第79話 帰国
秋の夜長。ついつい、夜更しして長編漫画を読んでしまいます。寝不足だ・・・。
「帰ってこれたぁ・・・。」
港が見えると嬉しさと安堵の気持ちが溢れた。
アドア漁港に到着すると、別れ際にレドが小袋を手渡してきた。
「餞別だ。多くはないが、気を付けて家まで帰れよ。」
「もらえないよ!皆さん、ここまで本当にありがとうございました。」
「俺と副団長やマーブルからのも入っている。それに身内なら当たり前だ。遠慮せずに持っていけ。」
『ここは素直に受けとるところでしょ?』テテュスにも言われた。
「・・それじゃあ、お言葉に甘えて頂きます。ありがとう!絶対にまた会いに行くね!」
「いつでも遊びに来い。待ってるぞ。」
「うん!」
船を見送って、しばらくするとネイマとも合流。『やっと帰ってきたねー!』ネイマも嬉しそうだった。
“さぁ、家に帰ろう!”
【カタ】の街から我が家のある【ドン】までなら何とかなる!早く家族に会いたい。急いで人気のない建物の裏を探し、走った。
” 転移!”
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「着いたっ・・・。」
久しぶりの家の前に立ち、なんだか緊張する。
『早く入ろー!』ネイマが急かし『皆待ってるわよ?』とテテュスはグイグイと押してくる。
深呼吸をひとつ。・・・よし!
トントントン、と軽く扉を叩いて開けると一目散に入っていったのはネイマだった。
『『「ただいまー!」』』
声が響き渡り、数秒後奥から騒がしい足音が2つ勢いよく近づいてきた。
「兄ちゃーん!!」「ネーおかえりー!!」
ツインズの突撃アターック。尻もちをついたけど、痛みより2人の身体の重みが嬉しかった。
「た、ただいま!元気にしてた?」
「「げんきー!!!」」ちょっと大きくなったような、たった4か月くらいの間にしっかりしてきたように見える。兄バカ?
「メイ!!」マリーがその上から更に抱きついてきて、ポロポロと泣き出した。
「ただいま、母さん・・・。」苦しいけど、ズシっと更に重みを感じ、帰りを待ってくれる家族のありかださを実感。
「くるしー!」「おもーい!」ツインズが間に挟まれてジタバタしている。ごめん、ごめんとマリーは2人を横に座らせて、改めて抱きしめてくれた。
「お帰り・・・。どこも怪我してないわね?よかった。本当に心配したんだから・・・!」泣きながら身体をさすってくれて、私ももらい泣き。
ネイマもマリーをそっと抱きしめて『ただいま・・・。』と呟いた。
マリーは気配を感じて「ネイマ、お帰り・・・。2人とも無事でよかった・・・。」と呟き、しばらく再会を喜んだ。
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「さて!今日はご馳走をたくさん作らなきゃね。メイは疲れたでしょうから、ゆっくりしなさい。ルー、リマ!今日だけはお兄ちゃんと遊ぶのは我慢しなさいね、明日からよ?」
「えー兄ちゃんとあそぶ!」「まってたの!!」
『僕が見てるから、メイはゆっくりしなよ!』ネイマがルイとリマローズの傍で嬉しそうにしている。
「大丈夫なんだけどなぁ。」
『泣き腫らした顔で言われてもねぇ。ちょっと休憩してから、双子ちゃん達の様子を見に来たらいいじゃない?』とテテュスにも言われ、一旦自室に行くことにした。
「母さん、掃除してくれてたんだ。」
床や机、本棚も埃一つないし、衣服も定期的に洗濯してくれていたのか、綺麗な状態だった。
少し窓を開けて、外の景色を眺めた。
またしばらくしたらここを出て行くのか、と思うと自分で決めたことながら少し寂しい気持ちになった。風が吹き抜けて、髪を揺らす。ゆったりとして心が落ち着く。
