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第83話 リカの説得大作戦その1

今年は連休が少なくて残念・・・( ´△`)

ハラ王国の首都【ノグ】にある国立剣士官学校の女子寮内の1室。


先日、人生の一大決心をしたリカ・バイヤーは、父親に冒険者として生きることを伝え、認めてもらうために帰省の準備をしていた。


今、学校から許可が下りるのを待っている。


我ながら、本当に思いきったことをした。よくミトラスもクラークも許してくれたなぁ。あ、クラークは認めてないんだったわね。


鏡に映る自分を見た。私は、私。好きなように生きていいのよね。冒険者は自由業で自己責任。だったら・・・!


―――――――――――――――


それからすぐに馬車を手配して、故郷の【ドン】へと向かった。ほとんど休みなしで移動してるのに不思議と疲れはなかった。むしろドキドキとした高鳴りが止まず、力が湧いてくる。


ジフ山脈でトロ爺こと、トーロ・ニチカに見つかり、強制宿泊を命じられた。早くに母親を亡くしたので、その代わりに相談にのってくれていたトロ爺の奥さんのタイナと、その娘で私には姉のような存在のマレナ。2人に話をたくさん聞いてもらったら安心して、その日は話も途中で、いつの間にか意識を失うように眠りについた。


翌朝。


「リカ、おはよう。」タイナが朝食を用意してくれていた。


「おはようございます。昨日はいつ眠ったかわからないんだけど、ぐっすり眠れたよ。ありがとうございました!私、頑張るね。」


「そんなに頑張らなくていいの。リカの気持ちを素直に伝えなさい。それで充分よ。」


「タイナさん・・・。」


「さぁ、ジフ山脈名物の朝露ハーブ水を飲んで。パンも焼きたてよ。マレナが張り切って作ったのよー。」

「頂きます!」


食事を済ませてお礼を言ってから、また馬車を走らせた。昨日までとは違って気持ちは落ち着いている。それに空気も清清しくて、体も心もすごく満たされていた。


父さん、驚くだろうなぁ。


ジフ山脈を下り、麓の村に到着。自宅の横に馬をつなぎ、水を用意した。「お疲れ様。無理させちゃってごめんね。あなたのお陰で早く来れたわ、ありがとう。」馬の干し草を集めると、ひとつ大きく深呼吸をした。


扉の前に立ち、緊張を振り払うように大声で「ただいまー!」と勢いよく入った。


あれ?人の気配がない。どこかに見回りに行ってるのかな。


「父さん?帰ってきたよー??」部屋の中を見て回ったが、やはり出掛けているようだった。


急に気が抜けて、椅子に腰を掛けた。母さん、見守っててね・・・。


ぼーっとしていると、外からトントントン、と音がした。


「・・・はーい?」


「失礼しまーす。あ!やっぱり!!リカさん、帰ってたのね。おかえり!」


父親の部下、というか同僚のオリヴィア・テイラーだった。見たことのない馬がいたので、リカが帰省したのではないかと覗いてくれたらしい。


「ただいま!リヴィさん、父さんどこか行ってる?」


「巡回中よ。お昼には戻ってくるわ。それにしても・・・どうしたのよ、それ?!」


「ふふ、ちょっとね。決意の証っていうか、リヴィさんにも聞いてもらおっかな!」


仕官せず冒険者になること、メイ達とパーティーを組んで旅をする予定等全部話した。


「そう・・・。兵士より甘くない世界よ?命懸けよ?覚悟はできてるのよね。」

「もちろん!!」


「それと・・・。言いたくないけど、敢えて伝えておくわ。同じ女として、先輩としてね。」

「?」


オリヴィアは夢物語ではなく、現実を話してくれた。兵士以上に粗暴な人種も多い冒険者。国勤めでもまだまだ男社会の中で隙を見せれば陥れられたり、襲われたり、想像のできないような辱しめを受けることもあると。命を奪われるより酷い状況や耳を塞ぎたくなるような話も多かったが、後学のために最後まで聞いた。


