1話 パーティークエスト開始!
ご無沙汰してます。気付けばお盆になっておりました・・・。今後は不定期更新ですが、冒険者編ぼちぼちやっていきたいと思います。お暇潰しによろしければどうぞ(*´∀`)つ
□■冒険者編■□
私はDランク冒険者、メイ・パロット。《暁の星》というパーティーに所属している。リーダーのミトラス・ムー、メンバーはクラーク・ロイブ、リカ・バイヤー。この3人は国立剣士官学校の同級生で、卒業後は将来国を背負う人材として嘱望されていたのに、エリートコースを蹴って冒険者の道を選んだ変り者達。
思春期のモラトリアム(社会的責任を一時的に免除あるいは猶予されている青年期をさす。 生きがいや働きがいを求め,発見するための準備を整えるらしい)とも言えなくもない気がするんやけどねぇ。
暁の星としての初パーティークエストは私が選んでもいいといわれたので、【ジュールド共和国】までの護衛をする依頼を選んだ。獣人族の友人、ゴウ・カナタのいる国。最近はたまに手紙のやり取りだけやったから、会えるかもしれないなぁと下心ありです。
『カナタ達元気にしてるかなー?』
『あの子、また父親と漁に出てるかもしれないわよ?』
“そうなんだよね。手紙だと行き違いになること多いから、国についてからサプライズで訪ねようと思ってるんだ”
『ジュールドにはしばらくいるの~?』
“皆に相談しなきゃだけど、ジュールド共和国は初めてだから色々見て回りたいかな”
ネイマ(風の聖霊)とテテュス(水の聖霊)も護衛依頼とはいえ、諸国を旅するのが楽しみのようだ。
「ここで少し休憩するぞ!」
ミトラスからの指示が出て、依頼主達は馬車から降りて木陰で休んでいる。その近くでリカが警護中。
リカはパーティー唯一の女子。しかも美少女、あ、もう成人したから美女というべきかな?
まぁそんな訳で身なりは中性的に装い、フードを被って顔を出さないように気を付けている。性別は隠すつもりはないけどあえて公表もしない。冒険者としての呼び名も《リー》で通しているのだ。
その近くをウロウロしているのがリーダーのミトラス。いつもリカの周りを警戒しててくれるから、私も助かってるんだけど、リカは鬱陶しそうに睨み付けている・・・。
「ククッ!あれ、見ろよ。あいつは本当に見てて飽きないよな?」
「クラークだってミトラスを観察するの飽きないよね~?素直に親友の恋を応援してあげたらいいのに。」
「だから見守ってるだろ?邪魔せずに。あ、追い払われてる・・・ククッ、あいつは凄い奴だ。」
「本当にリカのこと好きだよねぇ。報われて欲しいよ。」
「お前もリカのこと狙ってんじゃないのか?」
「え、違うけど?リカは好きだし、綺麗だと思うけど恋愛対象というのではないよ?」
「ふーん・・・ミトラスとライバルなら面白くなると思ったんだがな。」
「・・・どこが応援してるのさ。クラークって悪趣味~。」
「そうか?」
「あ、ミトラスが落ち込んでる。こっち来るよ?」
「はぁ・・・・・。」
「ほら、水飲めよ。」
「ありがとう。ゴクッゴクッゴクッ・・・。はぁ~。」
「リカも休めばいいのにね。僕、声かけてくるよ。」
「俺が行く。お前ももう少し休め。」
クラークがリカと交代してくれて、ミトラス、私、リカと横並びに座る羽目に。き、気不味い。
「お疲れ様!」
「お疲れ様、メイは大丈夫?」
「うん。リカってけっこう体力あるよね。」
「そりゃ学校で鍛えたし、冒険者になってからもギルドの依頼のために日々体力作りは欠かさないよ?」
「ストイック!あ、ミトラスもやっぱり体鍛えてるの?」
「俺?特にこれといってはないな!」
こいつ、せっかく話題をふってやったのに。話が膨らまへんやろ!
