笑顔で送り出してくれた。
朝日が眩しくて、空気が清々しい。
「あー気持ちいい!!早く行こうよ。師匠~。」
”走るなよーゆっくり行けばいいんだからな”と後ろのほうでガイルの声がする。
外に出るのが久しぶりやから、自然と早歩きになってしまう。
タンダンの丘が遠くに見えて、ふとあの時の出来事が気になった。
ごたごたしてたから聞く暇なかったけど、何でミリュはあんなのに追いかけられてたんやろ?
足を止めてガイルを待った。
「どうした?疲れたのか?」
「師匠と話しながら歩こうと思って。
あの、僕らが戦ったのって何だったの?バグにしては大きかった気がするんだけど。」
ガイルは魔獣のこと、あれはバグドでめったに現れないが、今回も何が原因でファブールの森にいたかはまだ分かっていない事を教えてくれた。
「でもミリュって首都にある学校にいたはずなのに、何で森にいたんだろ?
里帰りしてるときに遊んでて、バグドに見つかっちゃったのかな・・・」
「あー・・・それについては黙秘する。聞きたいならミリュから直接聞けよ。」
なんかばつが悪そうにガイルは濁した。
こんな察しのいい男児はおらへんと思うけど
「うん。ミリュとも今度いっぱい話そうって約束したから聞いてみるよ!」と答えておいた。
それから2時間程歩いて、休憩。また歩いてジンクス商店に着いた。
「こんにちはー!」
トントンッとドアをノックして開けた。
「おーい!居るかーー!?」ガイルが大声で呼ぶと
「待ってたのよ!」とハァハァ息を切らせてミリューイが走ってきた。
「ミリュ!ちゃんと着替えてから行きなさい!」奥からカノンの声。
"んもぅ!わかってるわよ"とブツブツ言いながら
「勝手に帰らないでよね!ガイルおじさんもだからね!」とまた走っていった。
"やれやれ"とガイルは商談用の席に着き、こっちに来いと手を振った。
座ってすぐに、カノンがお茶をもってきてくれた。
こちらの飲み物は、ハーブティーと紅茶、水が主で薬草茶もたまにある。
コーヒーとか日本茶みたいなのはまだ見かけたことがない。
商店内でも、コーヒーっぽいのは見当たらないなぁ
「薬草茶よ。どうぞ。」と目の前に置いてくれた。
この香り知ってるような・・・一口こくり。
ルイボスティー?でもそういう名前かわからんし。でも美味しい!
「おいしいです!」
「ありがとう。身体にとってもいいのよ。
メイ君。これ飲んだらさっそく傷の様子みせてくれる?」
「はい。よろしくお願いします。」
「早く(剣術)練習したいってウズウズしてるみたいだから、ちゃんと確認してくれよ。」とガイル。
「わかってるわよ。あなたみたいに剣術狂に預けるんだから、万全でないと許可しないわよ。」
またニッコリと笑顔でガイルを制止する。
「俺はその間、久しぶりにゆっくりするかな。」と言うと
「あら、それはどうかしらね。」と含みのある言い方でカノンは戻っていった。
入れ違いでミリューイが戻ってきて「じゃあおじさん、始めましょ♪」と腕を引っ張り外に出て行ってしまった。
私も早く、剣術の稽古に参加したいから、残りのお茶を一気に飲んでカノンさんの元へ向かった。
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「カノンさーん。すみませーん。」
カウンターの横のドアを軽く叩いたが返事がない。
そっと開けて「あのーカノンさーん。」ともう一度呼びながら奥へゆっくりと進んだ。
目の前にはソファーと暖炉があり、結構中は広く感じた。
ぼーっと立っていると色々な香りがすることに気付いた。
「ごめんなさいねー。」と左の方から小走りでカノンさんが出てきた。
“こっちに座って”とリビングに通され、その先のテーブルの上にはたくさんの薬草が所狭しと並べられていた。
服を脱いで傷を診てもらう。
一番内出血がみられたところも、殆どひいており、他も特には異常なし!
跳んだり、手足を曲げたり伸ばしたり、テーブルの周りを走らされたが、カノンさんのお墨付きで完治という結果になった。
「ありがとうございました!」めちゃめちゃ笑顔で伝えた。
「本当によかったわ。男の子でも跡が残ったらどうしようかと思ってたけど大丈夫ね!」
カノンさんも安心したのか、表情が柔らかくなった。
「メイ君。これからもミリュと仲良くしてあげてね。あの子が無茶しようとしたら怒っていいし、必ず私や大人に相談してほしいの。お願いしてもいいかしら?」
「はい。僕も友達欲しかったから。」
“ありがとう!”って抱きしめられてドキドキした。
綺麗な人ってなんかいい匂いがするんよね~
マリーはお日様の匂いがするし、素敵な女性っていいよね!
・・・
・・・・・
私、思考が段々と男子化してるのかな・・・
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「ガイルおじさん!メイって何処から来たの?」
剣術の稽古を終わらせて休憩していると、ミリューイから核心をつく質問がきた。
「そうだなぁ。それはメイに直接聞いたらどうだ?俺はお前の話もミリュから直接聞くように言ったし。」
・・・・・少し考えて
「そうね!楽しみはとっておくわ!」とミリューイは上機嫌でメイを待っていた。
ガイルはふと、メイの記憶は戻っているのかどうか気になっていた。
出会ってから4ヶ月。特に変わった様子はない。
別に今のままでもいいのだが、メイはどう思っているのか・・・
初めはネイマの事もあったし、子供をマリーの側に置くのをためらってはいたが、今はもう大切な存在になっている。
マリーとも相談して、メイと落ち着いて今後のことを話してみてもいいかもしれないな、と考えていた。