「あなたはその見た目や才能でとても目立つわ。それは今までも嫌ってほど実感したでしょうけど、これからはもっと覚悟しておいた方がいい。むしろ不利な状況よ。」

「・・・・・。」


「怖がらせてごめんね。でも男性メンバーは絶対自分達が守るとか、思ってそうだし。メイ君は心配ないと思うけど、誰でも何処でも油断は禁物よ?」


「ありがとうございます。私、わかってるつもりで分かってなかったのかもしれません。でも、一度きりの人生だもん。やりたいことやって、死んでいくなら本望!強くなって、私のやりたいこと見つけてきます。」


「そう。・・・この話を聞いても気持ちが揺らがないなら引き留めようがないわね。私は全面的に応援する!」

「良かった♪近くに味方がいると頼もしいです。」


「でも忘れないで。嫌になったり、怖くなったらいつでもお父さんや此処に戻ってきていいんだからね。何もやり遂げなくてもいいの。無事でいて・・・。必ず元気な姿で帰ってくるのよ?」


女子トークを終え、ちょっとしんみりしてたけど、腹時計の合図でちょっと顔を見合わせて笑った。


そして2人でお昼の支度をすることにした。


―――――――――――――――


「じゃあ、頑張って!」

「はい!」


オリヴィアは2人で話せるようにと、 食事の用意だけ手伝い、自宅に帰っていった。


しばらくすると、足音がして「リヴィか~?あの馬どうした?・・・それより、さっきからいい匂いがしてるな!!」と勢いよく中に入ってきた。


「おかえり、父さん。」

「ん?あぁ?!お前、リカか?!」


「うん、ただいま!」

「どうした?!?!その頭?!」


短く切った黒髪。ずっとロングだったからスッキリして自分では気に入ってるんだけどな。


「父さんに大切な話があって、急遽帰ってきたのよ。」

「な、なんだよ?」


とにかく座って食事でも、と無理矢理席に着かせた。驚きながらも、目の前の食事に目を奪われているジル。


「とりあえず食べるぞ!!」

「「いただきます!」」


食事も中盤、すっかり先程の話題をジルが忘れかけた頃、再びリカが話を切り出した。


「父さん、私の進路についてだけど。」

「ん?あぁ、それで帰ってきたのか!どうするんだ?決めたのか?」


ジルは内心、兵士ではなく文官などの内勤になって欲しいと思っていたが、リカの性格ならやっぱり自分と同じ兵士の道を選ぶかもしれないと覚悟をしていた。


「私ね、冒険者になるわ。」

「そうか、兵士・・・は?!何だって?!」


「冒険者よ。」

「冒険者~?!何でまた・・・。」


これまでもずっと悩んでいたこと、先日メイや士官学校の仲間の決心を聞いて、自分が選んだ道を進みたいと伝えた。そしてオリヴィアから聞いた男社会での現実、女という立場では危険に晒される事も覚悟の上で、気持ちは変わらないことを冷静に、真剣に目をそらさずに話した。


ジルは口を挟まずに最後まで聞いてくれた。途中、何度も怒鳴りそうになったが、リカの必死な顔を見ると初めて娘の本音を聞いた気がしたから怒るに怒れなかった。


「父さん、今までありがとう。私も来年は成人するわ。これまで守り育ててくれて、ありがとうございました。」


嫁にでもいくつもりか!と言いそうになったが、成人する娘の決意を認めるしかなかった。


「確認するが、しばらくはメイ達と行動するんだな?!パーティーで依頼を受けて単独行動はしないんだな?!」


「うん、そのつもり。中級ランクになるまでは単独行動できないし、避けるつもりよ。」


「・・・分かった。メイがリーダーだったな?よし、挨拶に行ってくる。」

「ちょっと!やめてよ?!私が頼み込んでパーティーに無理矢理入れてもらったんだから・・・。本当は反対してるメンバーもいるの。私が1人だけ女だから気遣ってくれてるのもあるけど。」


「怒鳴り込みに行くわけじゃない。きちんと挨拶してよろしくと頼みに行くんだ。親なら当たり前だろう?」

「・・・じゃあ明日にして。私も一緒に行くから。」


「・・・分かった。明日の早朝に出発するからな。あ、ちょっとリヴィに見回り頼んでくる。ここの片付け頼む!」

「うん。」


ふぅ・・・とりあえずは第一関門突破、かな?

メイに迷惑かけないように、明日は更に気合いを入れなくちゃ!

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