第85話 暁の星、集合する
花粉・・・辛い・・・。年々酷くなってる気がします。
「こっちだよ、リカ!」数日ぶりに会うがイメチェンした姿にまだ慣れない。
「こないだはありがとうね!」
髪はショートカット、見た目も男の格好でけっこう体つきは女性らしさがあったのに、それがわからないように服装で上手く隠していた。
「うーん、美少年って感じ!」
「美少年って・・・。でも女だってわからないなら良かった。これならとりあえずは大丈夫よね?」
後から来たミトラスとクラークの反応はというと・・・。
「よー!あれ?そいつ誰?」
「マジか・・・リカ?」
「はっ?!え!!リカなのか?!」
「よろしくな。・・・なーんてね!!」
笑うと中性的でめちゃくちゃかわいい。あ~ミトラスが昇天してますよ?
「じゃあ、今後についてメンバーで話を詰めよう。」
リカと私は歩き出し、クラークに軽く蹴りを入れられて正気に戻ったミトラスは話が出来る場所へと移動した。
今日はジフ村で集まり、トロ爺こと、トーロ・ニチカの好意で宿泊施設の部屋を借りている。首都【ノグ】だと人目もあるし、今回は暁の星のメンバーだけで誰にも邪魔されずに話し合いたかったからね。
「さて、改めて皆よろしくお願いします!」
「よろしく!」「よろしくね。」「よろしくな。」
「僕から先に話をさせてもらってもいいかな?」一番大事な聖霊の事を最初に伝えたかった。
全員頷いて、真面目な表情になった。
「僕、リーダーやるのはいいんだけど・・・ギルドへの申告や表立ってのリーダーはミトラスにお願いしたいんだ。」
「つまり表面的にはミトラス。実質はメイがリーダーってことか?」とクラークが言うとすかさず、
「何でだ?俺は嫌だぜ。」とミトラス。
「きっと理由があるんでしょ?教えて?」とリカ。
「僕ね、聖霊使いなんだ。」
「そうなの?!」「へー!ほんとにいるんだな聖霊使いって!」「・・・珍しいな。」
「聖霊使いってことはまぁそこまで隠す事もないんだけど、実は僕、契約聖霊が2人いるんだよね。」
「「えぇ?!」」「は?!」
「契約聖霊が複数ってかなり珍しいみたい。だからあんまり世間で目立ちたくないというか、矢面にたつとややこしい事になるんだ。」
少しの沈黙。それぞれに考えている様子。
「・・・分かった。俺がリーダーとして登録する。」
「本当?ありがとう!!」
「そうだな。元々ソロで活動しようとしてたのもそういう理由もだろうし。俺はリーダーの意見に賛成する。」
「うん。私も男として過ごすつもりだし、秘密のあるパーティーってなんか謎めいてていいわ!」
「リカ、男として過ごすつもりなのか?」とミトラスが聞いた。普段はケンカばかりでまともに会話できないが、パーティー結成前後から、少し話せるようになっていた事が密かに嬉しかった。
「そうよ?登録はリカ・バイヤーだけど性別が載るわけでもないし、パーティーではそうね・・『リー』とでも呼んでくれたらいいわ。」と答えた。
「そうだ。俺、先にギルドに登録しとくから。仕官しないとなれば時間ができるし、Eランクの依頼をガンガンやっておきたいからな。」
サラッとクラークが意見を出す。
「じゃあ俺も!Eランクならソロでもできるからな。」
「私もそうするわ。」
「了解!僕は【ジザ】で登録するつもりだけど、所属ギルドはそれぞれで決めていいよ。」
「パーティーの手続きが複雑になると面倒だから俺もジザ所属でいい。」
「だな。俺もそれでいい。」
「メイが信頼してるギルドなら私もそうするわ。」
「僕も時間あるし、見習いとして皆の依頼を手伝おうかなぁ。」
「え?何その見習いって。」リカが目を丸くした。
「なんかね、身寄りのない子供達が冒険者として登録するまでに飢えて困ることがないようにって、【ジザ】のギルドマスターが特例でEランク冒険者とかギルドの手伝いをさせて駄賃程度だけど報酬を出しているらしいんだ。」
「へぇ、それは知らなかったな。」
「学校でもギルドについて勉強するけど、聞いたことないな。」
「公にはしてないみたい。『儂のところまで来る威勢のいい奴だけ特例で見習いをさせてる』って言ってたから。」
「見習いの報酬ってどうなってるんだ?」クラークが興味を持った。
「基本的にギルドマスターが頼んだ依頼は、マスターが自分で出してるみたい。あと、Eランク冒険者が1人で出来ないと泣きついてきた時に内容によって見習いをつけてあげてるって。それは冒険者の報酬をギルドマスターが決めた取り分で渡すらしいけど。」
「なるほど。」
「あ、僕は無償でいいよ?!ただEランクの依頼に慣れたいだけだし。」
「じゃあ私と依頼受けてみる?ほら、父さんの事もあるから。メイと一緒なら安心だし、ギルドマスターに事情を説明してお願いしてみよ!」
「え?!待て!俺の依頼も手伝ってくれよ。」
「おいおい、Eランクの依頼くらい1人で出来ないのか?」
クラークがニヤニヤしながらミトラスに突っかかる。
「あ?まだ依頼が何かもわからないだろ?だ、だから念の為だよ!」
「なら俺が付き合ってやるよ。初依頼は2人で受けるか?」
「良いじゃない!よかったわね、ミトラス。」リカがダメ押し。クラークが腹を抱えて笑っている。
「まぁ出来るだけ早く皆で依頼を受けれるランクになろうね。」と言うのが精一杯だった。
「うっ・・・そうだな。よーし!!パーティーで依頼を受けられるように最速でDランクになってやる!」
「じゃあ明日にでも行くか?」
「おう!」
「当面は各々で活動するという事で。何かあればまた集まろう。」
「そうね。」
「じゃあ俺達は先に行くぞ。またな。」
「えっもう行くのかよ?!泊まっていこうぜ~。」
「明日から色々と忙しくなるんだから帰ってやる事があるんだよ。嫌なら自分で帰れ。」
「わーかったよ!じゃあな!」
「あー・・・クラークの転移魔法で帰るからか。」
「私は一泊してくけどね。」
リカとも別れ、私も転移魔法で帰宅した。
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『なんか上手くいってよかったね~!』
『見習いって楽しそうじゃない♪』
ネイマとテテュスも気兼ねなく過ごせる仲間が増えて嬉しそうだ。
“僕らも忙しくなるよ!”
見習いのこともあるけど、これからの予定を計画しなくちゃね。
うん、なーんか楽しくなってきた!