3話 そして舞台は整った
3ヶ月も更新してなくて自分でびっくりしちゃいました。遅くなってすみません!待ってて下さった皆様、感謝ですm(__)m
翌朝、トリスの森林を目指してハラ王国を出国した。途中休憩しながら昼過ぎには目的の宿屋へ到着。森林地帯は鳥の鳴き声や水の音以外聞こえないくらいに静けさに包まれていた。
「空気が違う・・・。」
『いい所だね。ぼく、遊んでくる!』
『私も行くわ。』
ネイマやテテュスも聖霊体になり、辺りを散策しに出掛けた。
依頼主は近くの温泉へ行くと言うので、クラークとリカが護衛に付いてお嬢さんにはミトラスと私が付き添い、森林を散歩することになった。
昨日で打ち解けたのか、お嬢さんとミトラスの話は弾んでいた。私は気配を消して少し距離をとりながら歩いた。
暇なのでステータスブックを見ていると、ネイマとテテュスが動き回っているおかげでマップや植物、動物辞典がどんどん更新されていく。
足元に生えていた貴重な薬草や珍しい実を見つけると採取しながら歩いた。なんか楽しくなってきたぞ。
「何やってんだ?おーい!メイ!」
は!いつの間にかあんなに距離が。
「すみません。変な奴ですけど、頼りにはなるんで安心してください。」
「ミトラスさん・・・今晩、少しだけお時間頂けませんか?」
「え?」
「あ、あの!夜にトリスの森を散歩すると、木々の間から星が見えて綺麗だと聞いて・・・楽しみにしてたんです。でも一人ではお父様が許してくれなくて・・・。」
「分かりました、良いですよ。」
「あ、ありがとうございます!」
お嬢さん、ついに告るのか?!目が合うと嬉しそうに手を振るので、私も頷いて返事をした。
―――――――――――――――
トリスの森林は保養地だから宿以外にコテージもあり、依頼主はそこに家族と泊まる。すぐ隣には小屋があり、そこに使用人や護衛用の部屋があって私達も待機していた。
「今夜お嬢様が散歩に付き合って欲しいって。俺とリカで護衛しようと思うんだけど。」
「私は遠慮するわ。」
「いやいや!暗い夜道に男とだけっつーのはダメだろ?!」
「俺が行こう。」
「クラークが?!珍しいね。」
「私は賛成よ。メイもいいよね?」
「うん。」
「依頼主に誤解されないか?俺とクラークだと男だけだし・・・。」
「そんなに長く散歩する訳じゃないだろ?」
「ねぇ、気になるならお嬢さんの使用人にもついてきてもらったらいいんじゃない?」とリカが思い付く。
「そ、そうだよな・・・ちょっと話してくる。」
ミトラスが出ていくと、クラークが大きく溜め息をついた。
「なんか様子が変?だね。二人とも。」
どうやら昔、ミトラスに振られた女子が逆恨みしてある事ない事言いふらす事件があった。ミトラスを貶めようとしたらしい。それからは呼び出されても応じないし、女子と二人きりにならないように気を付けているんだって。だからいつもクラークと一緒にいたのか。
「今回は依頼だから仕方ないと耐えているみたいだが、ちょっと重荷になってるのかもな。」
「ごめん!そうとは知らずに無責任にあのお嬢さんを焚き付けた・・・。」
「・・・あいつもそんなことがあったの?」
「じゃあ皆で付いて行こうか?」
「あぁ、そうしてもらえると助かる。」
ミトラスが暗い表情で戻ってきて「お嬢様が俺一人で来て欲しいって・・・。」と少し震えながら話した。
「あの、ごめんねミトラス!僕らがちゃんとお嬢さんを説得してくるよ。ちょっと待ってて。」
「同じパーティーなのにあなたに任せ切りにして悪かったわ。・・・ごめんなさい。」
「え?いいのか・・・俺、リーダーだし・・・やらなきゃって・・・。」
「リーダーだけやらなきゃいけないことはないだろ。今回はよく頑張ったよな。」
「ふぁ~ほんっとに助かった・・・。俺、女と二人はダメなんだ。大勢いる場所でならまだいいけど・・・ちょっと色々あったからさ。」
「今回のことは本当にごめん!今度は僕に任せて。」
「私も手伝う。」
「俺はミトラスについてる。」
「じゃあ・・・その、皆頼む!」
私のせいや。猛省!!次からはもうちょっと考えて行動しないと。
お嬢さんをなんとか説得して見える範囲で離れて見守ることになった。
―――――そして夜。
月明りだけが頼りの真っ暗な森の中、見上げた夜空に浮かぶ無数の星が更に輝いて見えた。動物の気配も殆どない。
足元が全然見えないから、お嬢さんとミトラスがランプで行く道を照らしながら、左右に私とクラークが離れて付き添い、後ろにリカを配置して護衛の布陣で歩く。
コテージから離れすぎないように、何かあっても対応できるようリカはお嬢さん専属の使用人を連れている。もし振られて逆上したお嬢さんが何かしても証言してもらえるように、だ。それと使用人を通して依頼主にも密かに今日の事を報告してもらっていた。
お嬢さんの念願通りとはいえないかもしれないけれど、一世一代の告白をする舞台は整った。
私の闇魔法でプライバシーは守ったから、告白中のやり取りはお嬢さんとミトラスしか分からない。
少しすると静かに涙を流しながらお嬢さんがコテージの方角へ小走りしていたので、専属の使用人を側につかせ、連れていってもらった。ミトラスのことはクラークに任せて私とリカは部屋へ戻り先に休んだ。
今回のことで、依頼は吟味して受けようと固く決意した。リーダーはミトラスだけど、私が一番年上だし、メンバーへの配慮に欠けていた。落ち込みそうだけど、下を向いても仕方ないしこれからはもっと気を付けよう。