「・・・男はいいわよね。」
「あー!ジュールド共和国に友達がいるんだ!また皆に相談するけど数日滞在してもいいかな?!」
「いいな!俺も武器や防具を見て回りたい。」
「リカは?!」
「私は・・・その、良かったらメイに同行しても、いい?」
美女のお願いは断れない。無意識にしても可愛いオーラ全開や。
「いいよ!獣人族でね、兄弟も多いみたいだし、喜んでくれると思う。」
「お、俺も!!メイの友達は俺にとっても友達みたいなもんだろ?!俺も行く!」
「ミトラスが行くなら絶対クラークもついてくるだろうし。皆で遊びに行こうか?その代わり手土産たくさん持ってお邪魔しよう。」
「ふふ、楽しみね。」
「なんかやる気出てきたー!おーい!!クラーク!」
ミトラスが走っていく。単純な奴やなぁ。そこが可愛いんだけどねぇ。
「もう~~!・・・ちょっと聞いてくれる?ミトラスが依頼主より私の心配するからお嬢様の機嫌が悪いのよ?それに全然気が付かないし・・・。本当にとばっちり。はぁ、また嫌な事思い出しちゃった。」
ミトラスも実は見た目がかなり格好良い。クラークは違うタイプのイケメン。クラークの場合、性格が冷淡やから取っつきにくいけど、ミトラスは王道の男主人公タイプ。熱血、情に厚くてクラスのリーダー。だからモテる。そしてリカもかなりモテる。
ここまで言えばお分かりのように、モテる男女には嫉妬や羨望等の泥沼感情を持つ人間関係が付きまとう。ミトラスは鈍感だからあまり気にしないみたいやけど、リカはそういったものにうんざりしていた。取り分けミトラス関連の女子達に嫌な思いをしたようで、一時期はミトラスを完全に無視していたのだ。
「あの依頼主のお嬢さん・・・やっぱりミトラスのこと気にしてたんだ?うわ、ごめん。この依頼断ればよかったね。」
「いいのよ。依頼主のお嬢様のことなんて会ってからじゃないと分からないし。あ、ごめんね、愚痴って・・・。」
「言うのは無料だし、僕には何でも話してよ!僕も聞いてもらいたいからお互い様ってことで。」
「うん・・・じゃあ好きなだけ愚痴るわ。」
休憩したら気分転換期なったみたいでそれからは順調に進んだ。今回のルートは首都【ノグ】から国境の【オキ】を出て、ジュールド共和国領地の【トルスの森林】を抜けて入国する。トルスの森林の中に宿屋があり、ジュールド共和国に入国する手続きをするのだ。
森林には野生のバグ(イノシシみたいな動物)やウーパ(ウサギみたいな動物)、自然の野草や木の実もあり、ちょっとした保養地としても有名だ。木々が多いから森林浴しながらの散歩も楽しめるし、静かな場所らしい。
ただ野生の動物は時に襲ってくる事もあるので十分注意は必要だ。ごく稀に魔獣化したものも現れるので危険がないとはいいきれない。
その為に護衛がいるというわけ。
【オキ】で一泊して、【トルスの森林】の宿屋に向かい一泊。そのあと【ジュールド共和国】内までの護衛となっている。依頼主の希望で行きのみの護衛だけど、その方がジュールド共和国でゆっくり出来ると思ったからね。
普通は往復依頼じゃないとなかなか受けてもらえないらしいけど、今回はお互いに利害一致。依頼金も良かったし。
今は【オキ】に向かう途中。護衛用の馬も借りてくれたし、依頼主は金持ちらしい。こんな新米パーティーに破格の待遇で怪しいとは思ってたんやけど。
どうも依頼主のお嬢様がミトラスに一目ボレしたっぽいな。・・・面倒なことにならなきゃいいけど。