第82話 それぞれの決断
2021年明けましておめでとうございます!いやぁ寒いですね~。コタツでごろごろ寝正月を迎えております。今年もどうぞよろしくお願い致します。
気まずい食事を食べ終え、食後の紅茶が運ばれた頃最初に声を上げたのはピアだった。
「もう~~無理ですぅ!この重い空気耐えれませんー!!」ひと口紅茶を飲んだ後叫んだ。
「食べた気はしないね。」苦笑いしながら私が言うと、ピアがメニューを見てデザートを次々に頼んだ。
「ちょっと!他の人の好みも聞かずにまた・・・。」フォリアが制止しようとするとピアはアッカンベーと舌を出した。
「皆が食べないなら、私が食べますぅ~。お持ち帰りもできますしね♪」
「僕は食べるよ!」私も手を挙げた。
「じゃ、じゃあ私も。・・・実は食べ気がしなかったのよね。」とフォリアもようやく笑った。
「俺も食べる!」「俺も嫌いじゃない。」ミトラスとクラークも名乗りを挙げた。
リカだけ黙ったまま、表情が固い。
「ちょっと肩の力を抜いて?僕の話聞いてから、もう一回考えて欲しいな。」気まずそうにゆっくりと顔をあげた。
すぐにデザートがきて、改めて頂きます!となり、さっきよりは雰囲気が和らいだような気がする。
甘味は世界を救うね!
私は冒険者ギルドで聞い事を一通り話した。流石に基本的な事は全員知っていた。あと、期間限定パーティーを組む提案をしてみた。ミトラスやクラーク達は真剣に耳を傾けてくれた。
「冒険者は自由業だけど自己責任もあるから、何をするにも自分で決めて進まないといけないんだって思ったんだ。だから、ミトラスとクラークも自分の意思で決めて欲しい。僕はこの話を聞いた上で覚悟があるなら、リカがパーティーに参加すること賛成だよ。」
「・・わかった!でもリーダーはお前だ、メイ。だから、俺はリーダーの意見に従う。これが俺の出した結論だ。」ミトラスが言った。
「俺は反対だ。男ばかりのパーティーで、女が1人いると色々問題が起こるだろう。それとこうやって反対意見が出たとき、リーダーであるメイはどうするつもりだ?」
「そうだね。・・・僕を勝手にリーダーって決めたんだから、意見を聞いた上で最終判断はリーダー特権で決めさせてもらおうかな。」
クラークはくくっと笑って「そうか、なら任せる。」と言った。
リカは不安そうに私を見ている。
「じゃあリカ。今の話を聞いて、それでも僕らのパーティーに入る意思はある?」
「もちろん!!何がなんでも食らい付いて行く!!」
「じゃあ決まりだね!まだ名もないパーティーだけど、よろしくお願いします!」
「いいの?!本当ね?!後で駄目って言っても付いて行くからね!!」リカが笑うと頬にひと雫伝い、テーブルに落ちた。
「良かったですね~!リカさんの粘り勝ちですぅ♪」
「リカ・・・本気なの・・・?」
すぐに拭って、勢いよくデザートを食べ出したリカ。ピアもパクパク食べている横で、フォリアの手は止まっていた。
「なーなー、さっそくだけどパーティー名どうする?」ミトラスが食べ終えたのか、話を勝手に進める。
「僕は無理だよ、センスないから。」
「こういうのはミトラス得意だろ?」クラークが言うと「ま、まぁな!ちょっと考えてみるか・・・。」と嬉しそうなミトラス。
「あ・・・。暁の星、は?」リカがふと言葉を口にした。
「な、なんかカッコいいですぅ!さすがリカさんですぅ!!」
「どういう意味なの?」フォリアが聞いた。
「授業でね、古代の天体とか占星術とか好きな先生が話してたような気がするんだけど・・・別名は金星。夜明けの空に消えずに残っている星って意味もあるらしくて、数の少ないものの例えとか、あと人生の幸福度に強く関わる天体らしいって話をしていたのを思い出して。ふっと頭に浮かんだのよ。」
「直感大事だよ!僕は『暁の星』に賛成。」
「ま、待て!俺も今すっごいのを考えてるから!」
「時間切れだな。俺もリカのでいいぞ。」
「本当?!私が決めたのでいいの?」
「・・・仕方ねぇな!俺もそれでいいよ。」
ふっミトラス・・・惚れた弱みやね。
「皆、ありがとう!」リカの極上スマイル。あー完全にノックダウンしたのが約1名。こんなんで旅なんて大丈夫かな?
「・・・リカ、お父さんには何て言うの?そんなこと許してくれると思う?」フォリアがじっと見る。
「説得できなくて、冒険者が務まるわけないわ。それにもし許してくれなくても、私の人生よ。私が決める。」スッキリした表情で答えた。
「リカさん素敵ですぅ!冒険者になっても私達は友達ですからね、応援してますぅ!」
「うん。本当に・・・ありがとう。味方がいると思うと心強いわ!」
「じゃあパーティー名は『暁の星』な!んで、期間はどーする?」
「それについては今すぐ決めなくてもいいんじゃないか?」
「そうだよね。よく考えて、それぞれが決めたらいいと思うんだ。僕は今のところ、Cランクになったら1人旅することを考えてる。」
「え!ソロで冒険者するの?」
「うん。 さっきも伝えたけど、単独での戦闘依頼とか受注できるのがCランクからだから。目標というか、一応またその時には考えるけど。」
「俺はまだ分からないけど、このパーティーで他の国へ行ってみたい!」ミトラスが空を指差した。
「そうだな、俺もハラ王国から出て世界を見てみたい。せめてDランクくらいにならないと国から出るなんて無理だけどな。」自嘲気味に笑うクラーク。
「そっか。・・・うん!じゃあ私は1年以内にDランク、2年後にはCランクを目指すわ!」リカもさっきとはうってかわってやる気に満ちている。
ほとんどがDかCランクで人生を終えるって言ってたけど・・・今は黙っておこう。
話が纏まり、波乱のランチタイムは終了。具体的なことはまた後日集まることになり、その日は解散した。
そうだ、今度会ったら聖霊のことをメンバーにきちんと話そう。
“ネイマ、テテ!こっちは話終わったよー?もう帰れる?”
『はーい。アーロン別宅で待ち合わせよ?』
『オッケー!私も向かうわね。』
“じゃあ後でね!”
アーロン別宅前ではノクターンが待っていた。
「このまま帰る二ャ?せっかくだから、夕飯食べていくといいです二ャ!」
結局お誘いを断りきれず、ノクターンの手料理をお腹一杯食べて帰った。帰りが夜になってしまい、仁王立ちしたマリーにたっぷりと怒られた。