ベッドで横になり、目を閉じて今後について考える。まず決めないとあかんのは、ミトラスとクラーク達のこと。冒険者として一緒にパーティーを組んで活動するかどうかやな。
ネイマやテテュスは私の決断に任せるって言ったけど・・・。2人の聖霊と契約をしてるなんて重大な秘密を打ち明けていいものか。2人のことは信用できると思うけど、限られた人数だからこそ情報漏えいを防げるのであって、増えれば必然的に難しくなる。
う~~ん・・・。
そうや!冒険者ギルドについてもっと詳しく聞いてみよう。それにグレさんになら相談できる。
さっそくグレさんからもらった手帳に”相談がしたいので、【ジザ】の冒険者ギルドを訪ねたい”という手紙を書いた。連絡が来るまでには数日かかるだろうけど、まだ時間はあるし今悩んでも仕方ない。
「あ、皆にも帰国の連絡しなくちゃ!」
特にゴウやモリー船長達には直接会ってお詫びしないとなぁ。船長達はすでに漁出ちゃってる可能性もあるけど。
リカやミトラス達、それにミリューイにも知らせとかないと後で何を言われるやら・・・。それにジンクス家にも散々お世話になってるし。
夕飯までには時間があったので、それぞれに手紙を書くことにした。
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集中していると時間の経過は早いもので、外はいつの間にか日が暮れかかっていた。
「うー・・・つっかれたぁ~~。」体を伸ばし終わると、急に腹の虫が鳴き始めた。喉もカラカラ。
立ち上がろうとしたその時、ドタドタと大きい足音が聞こえたと思うと同時に勢いよく扉が開いてガイルと目が合った。
「あー父さんお帰り。っていうか、ただいま?」
勢いよく、ぎゅうっと強く抱きしめられた。無言で泣いている。そっとガイルの背中に手を回して温かさを感じた。
5分か10分か、しばらくしてふわっと離れたと思ったら逞しい腕で涙をゴシゴシ拭き取り、真っ赤な目でじっと見つめられた。頭をグシャグシャと撫で回し「お帰り。」と一言告げ、部屋を出て行った。
相変わらずぶっきらぼうやなぁ。私もうっすらと目に浮かべた涙をぬぐい、リビングヘと向かった。
「父さん、今部屋で籠ってるわよ。」クスクスと小さく笑いながら、次々とテーブルへ料理を運んでいくマリー。食欲をそそる香りが鼻を抜け、空腹のおかげでより一層刺激される。
「喉が渇いたし、お腹が空いて倒れそうだよ・・・。」
マリーは冷えたロダティーとクッキーを3枚持ってきてくれた。「もうすぐご飯だからね。それ食べたら、あの子達呼んできてくれる?」
「わかった!」
食べながら念話でネイマに呼び掛ける。『わかった!もうすぐ家に帰るよー!』と、テテュスも一緒にいるからツインズを連れいくと返事があった。
大好きなマリーの手料理を前に、ちょっとつまみ食い。う、旨い!!久しぶりでついつい手が止まらなくなった。
「あ!こら!もうすぐって言ったでしょ~?」
「ごめん、だって美味しいんだもん。」
仕方ないわね、と笑いながらロダティーのおかわりを入れてくれた。
『『「「ただいまー!!」」』』ツインズが戻り、ネイマとテテュスも席についた。ガイルもその声につられ部屋から出てきたが、少し腫らした目が気になるのか、やたらと鼻を擦る仕草で顔を隠していた。
「さぁ、召し上がれ♪」
『『「「「「いただきます!!」」」」』』
食事中、旅でのことをいっぱい話した。船内の仕事や新しい友達や仲間、兄貴分の存在。誘拐事件については、心配させるといけないから大まかにだけ伝えた。あと、これからの事についてもとりあえず、知り合いのギルドマスターに相談すると言うと、”そうしなさい”とマリーもガイルも納得してくれた。
「兄ちゃん、あしたはあそんで!」「けんのれいしゅーしよ!」ツインズのリクエストも承り、久しぶりに家族団欒のひとときを過ごした。